黒の魅了師は最強悪魔を使役する

暁 晴海

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第二章

回顧②【ベリアル視点】

……これは……『全能召喚』が発動されたのか。他の連中もそれに気が付き、雑談を止めた。

「おお!久し振りだな、この召喚術。今度はどこの誰だ?」

「またいつもの雑魚であろう?大体こんな無節操な召喚など、格上に対する冒涜であろうが。こんな喧嘩を売るような召喚術を使用する者など、身の程知らずの小物ばかりよ」

「違いない。そもそもあのソロモン以降、まともな魔法陣すら出現した試しがないしな」

『全能召喚』とは、その名の通り、魔獣、死霊、幻獣、精霊…そして神霊。あらゆる種族に対して一斉に召喚を呼び掛ける召喚術だ。

ハッキリ言ってこの無節操な召喚術を使う者など、99・9%が自分を過大評価している小物である。
そしてその身の程知らずは大抵、自分の手に負えない格上を召喚し、面白半分に召喚された格上の者達によって命を落とす……もしくは再起不能にさせられている。

だが稀に、残り0.1%の確率でとんでもない術者が現れる事もある。

例えば72柱の貴族悪魔全てを使役したソロモン。あらゆる魔獣や神霊までをも使役したとされる安倍晴明などだ。

最も、それらの者達ですら「たまたま」呼び出した相手と相性が良かった……という幸運が多分に作用していたので、『全能召喚』はやはり危険な召喚術と言える。

七大君主達が興味も失せたと、再び雑談に戻ろうとしたその時だった。

――リィン……!。

一際高く、美しい音が鳴り響くと、それに共鳴するかのように、大気中の魔力が金色の渦を巻いていく。そしてその渦は徐々に『全能召喚』の証である魔法陣五芒星へと形を変えていった。

――間違いない、久方ぶりの、0.1%クラスだ。

その場に居た全員が目の色を変え、一斉に立ち上がる。――が、俺の動きの方が一歩先んじていた。

俺は目にも止まらぬ速さで他の七大君主に情け容赦ない攻撃をぶちかますと、空間に浮かび上がった魔法陣ペンタクルへと飛び込んだ。

その後は、まずは魔界との通路を完全に封じ、自分と同じく召喚に応じた魔獣、幻獣、精霊系、神霊系の『道』を次々と潰していく。

そうして最終的に、自分だけ『全能召喚』を発動させた召喚士の元へと辿り着くのに成功したのだった。




「これは…。すっ飛んで来てみれば、かなりの上玉だな。悪くない」

実際、『全能召喚』を行った召喚士は、稀有な輝きを魂に有しているだけでなく、自分を含めて美しさに定評のある上位種達を見慣れている自分にしてみても、思わず感嘆の声が上がる程やたらと美しい少年だった。

しかも少年は、何が起こったのか分からないとばかりに呆然と自分を見上げている。試しに名前を聞いてみれば、あっさり「ユキヤ」と名乗った。……こいつ、馬鹿なのだろうか。

召喚士が召喚した者と従魔の契り無しに真名を教えるなど、有り得ない話だ。力の低い魔獣ならともかく、俺の様な上位種に真名を教えるという事は、殺傷権を握られるに等しい。

案の定、かまをかけてみたらアッサリ召喚する気もないのに『全能召喚』を使ったと白状した。
しかもわざわざ呼び出されてやった俺に対し、あろうことか「契約しなくていいから、帰ってくれ」などと、有り得ない事を口にしたのだ。

……この野郎。わざわざ、この俺デーモンロードが召喚されてやったというのに帰れだと?殺されたいのか人間風情が。ふざけやがって。

「ま、とにかく望みがなければ、魔獣どもはともかく、俺を召喚することは出来ないぞ?俺達は、人間の欲望により召喚される。そしてその欲望に見合った対価を頂く種族だからな」

そう、精霊系は召喚する者が望まなくては召喚する事は出来ない。つまり俺を呼び出す望みがお前にはあったのだと、腸が煮えくり返っているのを悟らせぬ様あくまで冷静に、かつ親切に教えてやった。

その上で、俺は少々仕置きをしてやる事にした。

「ひょっとしてあんた……悪魔……?」

「ほぉ…。それなりに知識はあるようだな。という訳で、正解だ『ユキヤ』」

途端、少年……ユキヤの顔が苦痛に歪み、身体が崩れ落ちる。真名による束縛により、今現在ユキヤの身体には気絶できぬギリギリの強さで、絶え間ない激痛が注がれているのだ。

「ユキヤ、このまま苦痛にのたうち回って死ぬか、俺と契約するか選べ。魂を差し出すのが嫌なら、身体だけでもいいぞ?お前ならその価値は十分にある」

俺は既にこの少年を相当気に入っていたので、純潔と魂を貰う事はもはや決定事項となっていた。

だからこの青年が契約を承諾するよう、あえて落し所を作って誘う。

俺に一回でも抱かれてしまえば、人間などすぐに堕ち、進んで魂を差し出してくる。この少年も例外では無いだろう。

稀有な美しい魂を持つこの少年を傍に置けば、かなり長い時間飽きずに楽しむ事が出来る筈だ。絶対逃がすものか。

だが予想に反し、少年は俺に簡単に屈しようとしなかった。

苦痛に顔を歪めながらも、正気を保つ為に自らの唇を噛み切り、真っすぐ俺の目を睨み付けてくる。

「答えは『否』だ!殺したけりゃ殺せ!それで死んだ後の肉体を好きにするといい!だが魂だけはやらないし、絶対にお前に屈服したりなんてしないからな!!」

先程までは、魂と容姿だけ優れた、無知で素人の少年としか思っていなかった。

だが、この気迫はなんだ?俺が悪魔だと知ってなお、絶対屈しないと、一歩も引かずに言い放つ、その高潔さ。先程までの態度とのアンバランスさに戸惑う。

一体、なんなんだ。この少年は……。

強い意志と言葉に怯んだその僅かな隙に、晴れ渡った夜空のような瞳の色が一変し、まばゆく光る黄金色へと変化する。

その瞳をまともに見てしまい、まるで核が絡め取られたかの様な衝撃に思わず息を飲んだ。

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