吾等文学ニテ事件ヲ解決ス

序章

1話 悪い癖

一頻り泣き腫らして、落ち着いた二人を置いて、自分の分と二人の荷物を取りに担任と共に学校へ戻った。
担任も憔悴しきっていて、何処か上の空だ。
運転の方が、事故を起こさないか心配に成る程だ。
私はと言うと、いつもの悪い癖で、勝手に事の成り行きが気になって考え事をし始めていた。
何故か、感情を忘れた何かの様に、突如として推理小説のような推理の真似事をしてしまう。
それが、割と当たるというか、何というか、中途半端に鋭いせいか親にまでやっかまれてしまったこともある。

「……先生？」
「ん…どうした？」
「あの原因って、何か聞いてます？」
「『メッタ刺し』って言われたろ？」
「はい……。」
「急に日本刀で襲い掛かられたらしい。」

聞いていて、何となく物騒な地域だなと感じる。
豊臣以前の日本じゃあるまいし、中学生の孅い女の子相手に刃傷沙汰とか正気じゃない。
逆に言えば、それだけ目立つことをしているのだ。
直ぐに警察が解決してくれるだろう。

「ということは、犯人の目星がつきますね。」
「……いや…難しい状態らしい。」
「何がですか？」

何が難しいのだろう。
通常は日本刀などの、刃渡りの長い大型で特定の刃物は所有するのに登録義務があるので、反社会的勢力でもない限りは、大抵の場合足がつく。
逆を言えば、登録されていない物の場合は、例外を除けば極少数の稀なケースのため、こちらも直ぐに判明するのだ。
なのに、それを解決ができそうにない？
一体どういうことなのだろう。