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24話
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イーディスの「テンセイ」という話を聞いた時は正直、信じないわけではないが信じがたいともレナードは思っていた。今まで現実にそういったことが起きている人を見たことも聞いたこともなかったのでピンとこないというのだろうか。
だが目に涙を溜めながら真剣に話すイーディスを疑うことなどそれこそできそうになかった。そもそもイーディスがこんな時に嘘を言うはずがない。何よりもレナードを信じて重大であろう秘密を話してくれているはずだ。
だからレナードは信じた。突拍子でもない内容だろうが、信じた。
それに今はそれよりも、とイーディスを王宮へ連れて行き、女性騎士に会わせた。帰りの馬車で、ずっと元気がなかったイーディスはようやくいつものイーディスになってくれた。
「私、もう少しで、できることを投げ出すところだった。なんてもったいない。私、がんばる。もっともっと剣、強くなりたい」
その笑顔を見て、レナードは可愛くて愛しくて、そして嬉しくて、思わずイーディスの頬にキスをしていた。レナードはそっと離れ、照れ隠しもあって笑い返す。
イーディスは赤くなって硬直していた。
デビュタントのパーティの時は首筋だったが、キスをしても平然と言い返してきたのにとレナードは少々ぽかんとなる。硬直されるほど自分は空気を読まなかったのだろうか。しかし赤くなっているということは、あの頃よりも多少なりとも意識してくれている可能性はないだろうか。
つい自分の都合のいいほうに考えてしまいそうになる。だって仕方がない。イーディスが好きなのだ。
初めて会った時から好きだった。一目惚れなので外見だけを見ているように思われるかもしれない。もちろんイーディスの外見もとても好みだ。だが、ついしゃっくりをあんな場でしてしまう令嬢に可愛さを感じてしまったのは間違いないし、そんな令嬢がやはり感情豊かで明るい人だともすぐにわかった。自分のやりたいことへいつだって真っ直ぐである性格がとても眩しかった。
知れば知る程ますます好きで。大切な人はイーディス以外には考えられなかった。ちっとも振り向いてくれなくても諦める選択肢など発生しないほどひたすら好きだった。
いつ見てもキラキラ輝いている。美しい金色の髪や緑色の目もキラキラしていたが、何より表情がいつも輝いていた。
だから落ち込むイーディスを見ていられなかった。最初はあんな目にあったからだろうかと思った。元凶である男爵は許し難く、むしろランスに「もういい、こいつは吐く」と止められるほど自供を促すためを忘れて鞭を打ちつけていたかもしれないし、実際助けに向かった時に対峙していた男どもはできることならこの手で殺してしまいたいほどだった。
ただ、イーディスが落ち込んでいたことは違うことだった。まさにイーディスのキラキラとした元気の源に関することだった。
自分のやりたいことを諦めようとする姿を見て、レナードはどうしても考え直して欲しいと思った。イーディスにはいつだってやりたいことに真っ直ぐでいて欲しかった。あの輝くような笑顔でいて欲しかった。女性騎士に会わせてよかったとしみじみ思う。
「ちょっと、レナード。言ったはずだよ、つ、次にしたら口きかないって」
イーディスは目に涙まで溜めてきた。赤いのはもしかしてとても嫌だったからだという可能性が今浮上した。
「イーディス……泣きたいほど嫌だった?」
「な? 泣いてな……違、これは……あなたが私の精神は騎士だなんて言ってくれ、る、から……!」
よかった、少なくとも嫌ではないようだ。
「だ、だいたい言ったでしょ、私、転生前は男だったんだよ?」
首筋のキスの時にあれほど堂々としていたイーディスが混乱している。申し訳ないけれどもとても可愛いと思う。
レナードが空気を読まなさ過ぎたとかではどうやらなさそうだ。ではやはり多少意識してくれているのだろうか。もしくは落ち込んでた影響で感情が揺れやすいとかだろうか。だとしたら卑怯と言われようがその隙は逃したくない。
「信じてないの?」
「まさか。君の言うことなんだよ。信じてる」
はっきり「信じてる」と言った時にイーディスの濡れた瞳が揺れた。怒っている風に言い返してくるが、少し嬉しそうに口元が緩んだ気もしたのは、やはりレナードが都合いいように思いたいだけだろうか。
「じゃあわかるでしょ。前世でわたし、男だったの」
「なら僕はテンセイ前は女だったかもしれないよ」
「は?」
「君はたまたま記憶があるだけじゃないか。僕は覚えていないだけ。なら僕がゼンセで女じゃなかったとどうして言い切れる?」
「そ、んなの今関係……」
「ないことないよね? だって君が言い出したんだ。ゼンセが男だったと」
「そう、だけど」
「ねえ、イーディス。今が大事なんじゃないの? だからこそ、テンセイ前にできなかったことを今、君はやり遂げたいとがんばっているんじゃないの? 楽しもうとしているんじゃないの?」
静かに言い聞かせるような言い方になってしまったが、レナードはイーディスに笑みを向けた。
「過去を覚えているからこそがんばってはいるのかもだけど、今を楽しみたいしがんばりたいんだよね?」
「う、うん。そう、だよ」
「じゃあゼンセが男だったなんてどうでもいい。それに君は女性が好きなわけでもないと言った。なら問題ない。ねぇ、僕が好きなのは今を生きているイーディス・ディーンって女の子だよ」
言いながら「ああ、やはり大好きだ」という気持ちがますます募ってきてレナードは嬉しくなる。対してイーディスは珍しく言葉に詰まっているようだ。
テンセイ前の話を聞いて、レナードはむしろますますイーディスが好きになったように思う。
過去を思い、だからこそできなかったことを今、がんばりたいとキラキラしているイーディスが大好きでそしてずっと応援したい。
過去を覚えているからこそ、真っ直ぐに今を生きているイーディスをとても眩しく思った。
だが目に涙を溜めながら真剣に話すイーディスを疑うことなどそれこそできそうになかった。そもそもイーディスがこんな時に嘘を言うはずがない。何よりもレナードを信じて重大であろう秘密を話してくれているはずだ。
だからレナードは信じた。突拍子でもない内容だろうが、信じた。
それに今はそれよりも、とイーディスを王宮へ連れて行き、女性騎士に会わせた。帰りの馬車で、ずっと元気がなかったイーディスはようやくいつものイーディスになってくれた。
「私、もう少しで、できることを投げ出すところだった。なんてもったいない。私、がんばる。もっともっと剣、強くなりたい」
その笑顔を見て、レナードは可愛くて愛しくて、そして嬉しくて、思わずイーディスの頬にキスをしていた。レナードはそっと離れ、照れ隠しもあって笑い返す。
イーディスは赤くなって硬直していた。
デビュタントのパーティの時は首筋だったが、キスをしても平然と言い返してきたのにとレナードは少々ぽかんとなる。硬直されるほど自分は空気を読まなかったのだろうか。しかし赤くなっているということは、あの頃よりも多少なりとも意識してくれている可能性はないだろうか。
つい自分の都合のいいほうに考えてしまいそうになる。だって仕方がない。イーディスが好きなのだ。
初めて会った時から好きだった。一目惚れなので外見だけを見ているように思われるかもしれない。もちろんイーディスの外見もとても好みだ。だが、ついしゃっくりをあんな場でしてしまう令嬢に可愛さを感じてしまったのは間違いないし、そんな令嬢がやはり感情豊かで明るい人だともすぐにわかった。自分のやりたいことへいつだって真っ直ぐである性格がとても眩しかった。
知れば知る程ますます好きで。大切な人はイーディス以外には考えられなかった。ちっとも振り向いてくれなくても諦める選択肢など発生しないほどひたすら好きだった。
いつ見てもキラキラ輝いている。美しい金色の髪や緑色の目もキラキラしていたが、何より表情がいつも輝いていた。
だから落ち込むイーディスを見ていられなかった。最初はあんな目にあったからだろうかと思った。元凶である男爵は許し難く、むしろランスに「もういい、こいつは吐く」と止められるほど自供を促すためを忘れて鞭を打ちつけていたかもしれないし、実際助けに向かった時に対峙していた男どもはできることならこの手で殺してしまいたいほどだった。
ただ、イーディスが落ち込んでいたことは違うことだった。まさにイーディスのキラキラとした元気の源に関することだった。
自分のやりたいことを諦めようとする姿を見て、レナードはどうしても考え直して欲しいと思った。イーディスにはいつだってやりたいことに真っ直ぐでいて欲しかった。あの輝くような笑顔でいて欲しかった。女性騎士に会わせてよかったとしみじみ思う。
「ちょっと、レナード。言ったはずだよ、つ、次にしたら口きかないって」
イーディスは目に涙まで溜めてきた。赤いのはもしかしてとても嫌だったからだという可能性が今浮上した。
「イーディス……泣きたいほど嫌だった?」
「な? 泣いてな……違、これは……あなたが私の精神は騎士だなんて言ってくれ、る、から……!」
よかった、少なくとも嫌ではないようだ。
「だ、だいたい言ったでしょ、私、転生前は男だったんだよ?」
首筋のキスの時にあれほど堂々としていたイーディスが混乱している。申し訳ないけれどもとても可愛いと思う。
レナードが空気を読まなさ過ぎたとかではどうやらなさそうだ。ではやはり多少意識してくれているのだろうか。もしくは落ち込んでた影響で感情が揺れやすいとかだろうか。だとしたら卑怯と言われようがその隙は逃したくない。
「信じてないの?」
「まさか。君の言うことなんだよ。信じてる」
はっきり「信じてる」と言った時にイーディスの濡れた瞳が揺れた。怒っている風に言い返してくるが、少し嬉しそうに口元が緩んだ気もしたのは、やはりレナードが都合いいように思いたいだけだろうか。
「じゃあわかるでしょ。前世でわたし、男だったの」
「なら僕はテンセイ前は女だったかもしれないよ」
「は?」
「君はたまたま記憶があるだけじゃないか。僕は覚えていないだけ。なら僕がゼンセで女じゃなかったとどうして言い切れる?」
「そ、んなの今関係……」
「ないことないよね? だって君が言い出したんだ。ゼンセが男だったと」
「そう、だけど」
「ねえ、イーディス。今が大事なんじゃないの? だからこそ、テンセイ前にできなかったことを今、君はやり遂げたいとがんばっているんじゃないの? 楽しもうとしているんじゃないの?」
静かに言い聞かせるような言い方になってしまったが、レナードはイーディスに笑みを向けた。
「過去を覚えているからこそがんばってはいるのかもだけど、今を楽しみたいしがんばりたいんだよね?」
「う、うん。そう、だよ」
「じゃあゼンセが男だったなんてどうでもいい。それに君は女性が好きなわけでもないと言った。なら問題ない。ねぇ、僕が好きなのは今を生きているイーディス・ディーンって女の子だよ」
言いながら「ああ、やはり大好きだ」という気持ちがますます募ってきてレナードは嬉しくなる。対してイーディスは珍しく言葉に詰まっているようだ。
テンセイ前の話を聞いて、レナードはむしろますますイーディスが好きになったように思う。
過去を思い、だからこそできなかったことを今、がんばりたいとキラキラしているイーディスが大好きでそしてずっと応援したい。
過去を覚えているからこそ、真っ直ぐに今を生きているイーディスをとても眩しく思った。
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