ポーションしか作らないので宮廷から追放されたけれど、俺は絶対にポーション作りを諦めません!

中谷キョウ

文字の大きさ
1 / 16

宮廷魔法使い、追放される

しおりを挟む

「お前、ポーション以外作る気はないのか」

 帝国の中心で世界一の都と呼ばれる帝都。
 中でもさらにきらびやかで世界中の誰しもが憧れる宮廷。

 そこで俺こと、エルロッド・アーハイドは膝をついていた。

 普段から愛用しているよれよれのローブを着て
 おじいちゃんのお古としてもらったオンボロな杖を傍らに置く。

 場違いな恰好であると自分でも自覚しているが起き抜けにいきなり呼び出されたのだからしょうがないよな。

「もう一度聞こう。ポーション以外作る気はないのだな」

 そう言うのはこの帝国を統べる王の中の王、皇帝だ。
 宮廷魔法使いである俺の主人でもある。

 正直、彼の質問に答える気にならないが
 毎日ただでポーションを作らせてもらっているのだ。

 答えるべきだろう。

「恐れながら申し上げます。私はポーション作りこそこの世の至高だと考えております」

「ほぅ続けよ」

「ポーションは魔法を持たぬ者でも魔法使いと同じ効果を得ることができます
 作り方によっては回復魔法の最高位である再生魔法など、ありとあらゆる回復魔法をたった一本のポーションで実現することができます
 そう、たった一本のポーションで究極の魔法を使えることができるのです」

 ポーションは原料に魔法式と呼ばれる魔法を掛けることで出来上がる魔法薬である。
 そう言うと簡単に開発できるように聞こえるが原料となる魔草や魔石の種類は大量にあるし、魔法式にいたっては正解がない。
 また、俺は開発ばかりやっているが魔法式と原料の配合さえわかれば見習いの魔法使いであってもポーションを作ることもできるのだ。

 無数にある配合から、最高のポーションを見つけること。
 それが俺の目標なのだ。

「つまり、ポーション以外に作る気はないのだな」
「はい」

 そうはっきりと告げる。
 俺の目指す目標のためにポーション以外のものを作るなんて言語道断だ。

 しかし、俺を見る皇帝の目は冷ややかだ。
 もしかして、皇帝は何か俺に違う物を作らせたいのか?

「なるほど、お前の言う話はもっともな話だ……だが、な」

 パチンッと大臣が指を鳴らすと玉座の袖から見覚えのある顔が出てきた。
 俺の幼馴染であるグリムだ。
 たしか、宮廷魔法使い見習いとして宮廷の工房で働いていたはず。

「ここにいるグリム・オーガスはポーションだけでなく魔道具も作るそうだ」
「魔道具……ですか?」

 魔道具とはポーションの劣化品のようなものだ。
 道具に魔法式を掛けて魔法が扱えるようにしたもの。

 それが魔道具だ。

 魔力さえあれば壊れるまで何度も使えるという点ではポーションより優れているが、魔法式をどんなに改良しても品質が上がらないし、第一ポーションよりも能力で劣る。
 一時期、研究していた時もあるが結論はポーション以下。研究結果もゴミ箱に破り捨てたほどだ。

「ああ、そうだ。お前はたしかに天才魔法使いだ
 お前の作るポーションはまさにわが国にとっても誇れる一品ともいえよう
 だが、魔道具を作らないようであれば宮廷には不要だ
 この者から宮廷魔法使いの資格をはく奪せよ!」

 皇帝がそう言うのと同時に入口からワラワラと兵士たちが現れた。

「えっ――ちょっ、ま――」

 兵士たちは俺を取り囲むとそのまま宮廷からつまみ出された。

 使っていた研究室は没収され、わずかな私物と退職金が入った袋だけ持たされて、俺は帝都のど真ん中に放り投げだされたのだ。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜

のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、 偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。 水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは―― 古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。 村を立て直し、仲間と絆を築きながら、 やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。 辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、 静かに進む策略と復讐の物語。

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貴族令嬢、転生十秒で家出します。目指せ、おひとり様スローライフ

ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞にて奨励賞を頂きました。ありがとうございます! 貴族令嬢に転生したリルは、前世の記憶に混乱しつつも今世で恵まれていない環境なことに気が付き、突発で家出してしまう。 前世の社畜生活で疲れていたため、山奥で魔法の才能を生かしスローライフを目指すことにした。しかししょっぱなから魔物に襲われ、元王宮魔法士と出会ったり、はては皇子までやってきてと、なんだかスローライフとは違う毎日で……?

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

最愛の番に殺された獣王妃

望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。 彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。 手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。 聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。 哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて―― 突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……? 「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」 謎の人物の言葉に、私が選択したのは――

処理中です...