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セバスチャンな始まり
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「セバス君。今気づいたんだけど、あの子と会う前にいろいろ準備しといた方がいいと思うよ」
セバスチャンの身体に慣れるため、屋敷内を散策している途中で天使がそう呼びかけた。
「準備ってなにか必要なものがあるのか? 正直、この身体ならなんでも出来るような気がするぜ」
セバスチャンの身体は優秀だ。前の俺の身体よりもよく動く。
そして、なにより若い。
身長が低くてハスキーボイスなのは少し嫌だが素の俺よりもスペックが高い。
主に顔面が。素の俺はいわゆる普通だった。
メガネをかければオタクっぽくなるし、ちょっと髪を染めたりすればやんちゃ盛りな大学生にも見えなくはなかった。
セバスチャンの年齢は17歳。
童顔というか女顔。身体はすらっとしていて肌も白い。それでいて力持ち。なんていうか漫画の主人公みたいなタイプで俺にはもったいない。
「たしかにキミの身体は強いけど。少なくとも前のセバス君はあの子のせいで死んじゃったんだよ」
「アリスのせいで死んだ? なんで?」
「んー、ちょっとね……」
「なるほど、そこに問題があるってことか。だったら、それこそ先にあの子に会うべきだろ」
「はぁ、セバス君がそうしたいならそうすればいいよ。ボクはただの監視役だからね」
「そうか、お前は俺の監視だったのか」
「うん、あんまりこっちで暴れないようにしたり。あとは助言とかもするよ。今みたいにね」
天使の加護がついているってことはある意味無敵だ。
「それと伝えるのを忘れていたけど、タマちゃん様からキミにプレゼントがあるんだ」
「プレゼント?」
なんだろう。
神様とはいえミジンコからもらえるものなんて俺に使えるものなのか。
「キミ、今失礼なこと考えてたでしょ」
「!」
「あ、やっぱりその反応は図星だね!! いくらキミでもタマちゃん様をバカにするなら――」
「待て、待てって! バカにはしてないから!」
「そう? ならいいんだ……今度は許さないからね」
バ、バレてる……。
あんまり迂闊なことは思ったり言わない方がいいな。
「で、キミへのプレゼントなんだけど……それはもうすでにキミの中にある」
「もしかして、この身体セバスチャンがプレゼントなのか?」
「いやいや、さすがにこの世界の神様でもタマちゃん様はそんなにけち臭くないよ」
「ってことはもしかしてスキルとか使えたりするのか!」
「ビンゴ。タマちゃん様がキミへの餞別としてこの世界『タックスヘルン』で有用なユニークスキルをセバスチャンの身体に付与したんだ」
「ユニークスキル!」
なんだそのワクワクしそうなワードは。
これはあれだ。
伝説の勇者がもらえるような特別なスキルに違いない。
「で、なんなんだそのスキルって」
「ふふっ、それは後の楽しみにした方がいいよ。ダンジョンで使うのが一番わかりやすいし」
ダンジョン!?
スキルお預けよりもそっちの方が気になる!
多分この『タックスヘルン』っていう世界は剣とか魔法があるファンタジーな世界に違いない!
「とりあえず、あの子はまだ朝食前だから今のうちに色々教えておくね」
「ああ、さっさとやろうぜ」
ダンジョンありありと聞いてテンションMAXだ。
今ならなんでもできるような気がする。
「そうだ。天使。あの子の名前はなんていうんだ。知り合いなら名前を知っといた方がいいだろ。それにお前の名前もな」
「あの子の名前はアリス。そして、ボクの名前はガブリエル。ボクの名前の方は別に気にしなくてもいいよ。特に意味もないから」
「呼ぶ時天使ってあんまり呼びたくないだけだよガブリエル。俺は前まで天使とか神さまなんて信じちゃいなかったんだ」
「やっぱり不憫だねキミは」
いまどき神を信じない日本人なんて珍しくもない。
だから、そんなゴミを見るような目で見るのはやめて。傷ついちゃうから!
あ、でもちょっといいかも。
「ますます不憫だねキミは」
俺の心を読んだかのような蔑みの目を向けるガブリエル。
は、反論できねぇ……。
そんな風にやりとりしながら俺はガブリエルからセバスチャンとしてのレクチャーを受けた。
セバスチャンの身体に慣れるため、屋敷内を散策している途中で天使がそう呼びかけた。
「準備ってなにか必要なものがあるのか? 正直、この身体ならなんでも出来るような気がするぜ」
セバスチャンの身体は優秀だ。前の俺の身体よりもよく動く。
そして、なにより若い。
身長が低くてハスキーボイスなのは少し嫌だが素の俺よりもスペックが高い。
主に顔面が。素の俺はいわゆる普通だった。
メガネをかければオタクっぽくなるし、ちょっと髪を染めたりすればやんちゃ盛りな大学生にも見えなくはなかった。
セバスチャンの年齢は17歳。
童顔というか女顔。身体はすらっとしていて肌も白い。それでいて力持ち。なんていうか漫画の主人公みたいなタイプで俺にはもったいない。
「たしかにキミの身体は強いけど。少なくとも前のセバス君はあの子のせいで死んじゃったんだよ」
「アリスのせいで死んだ? なんで?」
「んー、ちょっとね……」
「なるほど、そこに問題があるってことか。だったら、それこそ先にあの子に会うべきだろ」
「はぁ、セバス君がそうしたいならそうすればいいよ。ボクはただの監視役だからね」
「そうか、お前は俺の監視だったのか」
「うん、あんまりこっちで暴れないようにしたり。あとは助言とかもするよ。今みたいにね」
天使の加護がついているってことはある意味無敵だ。
「それと伝えるのを忘れていたけど、タマちゃん様からキミにプレゼントがあるんだ」
「プレゼント?」
なんだろう。
神様とはいえミジンコからもらえるものなんて俺に使えるものなのか。
「キミ、今失礼なこと考えてたでしょ」
「!」
「あ、やっぱりその反応は図星だね!! いくらキミでもタマちゃん様をバカにするなら――」
「待て、待てって! バカにはしてないから!」
「そう? ならいいんだ……今度は許さないからね」
バ、バレてる……。
あんまり迂闊なことは思ったり言わない方がいいな。
「で、キミへのプレゼントなんだけど……それはもうすでにキミの中にある」
「もしかして、この身体セバスチャンがプレゼントなのか?」
「いやいや、さすがにこの世界の神様でもタマちゃん様はそんなにけち臭くないよ」
「ってことはもしかしてスキルとか使えたりするのか!」
「ビンゴ。タマちゃん様がキミへの餞別としてこの世界『タックスヘルン』で有用なユニークスキルをセバスチャンの身体に付与したんだ」
「ユニークスキル!」
なんだそのワクワクしそうなワードは。
これはあれだ。
伝説の勇者がもらえるような特別なスキルに違いない。
「で、なんなんだそのスキルって」
「ふふっ、それは後の楽しみにした方がいいよ。ダンジョンで使うのが一番わかりやすいし」
ダンジョン!?
スキルお預けよりもそっちの方が気になる!
多分この『タックスヘルン』っていう世界は剣とか魔法があるファンタジーな世界に違いない!
「とりあえず、あの子はまだ朝食前だから今のうちに色々教えておくね」
「ああ、さっさとやろうぜ」
ダンジョンありありと聞いてテンションMAXだ。
今ならなんでもできるような気がする。
「そうだ。天使。あの子の名前はなんていうんだ。知り合いなら名前を知っといた方がいいだろ。それにお前の名前もな」
「あの子の名前はアリス。そして、ボクの名前はガブリエル。ボクの名前の方は別に気にしなくてもいいよ。特に意味もないから」
「呼ぶ時天使ってあんまり呼びたくないだけだよガブリエル。俺は前まで天使とか神さまなんて信じちゃいなかったんだ」
「やっぱり不憫だねキミは」
いまどき神を信じない日本人なんて珍しくもない。
だから、そんなゴミを見るような目で見るのはやめて。傷ついちゃうから!
あ、でもちょっといいかも。
「ますます不憫だねキミは」
俺の心を読んだかのような蔑みの目を向けるガブリエル。
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そんな風にやりとりしながら俺はガブリエルからセバスチャンとしてのレクチャーを受けた。
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