Seeker at night

西崎 劉

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第一幕 終焉の物語と殉教者たち

三:①

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五人の驚いた顔。慌てた様子の、咲夜の手を伸ばした姿を最後に、五人の姿が掻き消える。咲夜は、あの日の友人の側に、同じく純一や裕樹、姫子や鏡子もまた、それぞれの側に居ることだろう。多分、その手には、自分が選んだ植木鉢に、小さな芽が出たばかりの、守護者であった植物があるから、夢でないことは実感できるかと思うけれども、問題は育て成長させることが出来るかだ。白い白い空間は、何もない。それはまだ、何も歴史もそれに伴う時間の経過も無いことを示している。遙は頭を掻いて、根を保護するためだけの、簡素な植木鉢を見ながら、天を仰いだ。
「植物を育てられる環境の星で、命の消失しているトコなんてあるかなぁ・・・・・・」
 そんな状況の星なんて、余程の事情がないかぎり、起きないはずだ。
(たとえば、星が寿命を迎えて命が絶えたとか、外的要因で無くなったとか)
つらつら考えている途中で、そういえば、と思い出した事があった。ナイト・シーカーシリーズの漫画化にあたり、友香が選んだお話に出てくる、魔王と呼ばれた、たった一人生き残った青年が、守った故郷の星の事だ。守ったとは言っても、全てを守れたわけではない。最初は理由が判らず故郷の国を失い、最初の怒りは故郷を侵略し滅亡させた隣国へと向けた。
 けれども、己と同じ様な経験をしたものたちが次々と現れ、調べていく内に根本的な原因を知る。異端だと封じられた異能者と出会い、彼の語る事を頼りに多くの同士の協力を得て、異能者たちが、科学者と組んで、自分たちが見えているモノを他者に見せる事が出来る機械を開発し、それで自身の故郷であり母なる星へと侵略するモノたちを知ったのだ。異能者たちがそうであったように、自分たちが見せられたモノが作り出した“紛い物”だと非難され、それでも逃亡生活を送りながら、異能者たちと手を取り合い、侵略者たちを退ける武器を開発したのだ。それでも、圧倒的に敵の数が多く、その上に理解者も全体数から比べて、片手に満たないほどであったから、戦力差もあり、最終的にはたった一人の生き残りとなった。
(・・・・・・最後の足掻きとは言え、最後の最後、星としての存在の核、それを奪われずに済んだから、完全な死の星とはなっていないけど、世界樹の殆どを奪われて・・・・・・生命の源である世界樹は新たな命を生み出す力を失い、枯れた。世界樹は、星と対。星が世界樹を新たに生み出すには、それだけの力の蓄積が必要だ。けれども・・・・・・)
 遙はふと、呟く。
「わたしがあの夢を見なくなってどれだけ経つか判らないけれど、新しい世界樹が生まれたのかしら?」
そう、遙は思わず反芻する。
「星の名前は・・・・・・なんだったっけ?たしか惑星“セラフィタ”」
 惑星の名を呟いた、それだけだったはずだ。が、遙の周囲の環境が変わる。何処かに引き込まれた印象を持った、そう感覚が告げる。虚無とでもいえる、余りにも寂しい枯れた大地に浮かぶ、光の玉。その中に浮かぶ五対の翼を持つ、真珠色の鳥。尾は長く、光の加減で虹色に輝く、夢見るように美しい鳥だ。遙は眉間に皺を寄せた。目の前の生き物を見て、記憶の奥に引っかかるモノがある。・・・・・・そうだ、青年となった遙が、旅の途中で見た太古の遺跡に描かれた壁画に、それは描かれていた。“神の具現”として。上空に浮かんだ、光の玉の中で、尽きることもなく嘆いていたその鳥は、困惑した表情のまま、見上げていた遙に気づくと、光の玉から抜け出して、はじめは戸惑うように遙の上空で旋回し、次に遙の持つ小さな苗に気づいたようだった。種から発芽したてのような、双葉しかない、世界樹を。真珠色のその鳥は、歓喜の声を上げた。歌うように、願うように、長く細く遠く高く歌い上げると、旋回しながらゆっくりと上空から降りてきて、遙に近づくにつれて、その体躯を小鳥のように小さく変えて、そうして肩に止まると、遙を伺うようにのぞき込む。意味が通じるか判らなかったが、遙は事情を告げることにした。
「わたしの故郷が、ここと同じく姿無き侵略を受けた。わたしの属する国は癒すために捧げられ、何故かわたしを保護者に指名してね、故郷を託されて“器”を探しているところ、この世界樹は、元々切り捨てられた一振りの枝だったんだよ」
『・・・・・・・・・・・・・』
「今は、この“世界樹”を受け入れてくれる“星”を探している。この世界樹の中に眠るわたしの故郷の丸ごと未来を託す星を」
『・・・・・・懐カシイ、気配』
「わたしが?」
『・・・・・・ソウ。・・・・・・我、眠ル。・・・・・・託ス、イイカ?』
「わたしが管理できるのは、植木鉢程度だよ?」
『内宇宙デ管理スレバイイ。我を受ケ取レ。ソレデソロウダロウ』
「・・・・・・・」
『世界樹、半身。我、亡クシタ。・・・・・・・ソナタガ居ル、安心』
「・・・・・・・・・・・・」
『我、孤独、違ウ。嬉シイ』
 真珠色の鳥はそのまま溶け込むように消える。小鳥が消えたと同時に、複雑な蔦模様の彫り込まれた、片手で抱えられるほどの植木鉢が現れる。遙は足下に現れたそれを、屈んで抱え上げた。中をのぞき込むと、ほんの少しの土が入っている。遙は抱えていた世界樹の苗を、根を保護するために入っていた土と同化するポットごと植え込む。
(あ・・・・・・足りないわ)
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