黒の魅了師は最強悪魔を使役する

暁 晴海

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第四章

和解

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「よし、これで応急処置は終わり!後はちゃんと水分と食べ物を摂れば元気になるから」

シェンナ姫が俺に抱き着いて号泣した後、グリフォンは俺に対する殺気を引っ込めた。
そして『お前を信じる』と言ってくれた訳なんだけど、そんなあっさり信用していいのかな。

さっきまで俺を殺そうとしていたのに。

まあ、俺達を攻撃した最大の原因であるシェンナ姫が俺に抱き着き泣いた時点で、信用するに値すると踏んでくれたんだろう。ちょっと危ない賭けだったけど、成功して良かった

「有難う御座います、魅了師様!」

治癒魔法を施してそう言った俺に対し、シェンナ姫はとびっきり愛らしい笑顔でお礼を言ってくれた。ああ…癒される。

思った通り、シェンナ姫は体調を崩していた。

多分だけど、慣れない逃亡生活と心労が原因だろう。

それと気候。割とカラッとしているとはいえ、この国は南国だからな。要するに過労に加え、脱水症状を併発していたって訳だ。

「シェンナ。聖獣様のお身体が心配で仕方が無いのは分かるが、魅了師殿の言う通り、ちゃんと食事をしなくては駄目だろう。お前に何かあって、最も悲しまれるのは聖獣様なのだぞ?」

「…ごめんなさい、お兄様」

「いやいや、ザビア将軍。貴方も他人の事言えませんからね?あんなバッサリ自分自身を傷付けといて。下手すりゃ死んでましたよ」

「――!そうです、お兄様!先程そのような事を仰られていました!いくら私達を救おうとして下さっても、お兄様がいなくなってしまうなんて嫌です!!お兄様のバカバカ!!」

「――う!そ…それは…。すまん…シェンナ」

しょんぼりしてしまったシェンナ姫を庇うようにザビア将軍のやらかしを指摘すると、今度はザビア将軍がしょんぼりしてしまった。流石は兄妹。見た目は全然似てないけど、そういう仕草はそっくりだ。

「お兄様!」

そんな兄の胸に、感極まったのかシェンナ姫が抱き着く。うん、微笑ましいなあ。…俺の弟は元気かな?泣いてたりしないかな…。なんかホームシックだ。

「そうだ、フウ。さっきは助けてくれて有難うな。お陰で助かったよ」

肩にとまっているフウの頭を撫でながらお礼を言ってやると、フウは嬉しそうにピョンピョン飛び跳ねた。

『えへへ~!マスターに褒められちゃった!』

そんな俺達の横で、グリフォンは床に伏せるように座り込んでいた。

先程の鬼気迫る様子はどこへやら。さっき自分で自分の事を『死にぞこない』と言っていたけど、本当に具合が悪いんだな。

「…ちょっと、身体に触れてもいいかな?」

俺の問い掛けに、グリフォンは瞑っていた瞳を薄く開ける。

『…好きにするがいい…』

許可をもらったので早速、グリフォンの身体にそっと触れてみる。

すると、グリフォンの身体を拘束する様に巻き付いている(ように見える)よく分からない文字が、俺の触れた場所から不自然に移動していく。その動きが、まるで本当に生きているようで凄く気味が悪い。

「なあ、ベル。これ、一体何なんだ?」

俺は今現在、俺の足首に巻きついているベルに向かって尋ねた。
ちなみに彼は何をしているのかというと、先程グリフォンの攻撃で負った傷から出る血を一心不乱に舐めて治しているのだった。

グリフォンと一応和解した後、ベルやザビア将軍達にかけていた防御結界を解除したんだけど、当然というかベルは滅茶苦茶怒っていた。

『何しやがってる!このど阿呆がっ!!』

「あ!いて、いててっ!!」

そう、速攻俺の身体をよじ登り、尻尾でビシバシ往復ビンタをする程に。そしてひとしきり脳内で怒鳴った後、俺がグリフォンによって負った傷の治療を申し出てきたのだ。

『仕方ないから、俺がお前の血と引き換えに怪我を治してやる。ありがたく思え!』

…いや、お前、ただ単に血が欲しいだけじゃない?とは思ったんだけど、考えてみたら心配かけちゃったし、どうやらベルの奴、この仮面に阻まれ、俺にキスして魔力摂取する事が出来なかったらしいんだよね。

だから、ベルの提案を了解したって訳だ。一応仮契約者だし、エサやりも必要だし。魔力の使い過ぎで、今割と俺のHPがヘロヘロだからという訳では決して無い。
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