ダンジョン脱税物語 ~ダンジョンで経験値を脱税します!~

中谷キョウ

文字の大きさ
9 / 16

不穏な学園

しおりを挟む

 その日、アリス・フローゲンハイトはずっと不機嫌だった。
 学園に登校して自席へ着席をしても、ずっと口を尖らせて周りに対して今日は不機嫌であることをアピールしていた。

 それもそのはずである。今日はアリスにとって忘れてはならない嫌な授業がある日だったのだ。

 ゆえに学園へ向かう途中の馬車で今日の授業割を思い出してからずっと無理矢理不機嫌そうなオーラを醸し出しているのだ。

「あら、アリスさん。今日はいつにも増して不機嫌そうね」

「なによ、リリス。何か用なの?」

「いえ、天才のアリスさんに一言挨拶をと思いましてね。聞きましたわよ。今日の実技で試合をなさるそうね。お相手はご友人のキャロさんでしたっけ? 天才のアリスさんでしたら落ちこぼれのキャロさんに負けるはずはないですわ。頑張ってくださいまし」

 リリス・アーノルド。
 アリスの同級生でアリスの再従姉妹はとこにあたる人物である。

 アリスの祖母とリリスの祖母は実の姉妹であるがかなり仲が悪く、その影響で孫である2人も仲があまりよろしくなかった。

 しかし、貴族令嬢という看板の下では表だって対立することはなく、顔を合わせる度に遠回しな嫌味を言い合う程度にとどまっていた。

「そうね、ありがと」

 機嫌がすこぶる悪いアリスはそう素っ気なく言葉を返すと視線をリリスから外した。

「アリスさん! いくら、リリスさんの再従兄弟はとこだとしても無作法ではありませんか!」

「そうですわ、貴族令嬢としてはあるまじきお言葉ではありませんこと?」

 リリスの取り巻きが何かわめき散らしているがアリスは完全無視だ。
 というかアリスはリリスの取り巻きの名前どころか顔すらまともに覚えていない。

 リリスも取り巻きたちには辟易しているのか、彼女たちの言葉を遮るとふんっと鼻を鳴らして立ち去った。

 何だかんだ言って二人は生まれた頃からの付き合いである。
 アリスの不機嫌オーラを感じ取ったリリスはそのまま取り巻きたちと談笑に入った。

「アリスちゃん、ごめんね。私がドジで」

 不機嫌そうなアリスへ親友のキャロ・バークスが申し訳なさそうに声をかける。
 アリスは成績優秀なため実技での試合を免除されていた。

 ……のだが、友人であるキャロが落第してしまい、さらにはクラス全員に試合で敗北するということになったため、唯一、試合をしていないアリスが矢面になったのだ。

「あんたは悪くないわキャロ。悪いのは全部、あの性悪教師なんだから」

 キャロが落第したのは決してキャロが悪いわけではなかった。

 運動音痴でステータスも低く、スキルを一つも持っていないキャロはこの学園のヒエラルキーの最底辺であり、ヒエラルキーのトップに立つリリスたちにとっての恰好の良い獲物だった。

 つまるところ、キャロはリリスたちの妨害によって落第してしまったのだ。
 いつもなら親友であるアリスがキャロを庇うのだが、起きたのがアリスのいない実技の授業だったため庇えなかった。

(本当なら、今日は休むつもりだったのよ……)

 そうアリスは口をぎゅっと噛み締めた。
 いくら、キャロのためとはいえ、実技の授業に出ることはアリスにとって想定外のことなのだ。
 下手なことをすればレベルが1であることがバレてしまう。

 レベル1でも覚えられる魔法や簡単に取得できるスキルはすべて覚えているが、レベルの違いは格の違い。

 どんなに天才でも、どんな努力家であっても格の違いを埋めることは一朝一夕ではないのだ。

 とくに装備品……武器や鎧はレベルが足りないといくらステータスがあっても装備できない。
 レベルに左右されないスキルや、魔力量によって扱える種類が決まる魔法だけではどうしようもないのだ。

(それもこれもセバスチャンのせいなのよ!)

 怒りの矛先はいつの間にかセバスチャンへと向いていた。
 昨夜、セバスチャンは秘密の特訓によって死んだはずなのに、今朝ピンピンとしていた。
 本人は疲れがスッキリとれたとか言ってるからさらに謎が深まるばかり。

 実はセバスチャンは既に死に、ミジンコ神のタマちゃん様によって復活し、中身が山田太郎に代わっていることなんてアリスは知る由もなかった。

 今日のことを思ってアリスは深くため息をついた。

「……はぁ、帰りたい」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。

タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。 しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。 ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。 激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

【超速爆速レベルアップ】~俺だけ入れるダンジョンはゴールドメタルスライムの狩り場でした~

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
ダンジョンが出現し20年。 木崎賢吾、22歳は子どもの頃からダンジョンに憧れていた。 しかし、ダンジョンは最初に足を踏み入れた者の所有物となるため、もうこの世界にはどこを探しても未発見のダンジョンなどないと思われていた。 そんな矢先、バイト帰りに彼が目にしたものは――。 【自分だけのダンジョンを夢見ていた青年のレベリング冒険譚が今幕を開ける!】

処理中です...