転生少女は憧れの騎士として生きたい

Guidepost

文字の大きさ
26 / 27

26話

しおりを挟む
 改めてレナードからも「僕と同じ学年なんだ。だからイーディスの一つお姉さんだね」と紹介してきた。とりあえず騎士を目指していると聞いて、何故レナードがミリアを紹介してきたのかわかり、イーディスは自分のつい想像してしまっていた考えが微妙になる。
 ミリアは十七歳の女性でいてとてもスマートな言動だった。見た目と相まってついイーディスは見惚れてしまった。話してみるとだが気さくで喋りやすく、すぐに意気投合して仲良くなった。
 サロンでエレンたちに相談していたことは一旦イーディスの中で保留にした。わからないことはわからない。きっとわかる時はわかるに違いないし、なるようになる。多分。多分。
 レナードが言ってくれたように、王宮にもミリアと一緒にたまに訪問させてもらい、見学したり時には訓練に参加させてもらったりした。そこでミリアの腕が中々のものだと知った。

「イーディス様は」
「ミリア。年下の私が呼び捨てにさせてもらっているのに何故あなたはいつまでたっても様を外さないの」
「申し訳ありません。でもお許しください。仲良くしてくださることは私もとても嬉しいです。ですが身分が違いますし」
「怒るよ」
「何より私は騎士を本当に目指しています。イーディス様と出会ってますます気持ちは固まりました。目指したいものもできました」
「え、それは何? 聞いてもいい?」
「ええ。……いつか、騎士として認められたあかつきにはイーディス様の護衛騎士になりたい」
「っ? そ、れはめちゃくちゃ嬉しいけど……王宮付きじゃなくて私?」
「はい。ですので口調は是非このままで」

ミリアはにっこりと微笑んできた。

(ああ、私──私ももっとがんばりたい。私……私──)

「私、ミリアと出会えてよかった」
「私もです。レナード殿下に感謝しないとですね」
「だね!」

 ちなみにミリアとちょくちょく一緒にいるせいか、紹介してくれたレナードがたまにやきもちを妬いているらしい。

「変な話でしょ。ロッテには妬かないのに」

 リーゼロッテに言えば「ミリアさんはお美しいだけじゃなく、下手をするとその辺の男性より恰好がよいですもの」と何故か楽しげに笑っていた。
 イーディスがさらわれたことはリーゼロッテだけには「秘密だよ」と話している。そのせいで剣についても悩んだし、だから少し元気がなかったんだと説明すれば、ずっと心配そうにしていたリーゼロッテは「無事でよかった」と心からホッとしてくれた上に、今はもう立ち直ったことにとても喜んでくれた。
 ところで幽閉されていたフリーデは今、ディーン家で働いている。やはりとても優秀で来てもらえてよかったと皆思っている。そして逃げている時にレリアードが全然目を覚まさなかったことを後でレナードと話題になった時に、「もしかしたらレリアードの魔力が無意識に働いていたのかもだね」と言っていた。

「魔力って……だって王位継承権一位ってことはもう神殿に行ったってことでしょう? なら魔封じもされているんじゃ……」
「うん。でもそれだけレリアードの力は強いって可能性もあるよ」

 王国にとって上に立つ者の力が強いことは歓迎すべきことで、レナードも言いながらニコニコとしていた。



 あの事件から何か月かが経ち、もうすぐ次の学年になろうとしているこの時期、学園ではダンスパーティーが行われる。
 またあのくりくりでフリフリかと少々青ざめたくなったイーディスだが、サラが「お嬢様はその髪型が一番お似合いかもですね」と言ってくれ、少々アクセサリーを増やされるだけで済むことになり心からホッとした。ドレスもやたら可愛らしい感じよりもほんのり大人っぽさもありながらシンプルなドレスを選んでくれた。ただし少々胸元の露出が気になる。

「これ、庶民の恰好した時のネックチーフつけたくなるんだけど」
「まあ、おやめくださいね! なんてったってパーティは夜ですし、ドレスコードを考えるとそれでも控えめなほうですよ」
「庶民ならふしだらな女だと思うところだけど」
「残念ながら貴族のイブニングドレスでは淑女なんですよ、ほら諦めてお着替えに協力してください」

 渋々、このまま殺されるのではと思う勢いでコルセットを締められ、ドレスを着せさせられた。鏡を見るともの凄くとは言わないが、そこそこいい感じの凹凸がある淑女が目の前に立っている。

「わぁ、これ騙されそう」
「誰が誰にです?」
「色んな人が私に」
「何をおっしゃってるんですか。お嬢様ほど素敵な令嬢はいらっしゃらない上で、あっけらかんと素直で馬鹿正直な令嬢も私は見たことがございません」
「ねえ、今どさくさに紛れて馬鹿って言った?」
「お嬢様を誰よりもこよなく愛している私がそんなこと言うはずがございませんでしょう。さあ、座ってくださいね、アクセサリーをつけていきますので」
「あ、待って。髪留めはいつものリボンにして欲しい」
「レナード殿下がくださったものですか? 仕方がございませんね。でもとてもお綺麗なリボンですし問題ないでしょう。ピアスともとても合っておりますもんね」
「うん」
「ですがそれだけだと少々華やかさにかけるので花などを飾っていきましょう」
「あー……。私が花粉症だったら恐ろしい刑罰だったでしょうね」
「かふ……? なんですって?」
「何でもない。シンプルにティアラのが可愛いんじゃない?」
「ティアラをお付けになりたいのでしたらさっさとレナード殿下のプロポーズをお受けになられてはどうですか」

 言われて、そういえば確かにティアラは花嫁か既婚者がつけるものだと思い出した。イーディスは赤くなりながら「お花をふんだんに使って!」と慌てて言い直した。
 時間通りにレナードが馬車を用意して迎えに来ていた。暖かいコートを羽織ったイーディスに手を差し出してくる。イーディスは仕方なくそこへ手をそっと乗せた。
 レナードのフォーマルな恰好は何度か見かけたことはあるものの、なんだか妙に落ち着かない。腹立たしいほど似合っているからだろうか。

「今何考えている?」
「あなたの衣装が腹立たしいほど似合っているなと」
「ありがとう。イーディスらしいよ。でも腹は立てないでね。どうせならうっとりして欲しいな」
「レナードもレナードらしいね」

 落ち着かないながらに、いつものように軽口は叩ける。だからこそこうしてずっとレナードと付き合ってこられたのだろうなとイーディスは内心苦笑した。

「馬車の中は暖かいよ。だからコートを。僕が持っていよう」
「ありがとう」

 庶民の服を着る手助けは困惑するくせに、こういったことには慣れた手つきで手を貸してくる。レナードの手を借りてコートを脱ぐと、だがレナードが途端に少々落ち着きをなくしてきた。

「レナード?」
「あ、ごめん。その、……とても綺麗だ」
「……あ、ありがとう」

 なんだかむずがゆい空気の漂う中、二人は馬車に乗り込んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…

ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。 一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。 そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。 読んでいただけると嬉しいです。

社畜の私は異世界でも社畜精神が残ったままだった

木嶋うめ香
恋愛
貴族学園の小さな部屋で、私は一人書類仕事に追われていた。 今日も寮には帰れそうにない、机の上には大量の未処理の書類。 せめて空腹を紛らわそうと、ビスケットを鞄から取り出し水を汲んでこようとして立ち上がった途端、視界が暗くなり倒れた。 床に倒れた反動で、頭を床にぶつける。 その衝撃で思い出した、私は前世ブラック企業に勤めていた社畜で、二十三連勤サービス残業付きの末、体調を崩し亡くなったアラサー営業職だった。 他サイトでもアップしています。

戦姫のトロイメライ~断罪される未来が視えたので先に死んだことにしました

志熊みゅう
恋愛
 十三歳の誕生日、侯爵令嬢エディット・ユングリングは、自分が死ぬ瞬間を"夢"に視た。  卒業舞踏会で、婚約者であるフィーラ帝国・第一皇子マティアス殿下から、身に覚えのない罪で断罪され、捕らえられる。傍らでは見知らぬピンクブロンドの令嬢が不敵に微笑む。貴族牢のある北の古城に連行される途中、馬車ごと“死の谷”へと落ちていった――そんな妙に生々しい夢。  マティアス殿下は聡明で優しく、エディットを大切にしているように見えた。だから誰もその"夢"のことを気に留めなかった。しかし、兄の怪我、愛猫の死、そして大干ばつ――エディットの"夢"は次々と現実になっていく。ある日、エディットは気づく。この"夢"が、母の祖国・トヴォー王国の建国の軍師と同じ異能――"未来視"であることに。  その頃、一年早く貴族学院に入学したマティアス殿下は、皇宮から解放され、つかの間の自由を知った。そして、子爵令嬢ライラに懸想するようになる。彼女は、"夢"の中で冷酷に微笑むあの令嬢に瓜二つ。エディットは自分が視た"夢"が少しずつ現実になっていくことに恐怖した。そんな時に視た、黒髪の令息が「愛しているよ」と優しくはにかむ、もう一つの『未来』。エディットは決心する。  ――断罪される未来を変えたい。もう一つの未来を自分で選び取る。  彼女は断罪される前に、家族と共に自らの死を偽装し、トヴォー王国へと身を隠す。選び取った未来の先で、エディットは『戦姫』として新たな運命の渦に飲まれていく――。  断罪の未来を捨て、愛する者のために戦う令嬢の恋愛ファンタジー!

本の虫令嬢ですが「君が番だ! 間違いない」と、竜騎士様が迫ってきます

氷雨そら
恋愛
 本の虫として社交界に出ることもなく、婚約者もいないミリア。 「君が番だ! 間違いない」 (番とは……!)  今日も読書にいそしむミリアの前に現れたのは、王都にたった一人の竜騎士様。  本好き令嬢が、強引な竜騎士様に振り回される竜人の番ラブコメ。 小説家になろう様にも投稿しています。

竜帝に捨てられ病気で死んで転生したのに、生まれ変わっても竜帝に気に入られそうです

みゅー
恋愛
シーディは前世の記憶を持っていた。前世では奉公に出された家で竜帝に気に入られ寵姫となるが、竜帝は豪族と婚約すると噂され同時にシーディの部屋へ通うことが減っていった。そんな時に病気になり、シーディは後宮を出ると一人寂しく息を引き取った。 時は流れ、シーディはある村外れの貧しいながらも優しい両親の元に生まれ変わっていた。そんなある日村に竜帝が訪れ、竜帝に見つかるがシーディの生まれ変わりだと気づかれずにすむ。 数日後、運命の乙女を探すためにの同じ年、同じ日に生まれた数人の乙女たちが後宮に召集され、シーディも後宮に呼ばれてしまう。 自分が運命の乙女ではないとわかっているシーディは、とにかく何事もなく村へ帰ることだけを目標に過ごすが……。 はたして本当にシーディは運命の乙女ではないのか、今度の人生で幸せをつかむことができるのか。 短編:竜帝の花嫁 誰にも愛されずに死んだと思ってたのに、生まれ変わったら溺愛されてました を長編にしたものです。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

天然だと思ったギルド仲間が、実は策士で独占欲強めでした

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー本編8話+後日談7話⭐︎ ギルドで働くおっとり回復役リィナは、 自分と似た雰囲気の“天然仲間”カイと出会い、ほっとする。 ……が、彼は実は 天然を演じる策士だった!? 「転ばないで」 「可愛いって言うのは僕の役目」 「固定回復役だから。僕の」 優しいのに過保護。 仲間のはずなのに距離が近い。 しかも噂はいつの間にか——「軍師(彼)が恋してる説」に。 鈍感で頑張り屋なリィナと、 策を捨てるほど恋に負けていくカイの、 コメディ強めの甘々ギルド恋愛、開幕! 「遅いままでいい――置いていかないから。」

処理中です...