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第四章

黒も白も精霊って奴は

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番…とは。あの雄と雌がペアリングする…って、え?い、いきなり何を言い出すんだこの精霊は!子供が急に色気を出すんじゃありませんっ!(あ、子供じゃなかったけど)

「フウ…あのなぁ…」

『お願い!僕、頑張るから!!』

いや、頑張られても。そもそもフウって、性別どっちだ?僕って言ってるから男?…それとも、僕っ娘という可能性もあるか…?

「う~ん…」

『マスタぁ~!』

なんか滅茶苦茶必死だ。あ、涙目になっている。ちょっと可哀想になってくるじゃないか。これってひょっとして、精霊特有のあざとさなのか?

(う~ん….。これは、どう答えるのが正解なんだ?)

ってか、上位精霊になるって言っても、頑張ってもそんなすぐにはなれないんじゃないか?そもそも精霊って生まれて自我が出来るまで数百年かかるって言うし、上位精霊って事は、少なくとも数十年…。下手すれば数百年かかるかも。そん時俺、幾つだよ?いや、そもそも生きてるのか?

「そうだなー。もし本当にフウがなれたら、考えなくもないかなぁ…」

その時には確実にジジイになっているか死ぬかしてると思うからと、曖昧にそんな事を言ってみる。すると途端、フウが喜色満面になった。

『本当!?絶対、約束だよ!?』

「う、うん」

『わーい!!』

…早まったかな?

嬉しさ全開で俺の周囲を飛び回っているフウを見ながら、俺は汗を流した。

ベルみたいに、当然のように旦那面してくる俺様仕様を見慣れているからか、なんか凄く健気に見えて、つい。肯定にも取れるような事を口にしてしまった。

さっき、当のフウに『精霊との取引はよく考えてやった方がいい』って言われたのに、またしても深く考えずにやってしまった…のかもしれない。

「フ、フウ?今のやり取り、ベルには絶対言うなよ?」

突撃してこない所をみると、この会話は聞かれていないっぽいが、あいつが知れば確実にフウの命が危ない。なんせ、俺に好意的に接してくれる人間全員を威嚇するんだ。
明確な「好き」なら間違いなく殺そうとするな、うん。

『もちろん、絶対言わないよ!言ったら殺されるから!』

「はは…」

…お前、ベルの事よく分かってんなー。なんて言ったらフゥ、大真面目な顔で大きく頷いた。

『だって黒の精霊って、自分が敵と判断した相手には、絶対容赦しないんだよ。特に恋敵なんて、どんな手使っても排除しようとするもん!』

ああ、確かにベル見てるとそんな感じがする。ってか、恋敵って何だよ?!アイツは俺の体を魂を狙ってるだけだから、勘違いすんなよな!

『…マスターって、ホントにすっごく鈍いよね』

そう言った後、バシャっと顔に温泉を掛けていた俺の耳には、ボソッと呟いたフウの言葉は届かなかった。

ちなみに今現在、ベルは浴室の外で誰もここに入らないように見張りをしている。本当は一緒に風呂に入りたがったのだが、そこはしっかり拒否させてもらった。

何度も言うが、俺は腐界に沈んだ前世の姉に、ありとあらゆるBLを(無理矢理)見せられてきたんだ。

人の姿に戻れないとは言え、蛇なんて一番(BL的に)油断の出来ない生き物ナンバーワンなんだからな。….さ、さっきはつい想像しちゃったけど。

姉貴…。今でも元気にBL沼に沈んでいるのかな…。母さんは元気かな。二人とも、俺の事で、ずっと悲しんでいないかな。

『…まあ、程度の違いで、白の精霊も似た様なもんなんだけど…』

思わず回想に耽っていた俺の耳に、再びフウの小さな呟きは届かなかったのだった。

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