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序章
1話 考察
しおりを挟む冷静になって、息を調えてから、親友にゆっくり話すように、向かい合う。
「まず、訊きたいことが、幾つもあるんだけど、順番に聞くね?」
「うん。」
「まず、ストーカーについて、心当たりはない?」
「私は、見当もついていない。」
目が一瞬だけ、横に動いた。
ヒトは、考えるときに自分の優位な感覚器官に合わせて、視線を動かす反射がある。
視覚優位の人は上、聴覚優位のひとは横、触覚優位(書記記憶など)の人は下か手元(手鏡行為)という具合が代表的である。
つまりは、心当たりがあって、それが関わりたくないか、私たちに影響が及んでほしくないということ。
若しくは、何らかの脅威か強迫観念を感じている。
となれば、答えは一つだ。
私には、詳細な心当たりがあった。
「なら、中学でカツアゲグループのボスが犯行しようとした場所は、ひょっとして城ヶ根町八番地辺りじゃない?」
「えーと……何処?」
「大学生の学生マンションが幾つもあって、多分そこの部屋で集会していなかった?」
「うん……確か、誰かの部屋で、親戚の悪い方と一緒に暮らしているって聞いた。」
これは、本当に知らないことだったのだろう。
考える際に、少し長く上を見た。
地図記憶は空間認識力に寄与する部分が大きいので、自然と上を向くか、暫く正面を見据えて視線を動かさない傾向がある。
ただし、それ故に、話を続けるために、なけなしの情報を出して会話を続けようと努めてくれた。
もう、答えは確定している。
「……それって、カツアゲグループのボスの家じゃない?」
「あ……そうだ……‼」
「私の考えがあっていれば、その人の名字は『百田』じゃない?」
「何で、知ってるの?」
「実は、先生の家の前で事件が起こったって聞いたとき、状況や周囲環境を聞くごとに、小学生の頃に聞いたニュースを思い出したの。」
「ニュース?」
「当時、小学五年生の子どもの方が、虐待に耐え兼ねて、両親を刺殺した事件だよ……確か、情状酌量と少年法の適用によって、社会的に叩かれたのと同時に、同情を集めて、更にはパパラッチ紛いの雑誌記者によって追い回されて、中学入学まで一部の地域では知られていて、その後はグレて、親戚宅で非行三昧の生活をしていたって読んだよ。」
実は、雑誌に載っていたことは本当で、読んだのも本当。
記憶しているのも本当だが、それ以上の情報も出していた。
私は、小学生の時に、一度だけ百田に近しいクラスメイトから、話を聞いたことがあった。
その子は悪ぶっていた、少々痛々しい子どもだったので、事も無げに自慢して、言ってはならなそうな情報まで、シャーシャーと毎日話していたのだ。
「うん……親戚も暴力団の下っ端で、中途半端に悪いことを繰り返しているんだった。」
「因みに、リーダーを除けば、主要なメンツは大学生や社会人で、三人ほどで構成されていたでしょ?」
「うん……。」
「支援は、百田さんの親戚夫婦。」
「当たり……何で?」
「名前からして、安直なグループ名だった筈……確か、『鬼ヶ島』だっけ?」
「グループ名まで?」
「これは、既に彼が小学校六年生の時には、成立していたグループで、その親戚夫婦が集めた学生非行チームで、百田に付いて行く形で最後まで残った人材だということまで、雑誌には書かれていたよ。」
「そうよ……集会に顔を出して、初日にドアを開けて直ぐに乱暴されそうになった……だけど,百田の一言で、全員動きを止めた。」
「……それって…何なら、アンタまで被害受けてるじゃないの‼」
「巴直が怒り狂うのは分かっていたから、今の今までいう気は無かった……。」
言って、思い出してショックが甦ったのか、先程とは違い過呼吸と共に涙を流して、声が出ないまま泣き始めた。
もう、これ以上は、この話題を続けられそうにない。
「……刑事さん。」
「何だ?」
「今すぐ……百田の家を家宅捜索してください。」
「君に指図を受ける筋合いはない。」
「そうじゃない……見解が正しければ……次は芽衣が殺されちゃう!」
「所詮は、推測だ……。」
「そうやって、刑事事件で被害者遺族が危険に晒されそうだという助言があっても、警察は面子が立たない限り、動かないんですね?」
「何だと⁉」
「言いたくは無いですけど、貴方を見ていると、世の中で起こっている警察批判って言うのは、そうやって市民の声に耳を貸さずに、ただ組織と面子重視の、御役所仕事だけをしているような警官が、そのようにしているんだと……批判は正しいのだと感じてしまう。」
「この……っ‼」
「是枝……‼、やめんか⁉」
私は、発破をかける為に挑発したつもりが、滔々殴り掛かろうとしてきた。
抵抗せずに、真正面を見据えて、向き直ったときに、後ろにいた他の二人は、真剣な眼差しでメモ帳を片手に話を聞いて、動こうとしてくれていたのだ。
その証拠に、一番若そうな、新米っぽい警官はスマホで病室を出ながら、連絡を取ってくれていた。
そして、堪えかねたのか、一番年長らしい警官が、額に青筋を立てて、是枝というらしき警官を怒鳴りつけて牽制した。
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