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27話(終)
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学園に到着すると、ダンスパーティーがそろそろ始まろうかという状況だった。イーディスはレナードに手を引かれ会場までエスコートされる。それだけで結構注目を浴びたようだ。
「レナード効果で私まで注目浴びちゃってるよ」
「相変わらずイーディスはわかってないな」
レナードが苦笑してきた。
「わかってないって何よ」
「君はそういうことに関心を持ってないからだろうけど、君が一体他の男からどれだけ注目を浴びていると思ってるの」
他の令嬢からマイナス的な意味で関心を持たれていることは知っているが、それは初耳だとイーディスは呆れたようにレナードを見た。
「私を? 確かに私は可愛い顔をしてるけど、これほど令嬢らしくない令嬢を他のご子息が? あはは」
「もう。今だって君をダンスに誘いたいとヤキモキしてるやつらが忌々しいほどいるってのに」
「忌々しいって。あなた時折わんこらしからぬ言動を取るよね」
「まあ、犬じゃなくて王子なので」
「王子らしくもないでしょ」
今もどこかに目をやって笑顔ながらに威嚇するかのような雰囲気を醸し出していたレナードをイーディスはまた呆れたように見る。
「ああ、だって牽制は大切だからね」
「何を牽制するの? 私からしたら縄張りのために威嚇するわんこのようだったけど」
「うーん、まあでもそれ間違ってないかも」
「威嚇しなくともレナードの、この場で注目を浴びている王子様という立ち位置は揺ぎないと思うよ?」
「そこはとてつもなく間違ってるな……」
レナードは何故か脱力したかのように苦笑してくると、イーディスをホールの中心へといざなった。丁度タイミングを狙ったかのように、音楽が流れだす。
「君は相変わらずダンスも素敵だね」
踊りながらレナードが耳元で囁いてきた。もぞもぞと落ち着かない気持ちをほんのり胸元からみぞおちにかけて感じながら、イーディスはあえて微笑みを浮かべた。
「これでも侯爵令嬢ですので」
令嬢らしからぬ言動を取りはしても、基本的なマナーや教育は小さな頃から受けているため、ダンスは得意だ。一曲を踊り終えると周囲からは感嘆の声と拍手が湧いた。そして他の人たちもダンスを始めたり、イーディスたちが踊り終えたのを見計らったかのようにダンスの申し出がくる。そんなやり取りが面倒だなとイーディスが内心思っている内にレナードと離れてしまった。おそらくはレナードと踊りたい、話したい令嬢の波にもまれたのだと思われる。どうしようかと思っていると目の前に知らない男が立っていた。そして丁寧にダンスを申し込んでくる。
(えぇ……嫌だな、お断りしたいよ)
そう思いつつも、いつもはレナードがいたためもあり、他の相手から誘われるのは初めてなせいで実際断っていいのかどうかいまいちわからない。イーディスは仕方なく差し出された手を取ろうとした。だがそのイーディスの手を横からつかんでくる者がいる。ハッとして見るとレナードが笑みを浮かべながら「この方は僕と次のダンスも予約済みでね。申し訳ない」と口調だけ丁寧な様子で断りを入れてきた。
その時溢れた安堵と嬉しさに、イーディスは自分が抱いている気持ちを認めざるを得ないとようやく気づいたというか、受け入れざるを得ないことに気づいた。
こんなにホッとして嬉しい相手に対してわからないなんていい加減にしろと自分に言うしかない。それにどうしたってレナード以外嫌だと自分でも認めておきながら、これ以上わからないなんて言っていたらいっそ馬鹿もいいところだ。
男だ女だなんてどうでもよかった。レナードだからなんだと、今ごろようやく心から理解した。
「油断も隙もない……、ってイーディス? どうしたの? 顔が赤い。僕がいない隙にお酒飲んじゃった? それとも熱気にやられたのかな。ちょっとバルコニーに出ようか」
レナードが心配したようにイーディスを見ながら手を引いてバルコニーまで今度はいざなう。
「あの、ご令嬢たちをほったらかしにしてきたの?」
「うん。ああダンスのお誘いとかはちゃんと無視せずに丁重にお断りしたよ。だって僕はイーディス以外と踊りたくないし。王宮での正式なダンスでは何人かと踊るのもマナーだけど、あくまでも学園のパーティだしね」
バルコニーの欄干までくると二人はそこから外を見るようにしてもたれた。確かに中は熱気で暑くなっていたようだ。こんな露出の多いイブニングドレスでも風が涼しくて気持ちがいい。
ふと気づいた欄干のバラスターのデザインが何気にこだわっていてお洒落だなとイーディスがぼんやり思っていると「それにしても」とレナードが少し膨れたような表情でイーディスを見てきた。何だろうとイーディスは少々困惑しながらレナードを見返す。
「俺以外の手を取らないで」
「……何だ、そんなこと」
「そんなこと、じゃないよ。大事なことだからね。……その、イーディスは僕の婚約者になって欲しい人だから」
最近は積極的な言動をとりつつも、むしろあまり言わなくなっていた言葉をレナードは久しぶりに、だけれども少々控えめに言ってきた。
「じゃあ」
イーディスは体ごとレナードに向き直った。
「あなたが私の手を離さないで」
絶対に、と続ければレナードは少しぽかんとした顔になった。自分からはがんがん積極的な言動をしてくるというのにとイーディスは笑みを浮かべる。でも仕方がないのかもしれない。それほどにひたすらレナードの気持ちを受け入れなかったから、とそっとレナードの手を取った。
「イーディス?」
「ね? 離さないで。じゃないと私、婚約者をやめるからね」
「……、……え?」
少し怪訝そうにイーディスの言葉を聞いていたレナードの顔が次第に、途中からは一気に赤くなった。
──了──
「レナード効果で私まで注目浴びちゃってるよ」
「相変わらずイーディスはわかってないな」
レナードが苦笑してきた。
「わかってないって何よ」
「君はそういうことに関心を持ってないからだろうけど、君が一体他の男からどれだけ注目を浴びていると思ってるの」
他の令嬢からマイナス的な意味で関心を持たれていることは知っているが、それは初耳だとイーディスは呆れたようにレナードを見た。
「私を? 確かに私は可愛い顔をしてるけど、これほど令嬢らしくない令嬢を他のご子息が? あはは」
「もう。今だって君をダンスに誘いたいとヤキモキしてるやつらが忌々しいほどいるってのに」
「忌々しいって。あなた時折わんこらしからぬ言動を取るよね」
「まあ、犬じゃなくて王子なので」
「王子らしくもないでしょ」
今もどこかに目をやって笑顔ながらに威嚇するかのような雰囲気を醸し出していたレナードをイーディスはまた呆れたように見る。
「ああ、だって牽制は大切だからね」
「何を牽制するの? 私からしたら縄張りのために威嚇するわんこのようだったけど」
「うーん、まあでもそれ間違ってないかも」
「威嚇しなくともレナードの、この場で注目を浴びている王子様という立ち位置は揺ぎないと思うよ?」
「そこはとてつもなく間違ってるな……」
レナードは何故か脱力したかのように苦笑してくると、イーディスをホールの中心へといざなった。丁度タイミングを狙ったかのように、音楽が流れだす。
「君は相変わらずダンスも素敵だね」
踊りながらレナードが耳元で囁いてきた。もぞもぞと落ち着かない気持ちをほんのり胸元からみぞおちにかけて感じながら、イーディスはあえて微笑みを浮かべた。
「これでも侯爵令嬢ですので」
令嬢らしからぬ言動を取りはしても、基本的なマナーや教育は小さな頃から受けているため、ダンスは得意だ。一曲を踊り終えると周囲からは感嘆の声と拍手が湧いた。そして他の人たちもダンスを始めたり、イーディスたちが踊り終えたのを見計らったかのようにダンスの申し出がくる。そんなやり取りが面倒だなとイーディスが内心思っている内にレナードと離れてしまった。おそらくはレナードと踊りたい、話したい令嬢の波にもまれたのだと思われる。どうしようかと思っていると目の前に知らない男が立っていた。そして丁寧にダンスを申し込んでくる。
(えぇ……嫌だな、お断りしたいよ)
そう思いつつも、いつもはレナードがいたためもあり、他の相手から誘われるのは初めてなせいで実際断っていいのかどうかいまいちわからない。イーディスは仕方なく差し出された手を取ろうとした。だがそのイーディスの手を横からつかんでくる者がいる。ハッとして見るとレナードが笑みを浮かべながら「この方は僕と次のダンスも予約済みでね。申し訳ない」と口調だけ丁寧な様子で断りを入れてきた。
その時溢れた安堵と嬉しさに、イーディスは自分が抱いている気持ちを認めざるを得ないとようやく気づいたというか、受け入れざるを得ないことに気づいた。
こんなにホッとして嬉しい相手に対してわからないなんていい加減にしろと自分に言うしかない。それにどうしたってレナード以外嫌だと自分でも認めておきながら、これ以上わからないなんて言っていたらいっそ馬鹿もいいところだ。
男だ女だなんてどうでもよかった。レナードだからなんだと、今ごろようやく心から理解した。
「油断も隙もない……、ってイーディス? どうしたの? 顔が赤い。僕がいない隙にお酒飲んじゃった? それとも熱気にやられたのかな。ちょっとバルコニーに出ようか」
レナードが心配したようにイーディスを見ながら手を引いてバルコニーまで今度はいざなう。
「あの、ご令嬢たちをほったらかしにしてきたの?」
「うん。ああダンスのお誘いとかはちゃんと無視せずに丁重にお断りしたよ。だって僕はイーディス以外と踊りたくないし。王宮での正式なダンスでは何人かと踊るのもマナーだけど、あくまでも学園のパーティだしね」
バルコニーの欄干までくると二人はそこから外を見るようにしてもたれた。確かに中は熱気で暑くなっていたようだ。こんな露出の多いイブニングドレスでも風が涼しくて気持ちがいい。
ふと気づいた欄干のバラスターのデザインが何気にこだわっていてお洒落だなとイーディスがぼんやり思っていると「それにしても」とレナードが少し膨れたような表情でイーディスを見てきた。何だろうとイーディスは少々困惑しながらレナードを見返す。
「俺以外の手を取らないで」
「……何だ、そんなこと」
「そんなこと、じゃないよ。大事なことだからね。……その、イーディスは僕の婚約者になって欲しい人だから」
最近は積極的な言動をとりつつも、むしろあまり言わなくなっていた言葉をレナードは久しぶりに、だけれども少々控えめに言ってきた。
「じゃあ」
イーディスは体ごとレナードに向き直った。
「あなたが私の手を離さないで」
絶対に、と続ければレナードは少しぽかんとした顔になった。自分からはがんがん積極的な言動をしてくるというのにとイーディスは笑みを浮かべる。でも仕方がないのかもしれない。それほどにひたすらレナードの気持ちを受け入れなかったから、とそっとレナードの手を取った。
「イーディス?」
「ね? 離さないで。じゃないと私、婚約者をやめるからね」
「……、……え?」
少し怪訝そうにイーディスの言葉を聞いていたレナードの顔が次第に、途中からは一気に赤くなった。
──了──
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