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工房を作ろう
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宮廷を追放されて早1か月。
俺はようやく事の真相に気づいた。
どうやら、俺が知らない間に幼馴染であるグリムはポーションを含む魔道具専門の宮廷魔法使いとして成り上がっていたらしい。
帝都の商店街にはグリム印の魔道具があちこちに並び、街の人々の話題も新しい魔道具かグリムが宮廷魔法使いになったの話ばかりである。
俺が必死になって研究していたポーションはというと小さな個人経営の雑貨店で申し訳ない程度に売られていたくらいで街中ではあまり流行っていないようだ。
「おいおい、聞いたか。今度発売される魔道具は再生の回復魔法が使えるらしいぜ」
「マジかよ。でもどうせポーションみたいにクソ高いんだろ」
「いや、それがさ。そうでもないんだって。値段は再生のポーションの半分以下だって話だぜ」
「嘘だろっ……よし、貯えもあるし買おうぜ。まさにグリム様様だぜ」
ふと、冒険者たちの世間話が聞こえてくる。
グリムは再生魔法の魔道具を販売するらしい。
あれは以前、俺も研究したけどポーションよりも品質が悪かったんだよな……だから、安いんだけど。
けれども、ケガを負うことが多い冒険者たちにとって、品質の良さなんて関係ない。
あるいだけでありがたいらしい。
酒場にいると否が応でもいろんなウワサ話が流れ込んでくる。
宮廷を追放された俺は1か月も酒浸りだった。
心血を注いでいた研究を無駄にされ、退職金は金貨1枚と銀貨が少し。
いくら俺が自分の給料を研究費に回したといってもこの引かれようはない。
たぶんどこぞの誰かがケチったのだ。けしからん。
とまぁ、そんなことがあったから宿付きの酒場で1か月もぐうたれていたのだがそれもそろそろ辞めにしようと思っている。
俺がこうなってしまった原因の答えはこの街にあったのだ。
街のあちこちにあふれるグリム印の魔道具。
奥様たちの話題も冒険者たちの話題もすべて魔道具の話ばかり。
俺が宮廷から追放されたウワサも流れたがほんの一瞬で収まりすぐに新しい魔道具の話題に戻っていった。
そう、つまり。
俺はポーションの研究ばかりに気を取られて、出来たポーションのその後をまったく考えてなかったのだ。
どんなに心血を注いで最高級のポーションを作っても、一般人どころか冒険者だって買えやしない。
魔道具の品質や能力はポーションよりも低いがその分安くて、一度仕組みさえ作ってしまえばいくらでも作れる。
当然、帝都にいる人たちは高級なポーションよりも安くて手の届きやすい魔道具を選ぶわけだ。
俺はそのことにまったく無頓着だったのだ。
最高級のポーションを作ることは確かに俺の夢だが、その夢のためにもポーションをもっと手軽なものにしないといけないんだ。
帝都の住民や冒険者たちが気軽にポーションを買い、気軽に消費する。
俺は帝都をそんな場所にしなければならなかったのだ。
ここ1か月の酒場生活でようやくそのことに気付けた。
そのことに関していえば宮廷を追放されて良かったとも言える。
宮廷にこもっていたら多分、一生そのことに気づけなかっただろう。
だからと言って相談もなくいきなり俺を宮廷から追い出したグリムや皇帝を許すなんてことはしない。
あいつらは俺を宮廷から追い出したことを後悔すればいいさ。
俺はこれからポーション工房を建ててこの帝都にポーションブームを巻き起こしてやるのだ。
宿に戻った俺は早速、今後の計画を立てることにする。
まずは手持ち資金の確認だ。
金貨が1枚と銅貨が数枚。ここ1か月の散財で銀貨の姿はない。
そういえば、昔からあんまりお金について考えたことはなかった。
宮廷魔法使いを追放された俺に渡された金額が金貨1枚。
はじめは少なすぎると感じていたが1か月暮らしているうちに金貨が大金であることを知った。
俺が泊っている宿代が一泊で銅貨30枚。
銅貨100枚で銀貨1枚だから、1か月(30日)の代金が銀貨で9枚。
食事の金額が一食銅貨5~10枚で毎日、酒浸りだったとしても銀貨が10枚あれば生活が可能だ。
つまり、金貨1枚あれば数か月は飲んだくれでも大丈夫であるということだ。
だからと言って数か月ほど飲んだくれるなんてことはしないが・・・。
とまぁ、俺の資金は大体金貨1枚。
普通に生活をする分には問題ないがポーション作りとなると少し資金が足りない。
ポーションの材料には高価な物が多いのだ。
それこそ俺の求める至高のポーションとなると金貨では足りず聖金貨が必要ってこともあるくらいだ。
当分は安く作れるポーションで資金稼ぎってとこが妥当か……。
しかし、それでも金貨1枚でできることは少ない。
ポーションは魔法式を使って精製するがその魔法式を作るのにも魔法の道具が必要なのだ。
当然、道具にも金はかかる。
やっぱり、ここを工房にするしかないか。
本来であれば専用の工房と道具を用意してポーションを作るのだが、今の俺には資金がなさすぎる。
道具を買いそろえるだけで生活が立ち行かなくなってしまうだろう。
仕方ない背に腹は代えられない。
そんな感じに思考実験を繰り返してようやく俺のポーション工房計画の土台が出来上がった。
計画その1:宿の一室で一番簡単に作れるポーションを作って販売する
計画その2:販売して得た資金を元に工房を作る
計画その3:少しづつ道具を集めてポーションを量産する
とまぁこんな感じだろう。
専門家が見たら突っ込みどころは多そうだけど大方の方向性は整った。
これに向けて動くのがよさそうだな。
よし、そうと決まれば頑張ろう。明日から。
俺はようやく事の真相に気づいた。
どうやら、俺が知らない間に幼馴染であるグリムはポーションを含む魔道具専門の宮廷魔法使いとして成り上がっていたらしい。
帝都の商店街にはグリム印の魔道具があちこちに並び、街の人々の話題も新しい魔道具かグリムが宮廷魔法使いになったの話ばかりである。
俺が必死になって研究していたポーションはというと小さな個人経営の雑貨店で申し訳ない程度に売られていたくらいで街中ではあまり流行っていないようだ。
「おいおい、聞いたか。今度発売される魔道具は再生の回復魔法が使えるらしいぜ」
「マジかよ。でもどうせポーションみたいにクソ高いんだろ」
「いや、それがさ。そうでもないんだって。値段は再生のポーションの半分以下だって話だぜ」
「嘘だろっ……よし、貯えもあるし買おうぜ。まさにグリム様様だぜ」
ふと、冒険者たちの世間話が聞こえてくる。
グリムは再生魔法の魔道具を販売するらしい。
あれは以前、俺も研究したけどポーションよりも品質が悪かったんだよな……だから、安いんだけど。
けれども、ケガを負うことが多い冒険者たちにとって、品質の良さなんて関係ない。
あるいだけでありがたいらしい。
酒場にいると否が応でもいろんなウワサ話が流れ込んでくる。
宮廷を追放された俺は1か月も酒浸りだった。
心血を注いでいた研究を無駄にされ、退職金は金貨1枚と銀貨が少し。
いくら俺が自分の給料を研究費に回したといってもこの引かれようはない。
たぶんどこぞの誰かがケチったのだ。けしからん。
とまぁ、そんなことがあったから宿付きの酒場で1か月もぐうたれていたのだがそれもそろそろ辞めにしようと思っている。
俺がこうなってしまった原因の答えはこの街にあったのだ。
街のあちこちにあふれるグリム印の魔道具。
奥様たちの話題も冒険者たちの話題もすべて魔道具の話ばかり。
俺が宮廷から追放されたウワサも流れたがほんの一瞬で収まりすぐに新しい魔道具の話題に戻っていった。
そう、つまり。
俺はポーションの研究ばかりに気を取られて、出来たポーションのその後をまったく考えてなかったのだ。
どんなに心血を注いで最高級のポーションを作っても、一般人どころか冒険者だって買えやしない。
魔道具の品質や能力はポーションよりも低いがその分安くて、一度仕組みさえ作ってしまえばいくらでも作れる。
当然、帝都にいる人たちは高級なポーションよりも安くて手の届きやすい魔道具を選ぶわけだ。
俺はそのことにまったく無頓着だったのだ。
最高級のポーションを作ることは確かに俺の夢だが、その夢のためにもポーションをもっと手軽なものにしないといけないんだ。
帝都の住民や冒険者たちが気軽にポーションを買い、気軽に消費する。
俺は帝都をそんな場所にしなければならなかったのだ。
ここ1か月の酒場生活でようやくそのことに気付けた。
そのことに関していえば宮廷を追放されて良かったとも言える。
宮廷にこもっていたら多分、一生そのことに気づけなかっただろう。
だからと言って相談もなくいきなり俺を宮廷から追い出したグリムや皇帝を許すなんてことはしない。
あいつらは俺を宮廷から追い出したことを後悔すればいいさ。
俺はこれからポーション工房を建ててこの帝都にポーションブームを巻き起こしてやるのだ。
宿に戻った俺は早速、今後の計画を立てることにする。
まずは手持ち資金の確認だ。
金貨が1枚と銅貨が数枚。ここ1か月の散財で銀貨の姿はない。
そういえば、昔からあんまりお金について考えたことはなかった。
宮廷魔法使いを追放された俺に渡された金額が金貨1枚。
はじめは少なすぎると感じていたが1か月暮らしているうちに金貨が大金であることを知った。
俺が泊っている宿代が一泊で銅貨30枚。
銅貨100枚で銀貨1枚だから、1か月(30日)の代金が銀貨で9枚。
食事の金額が一食銅貨5~10枚で毎日、酒浸りだったとしても銀貨が10枚あれば生活が可能だ。
つまり、金貨1枚あれば数か月は飲んだくれでも大丈夫であるということだ。
だからと言って数か月ほど飲んだくれるなんてことはしないが・・・。
とまぁ、俺の資金は大体金貨1枚。
普通に生活をする分には問題ないがポーション作りとなると少し資金が足りない。
ポーションの材料には高価な物が多いのだ。
それこそ俺の求める至高のポーションとなると金貨では足りず聖金貨が必要ってこともあるくらいだ。
当分は安く作れるポーションで資金稼ぎってとこが妥当か……。
しかし、それでも金貨1枚でできることは少ない。
ポーションは魔法式を使って精製するがその魔法式を作るのにも魔法の道具が必要なのだ。
当然、道具にも金はかかる。
やっぱり、ここを工房にするしかないか。
本来であれば専用の工房と道具を用意してポーションを作るのだが、今の俺には資金がなさすぎる。
道具を買いそろえるだけで生活が立ち行かなくなってしまうだろう。
仕方ない背に腹は代えられない。
そんな感じに思考実験を繰り返してようやく俺のポーション工房計画の土台が出来上がった。
計画その1:宿の一室で一番簡単に作れるポーションを作って販売する
計画その2:販売して得た資金を元に工房を作る
計画その3:少しづつ道具を集めてポーションを量産する
とまぁこんな感じだろう。
専門家が見たら突っ込みどころは多そうだけど大方の方向性は整った。
これに向けて動くのがよさそうだな。
よし、そうと決まれば頑張ろう。明日から。
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