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第1話① 別れ、そして出立
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セシリアたちが出立してから2年。
フォトンは王都から向かって西。人類圏最西端にある小さな村ミレナで静かに暮らしていた。
「こんにちわー、薬草お届けに参りました」
その日もフォトンは農園で栽培している薬草を村の雑貨屋に届けに来ていた。
「あら、フォトンちゃん。いらっしゃい。今週もえらいわね」
「ミーアおばさん。『ちゃん』はやめてくださいって。もうオレも子どもじゃないんですから」
雑貨屋のおばさんことミーアおばさんとフォトンは長い付き合いだ。
それこそフォトンがこの村にやってきたころからの知り合いである。
「あら、そうね。あなたが賢者様のところにきてからもう10年も経ってるのよね」
「おばさんったら。昔話もやめてくださいって。はい、薬草ここにおいておきますからね」
「ふふっありがとう。あ、そういえばうちの娘も薬草が足りないって言ってたわ。少しばかり教会にも持っていってくれるかしら」
「ええわかりました」
フォトンは村はずれにある孤児院に住んでいる。
そこは王国の要職を引退したとある賢者が勇者の見込みのある子どもを集め育てていた孤児院でフォトンはその孤児院で世話になっている。
ミーアが営業している雑貨屋から出るとフォトンはすぐさま教会へ向かった。
「こんにちわー。クレア、おばさんに言われて薬草持ってきたよ」
「あ、フォトン兄。ちょうどいいところに。薬草ちょうだい」
づかづかと茶髪の少女がやってきて薬草を受け取る。
彼女はクレア。ミーアの娘で数年前から教会の仕事に就いている少女だ。
「あと、ちょっと手伝ってくれる?」
そう言ってクレアは教会の奥の部屋へと手招きする。
促されるまま奥の部屋へ入るとフォトンにとって意外な人物が目に入った。
「あれ、村長?」
「おうフォトンか。薬草持ってきてくれたんじゃな」
この村の村長である。村長はベッドに横になっていた。
「村長は安静にしてて。フォトン兄、これから村長の治療するから、フォトン兄は足押えてて」
「え、あ、うん」
荷物を置いて訳の分からぬまま村長の足を押える。
クレアは薬草を村長の腰へ置くと手をかざして詠唱を始めた。
『神聖術式第8位階魔法ヒーリング』
詠唱に伴いクレアの手と薬草に不思議な光が包み込む。
「ぐ……」
それに呼応するように村長が苦悶の表情を浮かべる。
神聖術式第8位階魔法ヒーリング、いわゆる回復魔法は簡単なケガを治すのに使われる神聖術式魔法の中でも低位の魔法である。
扱える人が多い分、魔法としての能力はあまり高くないのだ。
「はい村長、終わったよ」
「ありがとう。クレアちゃん、これで少しは腰が軽くなったわい」
「村長。また腰やらかしたんですか?」
「おうフォトンも薬草ありがとな。最近は腰が悪くなってきての。今日もギックリ腰をやらかしてしまったんじゃ」
腰をトントンと叩く村長。
村長が腰がらみで教会に厄介になるのはフォトンが知る限りでもこれで3回目だ。
「まったく無茶ばかりやるんだから。もう年を考えてよね」
「ふぉっふぉ、クレアちゃんには頭が上がらんわい」
「ところでフォトンや。勇者の軍勢が魔王領へ攻め入ったという話はもう聞いておるかのぅ」
「今朝、聞きましたよ。と言っても半年前の話みたいですけど」
レムリア王国の西にあるミレナ村は魔王がいる魔王領からかなり離れている。
そのため、勇者による魔王討伐の情報が入ってくるのも遅い。
「セシリアちゃんたちも無事だといいんじゃがのぅ」
「大丈夫ですよ村長。セシリア姉たちが魔王ごときにやられるわけないよ」
そう言ってクレアは期待の目をフォトンへと向けた。
セシリアは強い。元々強いうえに教会が勇者に任命してから更にその力が倍増している。
もうその辺の魔族くらいなら片手間に倒せるくらいには強い。
それはセシリアと一緒に育ち、セシリアと共に魔王討伐に旅だったアーガスやチェルシー、ロレンスも同じことだ。
この村にある賢者の孤児院で育った彼らは皆、一般人の基準から外れた規格外の強さを持っている。
フォトンも同じなのだが、フォトンには他の4人とは違ってとある大きな欠点があった。
だから、フォトンだけ魔王討伐に参加することが叶わなかったのだ。
「そうだね。セシリアたちなら魔王もやっつけてくれるよ」
フォトンは寂しそうに笑った。
***
「フォトン兄、このあとちょっと時間ある?」
元気になった村長を教会から追い出したあとクレアはそう尋ねた。
「今日の分の薬草は配り終えたから。空いてるよ」
「やった。なら、買い物に付き合ってほしいの」
「いいけど、食材は昨日買いに行ったばかりだよね。今日はどこに行くの」
「フォトン兄、今日は月に一度の露店市だよ。ちょうど新しい髪飾りが欲しかったの」
ルンルンと支度を始めるクレア。
クレアは事あるごとにフォトンを買い物に連れ出している。
そうでもしないとフォトンは家にこもってしまうというのもあるが、それ以上にクレアにはフォトンを誘いたい明確な理由があった。
「フォトン兄。さ、行こ♪」
「いいから、そんなに引っ張らないでくれよ」
「ダメ。フォトン兄ったらすぐに居なくなるんだから。この間だってそう、お野菜選んでたらいつの間にかいなくなってたし」
プンスカと怒るクレアをなだめながらフォトンたちは露店市へと向かった。
露店市とは外からやってくる商人たちが月に一度集まり市場を開くことでこの村では手に入りにくい工芸品等が手に入る絶好の機会でもある。
そして、数多の商人と共に東……王都から情報もやってくる。
「おい知ってるか。勇者の軍勢がいよいよ魔王領だってさ」
「ああ、東側諸国も魔王軍から解放したんだろ。こりゃあ魔王との戦いも案外すぐに終わるかもな」
商人たちの声は明るい。
10年以上続いていた戦争にようやく終わりの目途がたち浮足立っているのだろう。
そのおかげか、露店市の商品もいつもよりお買い得な品が並んでおり、クレアもお目当てであった髪飾りもいつもより品ぞろえが良い。
「フォトン兄フォトン兄。これ、似合うかな」
そう言って商品を試しに身に着けるクレア。赤色の髪飾りはクレアの茶髪には良く映える。
「うーん、クレアなら似合うと思うよ」
「じゃあこっちは?」
「うん、それもいいね」
「それなら……こっちは?」
「いいんじゃないかな?」
「むぅ、フォトン兄さぁ。テキトーじゃない?」
クレアはフォトンの鈍い反応に頬を膨らませる。
彼女が選んだ赤い髪飾りは茶髪に良く似合うのだが、フォトンはいつも通り優しく微笑むだけであった。
セシリアたちが魔王討伐へ向かってからもう随分と経つのにフォトンの心はこの村には無く、いつも遠くにいるセシリアを気にしていた。
だからこそ、クレアはしょっちゅうフォトンを買い物という名のデートに連れ出すのだが当の本人は気にする事はなかった。
「フォ、フォトン兄ぃー」
二人が露店市を巡っていると遠くからフォトンを呼ぶ、少年の声が聞こえた。
「リオ?」
振り向くとリオと呼ばれる少年がいた。黒色の髪に犬の耳としっぽがトレードマークの少年はフォトンに気づくと息を切らしながら声をあげた。
「た、大変なんだ……東門で馬車が……」
「リオ。落ち着いて。馬車がどうかしたのかい?」
「魔王軍に襲われているんだ」
***
村の東。そこには王都へと続く、この村と外界とをつなぐ街道があった。
王国の最西端ということもあり普段は商人くらいしか通らない小さな街道にその馬車は立往生していた。
高級な大きな馬車だが、全体的に壊れておりもうその役目を果たせそうにない。
そして、馬車を守るように2人の騎士たちが剣を構えている。
「ただの人間如きがこの魔王軍第1軍団に所属する俺様たちを相手によく耐えたな」
騎士たちと相対するように魔王軍の兵士たちが立ちはだかる。
満身創痍な騎士たちと違い、彼らには傷どころか疲れの色すらなかった。
「しかし、こんな辺境まで逃げるとは手間を掛けさせられる……まぁ、それもここで終わりだ」
魔王軍たちの先頭に立つ鹿頭の魔族が短剣を騎士たちに向ける。
『暗黒術式第5位階魔法、ヘルフレイム』
暗黒術式魔法。
それは魔族にしか扱うことができない魔法で人間にとっては毒である。
反対に神聖術式魔法が魔族にとって毒であり暗黒術式に対抗できる術である。
しかし、満身創痍の騎士たちにはもう抗うことが出来なかった。
黒い炎に1人が倒れる。
騎士たちが身にまとう鎧には暗黒術式による暗黒力を軽減する効果があるのだが、ここまでの逃亡劇によってその効果は既に失われていた。
「神聖術式第6位階魔法……」
「遅い、『ヘルフレイム』」
鹿頭の魔族の魔法によって最後の騎士が倒れる。
「さて、メインデッシュと行こうじゃないか」
鹿頭の魔族はそう言うと馬車へと目を向ける。
馬車から一人の女性騎士が降りた。
赤色の髪をした彼女もこれまでの騎士と同じく満身創痍だ。
大きなケガを負っているのか左腕はだらんとぶら下がり、歩くのもやっとな状態であった。
「ダメよ、リリルカ。そんなケガではあの魔族には勝てないわ」
女性騎士を追ってもう一人馬車から降りた。
綺麗な銀色の髪に金色の瞳をした少女。はたから見ればただの少女だが、彼女はれっきとしたこの国の王女……姫である。
「姫様、お逃げ下さい。かの村はもうすぐです。もう我らにはあなたを守りきる力はございません。早くお逃げください」
「でも…」
女性騎士の言葉に戸惑う姫だったが、鹿頭の魔族はその様子を黙って見ることはなかった。
手に持った短剣を姫へと向けるといやらしく口を開いた。
「ほぅ、最後まで主を守るか、立派だな人間の騎士よ。そして、王国の姫よ。お前を殺せば俺様も上位魔族になれるんだ。残念だがここで死ね。『ヘルフレイム!』」
黒い炎が姫たちを襲う……かに見えた。
「え……」
「何だと!?」
黒い炎は姫たちへと向かう前に何らかの方法によってかき消されたのだ。
その直後、姫たちの前へと高速で何者かが現れた。
金髪の少年フォトンである。
「助太刀します」
フォトンはそれだけを告げると鹿頭の魔族へと顔を向ける。
「運が良いな王国の姫よ。そして、運が悪いな辺境の少年よ」
そう言うと鹿頭の魔族は新たな障害となったフォトンへとその目を向ける。
「まさか、死ぬためにここへ来たのか?小さな騎士さんよ」
「そんなまさか。最初に言ったとおりオレは助太刀しにここへやってきたんだ」
「少年。お前じゃ無理だ。その魔族は高位魔法を扱えるんだ」
飄々と構えるフォトンに女性騎士が口を荒げる。
「その通り。俺は第3位階魔法まで扱える。第3位階魔法の威力は第5位階魔法とは段違いだぞ」
「そうなんだ」
第3位階魔法と聞いてもフォトンが臆することはなかった。
「なんだ、その舐め腐った態度は――良かろう見せてやろう暗黒術式第3位階魔法…」
「少年!」
「リリルカ、安心して彼は――」
『ヴァイオレットスカル!』
どす黒い魔法が発動した。
ヴァイオレットスカル。見た目はただの黒紫色をした煙。しかし、その煙に呑み込まれた植物は瞬時に枯れていき、地面もどす黒い色へと変色していく。
死の魔法とも呼ばれる広範囲への毒ガス魔法。それがヴァイオレットスカルである。
対応するための神聖術式魔法や抵抗力を持たないものはガスに触れただけで即死。
即死でなかったとしてもガスに触れれば大きなダメージを負うことは間違いないだろう。
「フハハハ、小さな騎士よ。その勇敢な志は立派だが時にそれは蛮勇と呼ぶのだ。まぁ、もう聞いちゃいないか」
ガスが立ち込める中、そう呟いた。
その刹那、高速で何かが鹿頭の魔族の肩に当たった。
「くっ……なんだこれは短剣か?」
続いてもまた短剣が毒ガスを引き裂いて鹿頭の魔族へと直撃する。
「これは神聖力のこもった短剣か、簡単には抜けんな。まさか、新手か?」
鹿頭の魔族の言葉を否定するように毒ガスが晴れていく。
毒ガスの向こうにはフォトンの姿があった。
「な、に……第3位階魔法だぞ。第3位階いや、第2位階の神聖術式魔法か。こんな辺境にそんな人間が……」
死んだはずのフォトンが生きていることに気おされて鹿頭の魔族は後ずさる。
「残念だけど、それは違う。オレには神聖術式は使えないんだ」
「そんな……まさか、信託使いか」
鹿頭の魔族のセリフにフォトンは肯定も否定もしなかった。
信託使い
それは人間の中に稀に現れる信託と呼ばれる特殊能力を持った者のことである。
多く者が強力な戦闘能力を持ち、そのため魔王軍との戦いに駆り出されている。
魔王軍との戦いが佳境となった今現在において、強力な信託を持つ信託使いはこんな辺境にいるべき人間ではない。
「ええい、全員かかれ! 第3位階魔法が扱える俺様が居れば、辺境の信託使いごとき――」
言葉を全て言い切る前に鹿頭の魔族の身体は文字通り吹き飛んだ。
フォトンの右手から強力なエネルギーが飛び出し、それが鹿頭の魔族へと直撃したのだ。
「そんな……何て強力な信託なんだ」
信託には個人差があり、能力の内容や相性によってその強さは千差万別。
魔王軍との戦いから程遠い辺境に強力な信託を持つ信託使いがいるとは鹿頭の魔族には思いも寄らなかったのだろう。
鹿頭の魔族はおびえた目でフォトンを見上げる。
「これで終わりだ」
フォトンは静かに引導を下した。
鹿頭の魔族が息を引き取る姿を見て、劣勢を悟ったのか他の魔族たちは退却を始める。
「姫様、あの者がもしや例の……」
「ええ。2年前一度だけ王都で見たことがあるわ。彼があの勇者の弟よ」
逃げていく魔族たちを見送ってフォトンが二人の下へとやってきた。
「ご無事ですか?」
「久しぶりです。フォトン・アーネスト」
「え……と、どこかで会いましたか? オレ、貴族の知り合いなんか居なくて」
「王都のパーティであなたのお姉さまと一緒に挨拶させてもらったわ」
姫のその言葉にフォトンは思い出す。
「もしかして……」
「今はいいわ。それよりも賢者様とあなたに伝えなくては行けないことがあるの」
「王都がおちたわ。勇者は……あなたのお姉さまは魔王軍に負けたのよ」
フォトンは王都から向かって西。人類圏最西端にある小さな村ミレナで静かに暮らしていた。
「こんにちわー、薬草お届けに参りました」
その日もフォトンは農園で栽培している薬草を村の雑貨屋に届けに来ていた。
「あら、フォトンちゃん。いらっしゃい。今週もえらいわね」
「ミーアおばさん。『ちゃん』はやめてくださいって。もうオレも子どもじゃないんですから」
雑貨屋のおばさんことミーアおばさんとフォトンは長い付き合いだ。
それこそフォトンがこの村にやってきたころからの知り合いである。
「あら、そうね。あなたが賢者様のところにきてからもう10年も経ってるのよね」
「おばさんったら。昔話もやめてくださいって。はい、薬草ここにおいておきますからね」
「ふふっありがとう。あ、そういえばうちの娘も薬草が足りないって言ってたわ。少しばかり教会にも持っていってくれるかしら」
「ええわかりました」
フォトンは村はずれにある孤児院に住んでいる。
そこは王国の要職を引退したとある賢者が勇者の見込みのある子どもを集め育てていた孤児院でフォトンはその孤児院で世話になっている。
ミーアが営業している雑貨屋から出るとフォトンはすぐさま教会へ向かった。
「こんにちわー。クレア、おばさんに言われて薬草持ってきたよ」
「あ、フォトン兄。ちょうどいいところに。薬草ちょうだい」
づかづかと茶髪の少女がやってきて薬草を受け取る。
彼女はクレア。ミーアの娘で数年前から教会の仕事に就いている少女だ。
「あと、ちょっと手伝ってくれる?」
そう言ってクレアは教会の奥の部屋へと手招きする。
促されるまま奥の部屋へ入るとフォトンにとって意外な人物が目に入った。
「あれ、村長?」
「おうフォトンか。薬草持ってきてくれたんじゃな」
この村の村長である。村長はベッドに横になっていた。
「村長は安静にしてて。フォトン兄、これから村長の治療するから、フォトン兄は足押えてて」
「え、あ、うん」
荷物を置いて訳の分からぬまま村長の足を押える。
クレアは薬草を村長の腰へ置くと手をかざして詠唱を始めた。
『神聖術式第8位階魔法ヒーリング』
詠唱に伴いクレアの手と薬草に不思議な光が包み込む。
「ぐ……」
それに呼応するように村長が苦悶の表情を浮かべる。
神聖術式第8位階魔法ヒーリング、いわゆる回復魔法は簡単なケガを治すのに使われる神聖術式魔法の中でも低位の魔法である。
扱える人が多い分、魔法としての能力はあまり高くないのだ。
「はい村長、終わったよ」
「ありがとう。クレアちゃん、これで少しは腰が軽くなったわい」
「村長。また腰やらかしたんですか?」
「おうフォトンも薬草ありがとな。最近は腰が悪くなってきての。今日もギックリ腰をやらかしてしまったんじゃ」
腰をトントンと叩く村長。
村長が腰がらみで教会に厄介になるのはフォトンが知る限りでもこれで3回目だ。
「まったく無茶ばかりやるんだから。もう年を考えてよね」
「ふぉっふぉ、クレアちゃんには頭が上がらんわい」
「ところでフォトンや。勇者の軍勢が魔王領へ攻め入ったという話はもう聞いておるかのぅ」
「今朝、聞きましたよ。と言っても半年前の話みたいですけど」
レムリア王国の西にあるミレナ村は魔王がいる魔王領からかなり離れている。
そのため、勇者による魔王討伐の情報が入ってくるのも遅い。
「セシリアちゃんたちも無事だといいんじゃがのぅ」
「大丈夫ですよ村長。セシリア姉たちが魔王ごときにやられるわけないよ」
そう言ってクレアは期待の目をフォトンへと向けた。
セシリアは強い。元々強いうえに教会が勇者に任命してから更にその力が倍増している。
もうその辺の魔族くらいなら片手間に倒せるくらいには強い。
それはセシリアと一緒に育ち、セシリアと共に魔王討伐に旅だったアーガスやチェルシー、ロレンスも同じことだ。
この村にある賢者の孤児院で育った彼らは皆、一般人の基準から外れた規格外の強さを持っている。
フォトンも同じなのだが、フォトンには他の4人とは違ってとある大きな欠点があった。
だから、フォトンだけ魔王討伐に参加することが叶わなかったのだ。
「そうだね。セシリアたちなら魔王もやっつけてくれるよ」
フォトンは寂しそうに笑った。
***
「フォトン兄、このあとちょっと時間ある?」
元気になった村長を教会から追い出したあとクレアはそう尋ねた。
「今日の分の薬草は配り終えたから。空いてるよ」
「やった。なら、買い物に付き合ってほしいの」
「いいけど、食材は昨日買いに行ったばかりだよね。今日はどこに行くの」
「フォトン兄、今日は月に一度の露店市だよ。ちょうど新しい髪飾りが欲しかったの」
ルンルンと支度を始めるクレア。
クレアは事あるごとにフォトンを買い物に連れ出している。
そうでもしないとフォトンは家にこもってしまうというのもあるが、それ以上にクレアにはフォトンを誘いたい明確な理由があった。
「フォトン兄。さ、行こ♪」
「いいから、そんなに引っ張らないでくれよ」
「ダメ。フォトン兄ったらすぐに居なくなるんだから。この間だってそう、お野菜選んでたらいつの間にかいなくなってたし」
プンスカと怒るクレアをなだめながらフォトンたちは露店市へと向かった。
露店市とは外からやってくる商人たちが月に一度集まり市場を開くことでこの村では手に入りにくい工芸品等が手に入る絶好の機会でもある。
そして、数多の商人と共に東……王都から情報もやってくる。
「おい知ってるか。勇者の軍勢がいよいよ魔王領だってさ」
「ああ、東側諸国も魔王軍から解放したんだろ。こりゃあ魔王との戦いも案外すぐに終わるかもな」
商人たちの声は明るい。
10年以上続いていた戦争にようやく終わりの目途がたち浮足立っているのだろう。
そのおかげか、露店市の商品もいつもよりお買い得な品が並んでおり、クレアもお目当てであった髪飾りもいつもより品ぞろえが良い。
「フォトン兄フォトン兄。これ、似合うかな」
そう言って商品を試しに身に着けるクレア。赤色の髪飾りはクレアの茶髪には良く映える。
「うーん、クレアなら似合うと思うよ」
「じゃあこっちは?」
「うん、それもいいね」
「それなら……こっちは?」
「いいんじゃないかな?」
「むぅ、フォトン兄さぁ。テキトーじゃない?」
クレアはフォトンの鈍い反応に頬を膨らませる。
彼女が選んだ赤い髪飾りは茶髪に良く似合うのだが、フォトンはいつも通り優しく微笑むだけであった。
セシリアたちが魔王討伐へ向かってからもう随分と経つのにフォトンの心はこの村には無く、いつも遠くにいるセシリアを気にしていた。
だからこそ、クレアはしょっちゅうフォトンを買い物という名のデートに連れ出すのだが当の本人は気にする事はなかった。
「フォ、フォトン兄ぃー」
二人が露店市を巡っていると遠くからフォトンを呼ぶ、少年の声が聞こえた。
「リオ?」
振り向くとリオと呼ばれる少年がいた。黒色の髪に犬の耳としっぽがトレードマークの少年はフォトンに気づくと息を切らしながら声をあげた。
「た、大変なんだ……東門で馬車が……」
「リオ。落ち着いて。馬車がどうかしたのかい?」
「魔王軍に襲われているんだ」
***
村の東。そこには王都へと続く、この村と外界とをつなぐ街道があった。
王国の最西端ということもあり普段は商人くらいしか通らない小さな街道にその馬車は立往生していた。
高級な大きな馬車だが、全体的に壊れておりもうその役目を果たせそうにない。
そして、馬車を守るように2人の騎士たちが剣を構えている。
「ただの人間如きがこの魔王軍第1軍団に所属する俺様たちを相手によく耐えたな」
騎士たちと相対するように魔王軍の兵士たちが立ちはだかる。
満身創痍な騎士たちと違い、彼らには傷どころか疲れの色すらなかった。
「しかし、こんな辺境まで逃げるとは手間を掛けさせられる……まぁ、それもここで終わりだ」
魔王軍たちの先頭に立つ鹿頭の魔族が短剣を騎士たちに向ける。
『暗黒術式第5位階魔法、ヘルフレイム』
暗黒術式魔法。
それは魔族にしか扱うことができない魔法で人間にとっては毒である。
反対に神聖術式魔法が魔族にとって毒であり暗黒術式に対抗できる術である。
しかし、満身創痍の騎士たちにはもう抗うことが出来なかった。
黒い炎に1人が倒れる。
騎士たちが身にまとう鎧には暗黒術式による暗黒力を軽減する効果があるのだが、ここまでの逃亡劇によってその効果は既に失われていた。
「神聖術式第6位階魔法……」
「遅い、『ヘルフレイム』」
鹿頭の魔族の魔法によって最後の騎士が倒れる。
「さて、メインデッシュと行こうじゃないか」
鹿頭の魔族はそう言うと馬車へと目を向ける。
馬車から一人の女性騎士が降りた。
赤色の髪をした彼女もこれまでの騎士と同じく満身創痍だ。
大きなケガを負っているのか左腕はだらんとぶら下がり、歩くのもやっとな状態であった。
「ダメよ、リリルカ。そんなケガではあの魔族には勝てないわ」
女性騎士を追ってもう一人馬車から降りた。
綺麗な銀色の髪に金色の瞳をした少女。はたから見ればただの少女だが、彼女はれっきとしたこの国の王女……姫である。
「姫様、お逃げ下さい。かの村はもうすぐです。もう我らにはあなたを守りきる力はございません。早くお逃げください」
「でも…」
女性騎士の言葉に戸惑う姫だったが、鹿頭の魔族はその様子を黙って見ることはなかった。
手に持った短剣を姫へと向けるといやらしく口を開いた。
「ほぅ、最後まで主を守るか、立派だな人間の騎士よ。そして、王国の姫よ。お前を殺せば俺様も上位魔族になれるんだ。残念だがここで死ね。『ヘルフレイム!』」
黒い炎が姫たちを襲う……かに見えた。
「え……」
「何だと!?」
黒い炎は姫たちへと向かう前に何らかの方法によってかき消されたのだ。
その直後、姫たちの前へと高速で何者かが現れた。
金髪の少年フォトンである。
「助太刀します」
フォトンはそれだけを告げると鹿頭の魔族へと顔を向ける。
「運が良いな王国の姫よ。そして、運が悪いな辺境の少年よ」
そう言うと鹿頭の魔族は新たな障害となったフォトンへとその目を向ける。
「まさか、死ぬためにここへ来たのか?小さな騎士さんよ」
「そんなまさか。最初に言ったとおりオレは助太刀しにここへやってきたんだ」
「少年。お前じゃ無理だ。その魔族は高位魔法を扱えるんだ」
飄々と構えるフォトンに女性騎士が口を荒げる。
「その通り。俺は第3位階魔法まで扱える。第3位階魔法の威力は第5位階魔法とは段違いだぞ」
「そうなんだ」
第3位階魔法と聞いてもフォトンが臆することはなかった。
「なんだ、その舐め腐った態度は――良かろう見せてやろう暗黒術式第3位階魔法…」
「少年!」
「リリルカ、安心して彼は――」
『ヴァイオレットスカル!』
どす黒い魔法が発動した。
ヴァイオレットスカル。見た目はただの黒紫色をした煙。しかし、その煙に呑み込まれた植物は瞬時に枯れていき、地面もどす黒い色へと変色していく。
死の魔法とも呼ばれる広範囲への毒ガス魔法。それがヴァイオレットスカルである。
対応するための神聖術式魔法や抵抗力を持たないものはガスに触れただけで即死。
即死でなかったとしてもガスに触れれば大きなダメージを負うことは間違いないだろう。
「フハハハ、小さな騎士よ。その勇敢な志は立派だが時にそれは蛮勇と呼ぶのだ。まぁ、もう聞いちゃいないか」
ガスが立ち込める中、そう呟いた。
その刹那、高速で何かが鹿頭の魔族の肩に当たった。
「くっ……なんだこれは短剣か?」
続いてもまた短剣が毒ガスを引き裂いて鹿頭の魔族へと直撃する。
「これは神聖力のこもった短剣か、簡単には抜けんな。まさか、新手か?」
鹿頭の魔族の言葉を否定するように毒ガスが晴れていく。
毒ガスの向こうにはフォトンの姿があった。
「な、に……第3位階魔法だぞ。第3位階いや、第2位階の神聖術式魔法か。こんな辺境にそんな人間が……」
死んだはずのフォトンが生きていることに気おされて鹿頭の魔族は後ずさる。
「残念だけど、それは違う。オレには神聖術式は使えないんだ」
「そんな……まさか、信託使いか」
鹿頭の魔族のセリフにフォトンは肯定も否定もしなかった。
信託使い
それは人間の中に稀に現れる信託と呼ばれる特殊能力を持った者のことである。
多く者が強力な戦闘能力を持ち、そのため魔王軍との戦いに駆り出されている。
魔王軍との戦いが佳境となった今現在において、強力な信託を持つ信託使いはこんな辺境にいるべき人間ではない。
「ええい、全員かかれ! 第3位階魔法が扱える俺様が居れば、辺境の信託使いごとき――」
言葉を全て言い切る前に鹿頭の魔族の身体は文字通り吹き飛んだ。
フォトンの右手から強力なエネルギーが飛び出し、それが鹿頭の魔族へと直撃したのだ。
「そんな……何て強力な信託なんだ」
信託には個人差があり、能力の内容や相性によってその強さは千差万別。
魔王軍との戦いから程遠い辺境に強力な信託を持つ信託使いがいるとは鹿頭の魔族には思いも寄らなかったのだろう。
鹿頭の魔族はおびえた目でフォトンを見上げる。
「これで終わりだ」
フォトンは静かに引導を下した。
鹿頭の魔族が息を引き取る姿を見て、劣勢を悟ったのか他の魔族たちは退却を始める。
「姫様、あの者がもしや例の……」
「ええ。2年前一度だけ王都で見たことがあるわ。彼があの勇者の弟よ」
逃げていく魔族たちを見送ってフォトンが二人の下へとやってきた。
「ご無事ですか?」
「久しぶりです。フォトン・アーネスト」
「え……と、どこかで会いましたか? オレ、貴族の知り合いなんか居なくて」
「王都のパーティであなたのお姉さまと一緒に挨拶させてもらったわ」
姫のその言葉にフォトンは思い出す。
「もしかして……」
「今はいいわ。それよりも賢者様とあなたに伝えなくては行けないことがあるの」
「王都がおちたわ。勇者は……あなたのお姉さまは魔王軍に負けたのよ」
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もう一人の幼馴染である【魔術士】の少女を頼むと言い残し、グレイスはパーティーから立ち去ることに。
だが、グレイスの【支援術士】としての腕は【勇者】の想像を遥かに超えるものであり、ありとあらゆるものを回復する能力を秘めていた。
グレイスがその卓越した技術を生かし、【なんでも屋】で生計を立てて評判を高めていく一方、勇者パーティーはグレイスが去った影響で歯車が狂い始め、何をやっても上手くいかなくなる。
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「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
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だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
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収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
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