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宮廷魔法使い、追放される
しおりを挟む「お前、ポーション以外作る気はないのか」
帝国の中心で世界一の都と呼ばれる帝都。
中でもさらにきらびやかで世界中の誰しもが憧れる宮廷。
そこで俺こと、エルロッド・アーハイドは膝をついていた。
普段から愛用しているよれよれのローブを着て
おじいちゃんのお古としてもらったオンボロな杖を傍らに置く。
場違いな恰好であると自分でも自覚しているが起き抜けにいきなり呼び出されたのだからしょうがないよな。
「もう一度聞こう。ポーション以外作る気はないのだな」
そう言うのはこの帝国を統べる王の中の王、皇帝だ。
宮廷魔法使いである俺の主人でもある。
正直、彼の質問に答える気にならないが
毎日ただでポーションを作らせてもらっているのだ。
答えるべきだろう。
「恐れながら申し上げます。私はポーション作りこそこの世の至高だと考えております」
「ほぅ続けよ」
「ポーションは魔法を持たぬ者でも魔法使いと同じ効果を得ることができます
作り方によっては回復魔法の最高位である再生魔法など、ありとあらゆる回復魔法をたった一本のポーションで実現することができます
そう、たった一本のポーションで究極の魔法を使えることができるのです」
ポーションは原料に魔法式と呼ばれる魔法を掛けることで出来上がる魔法薬である。
そう言うと簡単に開発できるように聞こえるが原料となる魔草や魔石の種類は大量にあるし、魔法式にいたっては正解がない。
また、俺は開発ばかりやっているが魔法式と原料の配合さえわかれば見習いの魔法使いであってもポーションを作ることもできるのだ。
無数にある配合から、最高のポーションを見つけること。
それが俺の目標なのだ。
「つまり、ポーション以外に作る気はないのだな」
「はい」
そうはっきりと告げる。
俺の目指す目標のためにポーション以外のものを作るなんて言語道断だ。
しかし、俺を見る皇帝の目は冷ややかだ。
もしかして、皇帝は何か俺に違う物を作らせたいのか?
「なるほど、お前の言う話はもっともな話だ……だが、な」
パチンッと大臣が指を鳴らすと玉座の袖から見覚えのある顔が出てきた。
俺の幼馴染であるグリムだ。
たしか、宮廷魔法使い見習いとして宮廷の工房で働いていたはず。
「ここにいるグリム・オーガスはポーションだけでなく魔道具も作るそうだ」
「魔道具……ですか?」
魔道具とはポーションの劣化品のようなものだ。
道具に魔法式を掛けて魔法が扱えるようにしたもの。
それが魔道具だ。
魔力さえあれば壊れるまで何度も使えるという点ではポーションより優れているが、魔法式をどんなに改良しても品質が上がらないし、第一ポーションよりも能力で劣る。
一時期、研究していた時もあるが結論はポーション以下。研究結果もゴミ箱に破り捨てたほどだ。
「ああ、そうだ。お前はたしかに天才魔法使いだ
お前の作るポーションはまさにわが国にとっても誇れる一品ともいえよう
だが、魔道具を作らないようであれば宮廷には不要だ
この者から宮廷魔法使いの資格をはく奪せよ!」
皇帝がそう言うのと同時に入口からワラワラと兵士たちが現れた。
「えっ――ちょっ、ま――」
兵士たちは俺を取り囲むとそのまま宮廷からつまみ出された。
使っていた研究室は没収され、わずかな私物と退職金が入った袋だけ持たされて、俺は帝都のど真ん中に放り投げだされたのだ。
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