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プロローグ
拾われた青年
しおりを挟む人通りの少ない路地裏の、日も射し込まない様な暗がりで、黒髪黒瞳の少女は、黒髪琥珀の瞳の青年を拾った。
青白い顔色に、何処か怯えた様子を見せる彼は、少女に見つかった事で死を覚悟するかの様に固く瞳を閉じた。
しかし、少女が極自然に彼に接し、にっこり微笑みかけて来たので、青年は自分が何であるか無謀にも話してしまった。
逃げ回るのには疲れていた。
脅えられるのにも愛想を尽かしていた。
こんな風に生まれてきたのは彼のせいでは無いのに、彼のなす行動は、彼が生きていくためには仕方がない事だというのに、回りが彼が全て悪いと、彼の存在自体を消そうと追い詰める。
死にたくなくて今まで逃げて来たが、それももう疲れた。
一人でいる事が彼の心を凍えさせた。
かといって、自分で命を絶とうにも、その勇気が持てないでいる。
少女は黙って聞いていた。
彼を恐れる様子も無く、彼を憎む風も無く。
ただ黙って彼を見つめていた。
青年が自分の話に終止符を打った時、少女は青年に手を差し出した。
少女は優しく微笑んで「孤独なら、寂しいなら、わたしと来ない?」と声をかけた。
青年が、疲れた表情に少しの驚きを滲ませ見上げると、少女が変わらずの笑みを湛えてなおも言った。
「どう?わたしに拾って欲しいでしょ」青年は、意識しないまま素直に頷き、少女の手を取った。
こうして、青年と少女の奇妙な同居生活が始まったのだ。
今から二百年以上も前の話である。
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