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第四章

ギャップ萌え……?

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『あ?威圧なんぞしてねぇぞ。それはお前の…。ふん、まあいいか』

ベルは何か言い掛けたけど、勝手に納得したようにそっぽを向いてしまう。「仮面越しでも効果あるのは分かったからな」とか、何か小声で呟いてたけど。

『ではもう少しお前が言う所のマシな対応をしてやろう。お前は俺の言葉通りに動きつつ、しっかり相手に意識を集中してろよ?』

『分かってるよ!』

ベルに言われた通り、再び意識を集中して小男やオーガ達を見つめる。ベルに魅了師として少しでもちゃんと戦えるようアドバイスを求めたら、「集中して相手を睨み付けてりゃいい」って言われたからだ。

魅了のスキルを媒介し、発現させるのが「目」。

召喚したモノ達は、先ず召喚者の魔力やスキル、そして魂の有りようによって使役されるかを決める。

だが。現存または顕現しているモノ達を「魅了する」という一点に置いては、ランスロット王子やウォレンさんが見せつけた「縛り」でも分かるように、「目」は必要不可決なのだ。

けど、中途半端で修行もしてない上に、この仮面つけてて果たして効果あるのか?って思うんだけど…。まあ、やらないよりやった方がマシ…なのかな。

「失礼。ゲイルガ殿。この方は病に伏しておられている聖獣様のお身体を診て頂く為、我が国が賓客としてお招きした『黒の魅了師』殿です」

「ザ、ザビア!お前…!?」

ユキヤの正体をあっさりバラしてしまった息子に驚愕するラフネだったが、ゲイルガの顔が一瞬で赤から青に変わる。

「――ッ!?くっ、黒の魅了師!?ば、馬鹿な!!あり得ない!!」

「ほぉ…。俺の名を知っていたか。ただのネズミと思っていたが、少しばかり見直したぞ。それにしても…お前が連れて来た駒だが、変わった連中が多いな」

黒の魅了師と言われた仮面の男は、眼下に見えるゲイルガの連れて来た兵士達をぐるりと見渡した後、フッと不敵に笑った。

「躾甲斐のありそうな連中だ」

「――ッな!?」

『おぉおい!ちょっと待て待てまてー!どこのドS様の台詞だー!!』

俺は思わず心の中で絶叫する。もう本当、ヤダこの悪魔。『黒の魅了師』のイメージ駄々下がりじゃん!…ウォレンさんは気にしなさそうだけど。

うう…。今頃、シェンナ姫もザビア将軍も、「これがこいつの本性か」ってドン引きしてるよ、きっと。くっそぅ!折角、この数日間の交流で築き上げた信頼関係が水の泡に…!

そう思いながら、恐る恐る後方をチラ見すると、シェンナ姫とザビア将軍は何故か顔を赤らめ、キラキラした目をこちらに向けていた。…あれ?

「お、お兄様。今日の魅了師様、すごく感じが違いますね」

「あ、ああ。なんかこう…。胸が熱くなってくるな」

小声で何やらヒソヒソ会話してるんですけど。――…んん?えっと…。なんか、喜んでるっぽい…?

あれかな。普段呑気でヘラヘラした奴やが、急に真面目もしくはオラオラな態度を見せるとトキメク…って。所謂『ギャップ萌え』ってやつ…なんだろうか?
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