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第四章
頼んだ相手が悪かった
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「ふ、ふざけるな!私はオンタリア王国の宰相自らが指名なされた正式な勅使だぞ!それをドブネズミだと!?貴様の方こそ、そのような胡散臭いなりをしおって!一体何者だ!?」
「わきまえぬネズミだ。何故この俺が貴様に対し、先に名乗らねばならん?」
あくまで淡々と小馬鹿にした態度でそう告げる仮面男に、ゲイルガの怒りが怒髪天を突いた。
「おい、貴様ら!この不審者をひっ捕らえろ!抵抗するなら、嬲り殺しても構わん!」
その言葉に、ゲイルガの背後に控えていた兵士達が獲物を手にのそりと前に進み出る。
小柄なゲイルガと比べると、小山のごとき巨大な体躯。『亜人種』と呼ばれる異形の存在。角と牙を持つ戦闘種族、オーガだ。
「さあ、怪我をしたくなければ大人しく…。ん?おい、貴様ら!何をしている。さっさとあいつをひっ捕らえろ!」
だがオーガはその命令に従わず、そのまま目の前の黒ずくめの仮面男を睨み付けた状態で硬直していた。
「やれやれ。キーキーと耳障りな声をあげるだけしか能の無いネズミなどより、よっぽどそいつらの方が利口だな。…喧嘩を売るべき相手か否かが分かるだけ…な」
そう言いながら、ゆっくりと近付いて来る仮面男に対し、驚くべきことにオーガ達は皆、後ずさりをしていく。ゲオルガはその事に気が付くと、途端に得体のしれない恐怖心を抱いた。
改めて仮面男の方を見つめると、目の前の男の纏うただならぬ気配に気が付く。
殺気も攻撃してくる気配も無いのに、見えない何かにジワジワと絡め取られていくような、言い知れぬ恐怖がせり上がってくる。だというのに、この場から逃げ出したい気持ちとは裏腹に、何故か相手の一挙一動から目が離せない。
『…おい、ベル。お前いきなり喧嘩ふっかけてどういうつもりなんだよ!?最低限のマナーや礼儀は守れって言っただろうが!』
目の前で、明らかに怯えている小男とオーガ達を見ながら、ユキヤが首元に巻きついているベルに小声で文句を言う。
『ああ?本当の事しか言ってねぇんだから、優しい方だろうが。言っておくが俺が本気を出したらこんなモンじゃねぇぞ?言葉攻めで精神を削るのは悪魔の得意分野だからな』
ベルの言葉に、ガックリと肩を落としかけた。違う…。本当の事だけ言うのって、ちっとも優しくないから。むしろダメージ半端ないから。落としているから。
――そう。実は今迄言葉を発していたのは、俺の声音を真似たベルである。
俺は貴族の長子としての教育や礼儀作法は叩き込まれているけど、今回は普通の社交の場と違い、ただ相手に礼儀正しく接すればいい訳では無い。ある程度の牽制やハッタリも必要なのだ。
なので空に浮いて登場(フゥにお願いした)というインパクトで度肝を抜き、更に先手必勝で相手を軽くやり込めようと考えた。けれど俺には口での交渉経験が皆無に等しい訳で。
だからベルに代弁を頼んだというに、流石は黒の精霊の超上位種。格下の相手に普通に接している(もしくは喧嘩ふっかけられても粛清しない)のが、丁寧で優しい対応だと思っている。やはり頼んだ相手が悪かった。
しかも軽く魔力で威圧もかけてるみたいで、特使達が怯えちゃってるよ。きっと昨日から俺が必死に頑張ってたから、抑えられてるベルの魔力との相乗効果で首の術がかなり緩んだんだ。
『あのさぁ、お前も一応博識な悪魔なんだろ?だったら人間同士の外交儀礼とか、建前と本音とかって分かるよな?分かる筈だよな?!頼むからもっとマシな対応しろ!それと威圧すんな!』
懇願混じりの苦言を(脳内で)捲し立てる。俺の声、きこえてるよな?!本当に頼むって!
「わきまえぬネズミだ。何故この俺が貴様に対し、先に名乗らねばならん?」
あくまで淡々と小馬鹿にした態度でそう告げる仮面男に、ゲイルガの怒りが怒髪天を突いた。
「おい、貴様ら!この不審者をひっ捕らえろ!抵抗するなら、嬲り殺しても構わん!」
その言葉に、ゲイルガの背後に控えていた兵士達が獲物を手にのそりと前に進み出る。
小柄なゲイルガと比べると、小山のごとき巨大な体躯。『亜人種』と呼ばれる異形の存在。角と牙を持つ戦闘種族、オーガだ。
「さあ、怪我をしたくなければ大人しく…。ん?おい、貴様ら!何をしている。さっさとあいつをひっ捕らえろ!」
だがオーガはその命令に従わず、そのまま目の前の黒ずくめの仮面男を睨み付けた状態で硬直していた。
「やれやれ。キーキーと耳障りな声をあげるだけしか能の無いネズミなどより、よっぽどそいつらの方が利口だな。…喧嘩を売るべき相手か否かが分かるだけ…な」
そう言いながら、ゆっくりと近付いて来る仮面男に対し、驚くべきことにオーガ達は皆、後ずさりをしていく。ゲオルガはその事に気が付くと、途端に得体のしれない恐怖心を抱いた。
改めて仮面男の方を見つめると、目の前の男の纏うただならぬ気配に気が付く。
殺気も攻撃してくる気配も無いのに、見えない何かにジワジワと絡め取られていくような、言い知れぬ恐怖がせり上がってくる。だというのに、この場から逃げ出したい気持ちとは裏腹に、何故か相手の一挙一動から目が離せない。
『…おい、ベル。お前いきなり喧嘩ふっかけてどういうつもりなんだよ!?最低限のマナーや礼儀は守れって言っただろうが!』
目の前で、明らかに怯えている小男とオーガ達を見ながら、ユキヤが首元に巻きついているベルに小声で文句を言う。
『ああ?本当の事しか言ってねぇんだから、優しい方だろうが。言っておくが俺が本気を出したらこんなモンじゃねぇぞ?言葉攻めで精神を削るのは悪魔の得意分野だからな』
ベルの言葉に、ガックリと肩を落としかけた。違う…。本当の事だけ言うのって、ちっとも優しくないから。むしろダメージ半端ないから。落としているから。
――そう。実は今迄言葉を発していたのは、俺の声音を真似たベルである。
俺は貴族の長子としての教育や礼儀作法は叩き込まれているけど、今回は普通の社交の場と違い、ただ相手に礼儀正しく接すればいい訳では無い。ある程度の牽制やハッタリも必要なのだ。
なので空に浮いて登場(フゥにお願いした)というインパクトで度肝を抜き、更に先手必勝で相手を軽くやり込めようと考えた。けれど俺には口での交渉経験が皆無に等しい訳で。
だからベルに代弁を頼んだというに、流石は黒の精霊の超上位種。格下の相手に普通に接している(もしくは喧嘩ふっかけられても粛清しない)のが、丁寧で優しい対応だと思っている。やはり頼んだ相手が悪かった。
しかも軽く魔力で威圧もかけてるみたいで、特使達が怯えちゃってるよ。きっと昨日から俺が必死に頑張ってたから、抑えられてるベルの魔力との相乗効果で首の術がかなり緩んだんだ。
『あのさぁ、お前も一応博識な悪魔なんだろ?だったら人間同士の外交儀礼とか、建前と本音とかって分かるよな?分かる筈だよな?!頼むからもっとマシな対応しろ!それと威圧すんな!』
懇願混じりの苦言を(脳内で)捲し立てる。俺の声、きこえてるよな?!本当に頼むって!
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