ダンジョン脱税物語 ~ダンジョンで経験値を脱税します!~

中谷キョウ

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イートイン脱税しただけなのに…

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 俺の名前は山田太郎。
 何のヘンテツもない新卒サラリーマンだ。


 それなりの大学は卒業したけど就職した会社はいわゆるブラックで低収入。そして、最近始まった増税によってただでさえ苦しい家計がいつのまにか火の車となった。

 少しでも節約したい俺は毎日の食費を抑えるために外食は控え出来る限り自炊することにした。
 けれども料理なんてまともにできないし、ボロアパートの自室はゴミだらけでまともに食事なんてできっこない。

 そんなこんなで俺は仕方なくコンビニやスーパーで購入したおにぎりとかをイートインスペースで食べることにしていた。


 もちろん、軽減税率とかいう抜け穴を使って、お持ち帰り価格でだ。

「ん、あれ?」

 目を覚ますと知らない場所にいた。

 どこなんだここは。
 ついさっきまでいつものコンビニのイートインスペースで食べていたはずだ。

「いらっしゃい、山田太郎君」


 天使が舞い降りた。
 綺麗な白い翼と頭の上には金色の輪。

 銀色の髪と透き通ったあめ玉のような金色の瞳。柔らかなシルクの服をまとった彼女は小さく微笑んでいた。

「あの……あなたは?」

「ボクは天使」

「天使」

 天使。
 なるほど、その名のとおり綺麗な少女だ。

「実はね山田君。キミは死んだんだよ」

「えぇ!?」

 衝撃の事実!
 なるほど、だから天使なのか。以外に冷静だな……俺。しかし、なんで死んだんだ?

「その分だと覚えてないみたいだね」

「覚えていない?」

「うん。キミは殺されたんだ」

「殺された!? 誰に!?」

「……キミが通っているコンビニの店長(雇われ)だよ」

「えぇ!?」

 いつものコンビニの店長だって?
 なんであの人が良さそうな店長(雇われ)が……。
 いつもニコニコ、バイトの兄ちゃんよりもテキパキ働いていた中年男性がなんで……。

「293回」

「え?」

「キミがそのコンビニでイートイン脱税した回数だよ」

「そ、それがなんだっていうんだ。イートイン脱税なんてみんなやってるだろ」

「そうだね、みんなもやってるけど。キミは目立ちすぎたんだ。キミの通うコンビニの店長にとってキミは悩みのタネだったんだ」

「悩みのタネ。なんでそれだけで殺すの!」

「他の客からの告げ口とかいろんな人から苦情が届いて彼を精神的に追い詰めたんだ。だから、彼は原因であるキミを憎み。殺したんだ」

「いやいや、おかしいでしょ! 警察とか頼るところが他にあるでしょ!」

「んーそれをボクに言われても。やったのはコンビニの店長なんだし」

「じゃあ、なんで俺は生きてんだよ? 俺は死んだんだろ」

「まぁ、そうだね。キミは死んだんだ。けど、キミの死はあまりにもふび……ゴホンッ理不尽すぎて神さまもチャンスをやろうって言ってるんだ」

「チャンス? それってまさかーー」

「キミが考えているとおり生き返るチャンスだよ」

「おお! でも、チャンスってことは生き返れない可能性もあるのか?」

「思ったよりも反応薄いね……うん、キミにはこれから試練を受けてもらうよ」

「試練?」

「そう試練。神さまがキミに与える試練だよ」

「神さまが俺に?」

「そう、ボクが仕えるタマミジンコのタマちゃん様がキミに試練を与えるって」

「タマミジンコ、ミジンコでも神なんだ」

「こらっ……タマちゃん様をバカにしたな! タマちゃん様はレベル1載を超える世界最強の神様なんだよ!! しかもすごく可愛いんだよ!!! それはもう目に入れても痛くないくらい可愛いんだよ!!!!」

「ああ、わかったから。そんなに近づくな! 鼻息を荒げるな!」

「こほんっ……失礼。ごめんね、タマちゃん様のこととなるとつい我を忘れちゃって」

「にしてもキャラ変わりすぎだろ」

「そして、この試練を乗り越えたあかつきには素晴らしい人生がキミを待っているのさ」

「スルーかよ……なんでもいいけどその試練をクリアすればいいのか」

「ふふ、理解が早くて助かるよ。キミにやってもらいたいのは「とある世界」にいる「とある女の子」の人生を変えて欲しいんだ」


 そう言って天使は鏡のような球体を取り出した。
 そこにはひとりの少女が映り込んでいた。


「人生を変える? この子の?」

「うん、この子はキミと同じですごくふび――いや、理不尽でね。タマちゃん様もどうにかしたいと思ってるんだ」

「理不尽って例えばその……虐待されてるとか?」


 映像を見る限りそんな節はない。謎の奇病に侵されている風にも見えない。


「んーそういうことだったらキミにもわかりやすいんだけどね。この子については現地で知った方が早いかな」


 なるほどな……映像からはわからないってことか。


「ならさっさと行こうぜ」

「やる気満々みたいだね。じゃ、さっそく転送するよ」

 ポチッ

 満面の笑みを浮かべた天使が赤いボタンを押すと俺が立っていた床がパカッと開いた。

 そして、そのまま自由落下。

「うわぁああ!」


 俺の身体は真っ暗な闇へと落ちていった。
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