Seeker at night

西崎 劉

文字の大きさ
19 / 19
第一幕 終焉の物語と殉教者たち

三:③

しおりを挟む
淡々とした返答があった。遙は納得したくない事実に、俯く。たった一人の意思でどうこうできる事ではないのは理解していた。どんなに悩んで気を揉んだとしても、もう知れる立ち位置には居ないのだ。何かをしようとも出来ないほど遠く離れてしまったのである。
「・・・・・・・・・・日本で暮らしていない旅行に訪れた人たちは・・・・・・・」
 脳裏に過ぎったのは、あの時に遙達と共に目撃することになった、一般人には見ることの出来なかっただろう、異形の姿だ。壁蝨の姿に酷似したソレを見て、家族の安否を確かめるために、遠く離れた故郷に連絡を取っていた、日本に遊びに来ていた青年。
 それに対して返った声がある。
『“末裔”と呼ばれるようになる』
 それを聞いて息をのむ。
「・・・・・・もう、家族に会えないんだね? じゃあ、逆に海外に旅行や出張に出ている人たちも・・・・・・」
『ああ、そうだ。同じ立ち位置だ。日本人の末裔と、呼ばれるようになる』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
『日本に訪れ、あの日に居た、全ての人々が、新しい世界で“始まりの人類”と、呼ばれるようになる。今のように、国別で呼ばれる事ではなく、総じて人類と、カテゴリーで“人”として、区別されるのだ』
遙は深く深くため息を吐いた。どんなに、悩んでも、“こうなってしまった”のだ。旅行に来ていた人たちにとって、運が悪いことに、故郷に置いてきた人々と、突然永遠の別れをしたことになる。彼らは事態を把握したら、それぞれの国の代弁者である領事館に問い合わせをすることになるだろう。領事館に勤める職員達が中心となって、彼らを支えていくことになる。大変な騒ぎになるだろう。物価の上昇もある。何しろもう他国から輸入をすることが現時点では出来ないのだから。これからは、本当の意味での内需拡大をしなければならない。輸入に頼った、食糧確保ではなく、自国生産でもって、国民の食生活を支えなければ生きていけないのだ。農業従事者を増やして生産効率を上げなければ、支えられない。例え国の支援でもって増やしたとしても、すぐに補える類ではないから、様々な物価が高騰しそうだ。遙は現在の国のトップを含めた面々を脳裏に浮かべて、項垂れ頭を抱えたくなる。それぞれの派閥争いと有利性を主張するあまり、即決というのが得意でないことが、普段の政治討論をテレビ中継で見れば解ると言うものだ。
(何しろ、議会中に居眠りしている議員が目立つからねぇ・・・・・・)
 真剣に国を憂い、行動を起こしているんだと、そう見ただけで思えるような相手が少なく見えるのは、己が穿った見方をしているせいかとも思うが、何はともあれ賽は投げられたのだ。
遙は軽く己の頬を叩く。遙にはそこまで責任を負う必要はない。国を反映させ維持して行くのは、それを職業として、国民から税金という賃金でもって支払われている、政治家達の役目だろう。遙はただ、自分の担った役目を果たすだけだ。遙の現在の役目は、抱えている「日の本」という名の世界樹の、あの日までに過ぎて成長した記憶する時間までの育成。それから先の未来は、世界樹が器であり半身である星と紡いでいくはずだ。
(まずは、環境を生み出すための、土台を集めることかな・・・・・・)
 世界樹の根本に僅かに敷き詰められた、腕の中の鉢植えの底の、土を見つつ嘆息する。
(今までと違う環境・・・・・・・いや、今までの環境に要素を加える、というべきか?)
 知識が希望する様々なファンタジィ要素。小説や童話、ゲームなどといった中にしか現在は存在しないモノを脳裏に浮かべる。
(けっこうごちゃごちゃするなぁ・・・・・・けど、下手すると、馴染ませる環境は一カ所以上になる)
 遙は深くため息を吐いた。
(そんなのが実現したら、はっちゃける人たちも居るだろうね?けど・・・・・・・)
 退屈する暇もない、新しい世界の幕開けになる。遙は小さく笑うと呟いた。
(人知れず、その始まりに手を貸したというのが、わくわくするかもね?)
 そんなことを考えていると、周囲が濃霧に包まれ、気がつくと見知らぬ森の中に立っている自分に気がついた。

しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

スパークノークス

おもしろい!
お気に入りに登録しました~

2021.08.29 西崎 劉

感想ありがとうございました!ぼちぼち投稿ですが楽しんでいただけると幸いです(^^♪

解除

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三歩先行くサンタさん ~トレジャーハンターは幼女にごまをする~

杵築しゅん
ファンタジー
 戦争で父を亡くしたサンタナリア2歳は、母や兄と一緒に父の家から追い出され、母の実家であるファイト子爵家に身を寄せる。でも、そこも安住の地ではなかった。  3歳の職業選別で【過去】という奇怪な職業を授かったサンタナリアは、失われた超古代高度文明紀に生きた守護霊である魔法使いの能力を受け継ぐ。  家族には内緒で魔法の練習をし、古代遺跡でトレジャーハンターとして活躍することを夢見る。  そして、新たな家門を興し母と兄を養うと決心し奮闘する。  こっそり古代遺跡に潜っては、ピンチになったトレジャーハンターを助けるサンタさん。  身分差も授かった能力の偏見も投げ飛ばし、今日も元気に三歩先を行く。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

どうぞ添い遂げてください

あんど もあ
ファンタジー
スカーレット・クリムゾン侯爵令嬢は、王立学園の卒業パーティーで婚約もしていない王子から婚約破棄を宣言される。さらには、火山の噴火の生贄になるように命じられ……。 ちょっと残酷な要素があるのでR 15です。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。