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第33話 もう一人
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カイは、レオたちと別れた後、自分の耳と鼻を頼りにあの少女を探していた。ルーインの館はかなり燃えていたので、かなりの人だかりができていて探すのかは困難かに見えたが、大勢の人たちとは反対の方向に歩みを進めている人影が数人見えたのでそれを追うことにした。鼻を頼りに一番煙臭い人影を追うことにした。
「あれか?」
その人影はマントを羽織りフードを深くかぶっている。すぐにでもとびかかって押さえつけようとしたが、ほかに気配を感じ思いとどまった。何やら話している。カイは耳をそばだてた。
「アイツ、コロセタカ?」
あの時邪魔された大男だとカイは思った。
「いいえ、おそらく殺せていないわ。くそっ。あんな火の中に飛び込んでくるやつがいるとは思いもしなかったわ。あたしも力を使いすぎていたからすぐには追えなかった。つぎよ。それまでに体力を回復させないと」
「ソウカ。ジャア、アジトニカエロウ」
そういうと二人は歩き出す。カイもばれないようにそのあとをつけていく。入り組んだ路地をどんどんと進んでいく。カイは屋根の上から二人を追っていく。
一方、レオのほうはというと....
病院にいた。クリスに付き添っているのだ。クリスの容態は安定しているが、ねむっているようだ。
「クリスの体調はどうだい?」
ルーインだ。
「ルーインさん!館のほうは大丈夫なんですか?」
「あらかた燃えてしまったよ。いまは騎士団にお世話になっているんだよ」
「そうだったんですね。」
「まあ、心配するな。私はもともと騎士だしな。しばらくはなんとかなる。ただ、使用人たちの働き口は探してやらんとな。なまけさせておくわけにもいくまい。彼らは優秀なものが多いからな」
「優しい領主様なんですね」
「当然のことだよ。お、そうだ。今日は君に聞きたいことがあってきたのだ」
「何ですか?」
「火事の時のことだ。クリスがこのような状態になったことからも察しはつくが、おそらく火をつけたものがいるのだろう?」
「ええ、いたみたいです。カイがそう言ってました」
「うむ、クリスなら万が一のことがない限りこんな状態になることはまずないはずだ」
「すごい信頼しているんですね」
「そうだな。それほどに強かった。クリスには秘密だが、わたしは憧れていたんだ。だから、相棒になれた時はすごくうれしかったんだ」
ルーインは、クリスとの昔話を嬉しそうに話していた。町で悪さをしていたゴブリンたちの盗伐から王様に命令されてドラゴンを撃退した話まで、それはもうワクワクするような冒険の話を聞きレオの心も踊っていた。
「おっともうこんな時間か。長居してしまったね。私はそろそろかえるよ」
「そうなんですね。楽しいお話ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ聞いてもらえてうれしかったよ。またいろいろ話してあげよう」
「はい! またぜひ」
こうして、ルーインは病室を去った。レオはとても楽しい時間を過ごせたのでクリスには悪いと思いつつも心地よい浮遊感に包まれていた。が、あることに気が付く。
「これ、ルーインさんの忘れ物かな?」
手帳が床に落ちていた。拾い上げると一枚の写真が手帳の隙間から落ちてきた。拾い上げるとそこに写っていたのは、広い庭でルーインとクリス、そしてもう一人女性が楽しそうに三人並んで写っていたのだ。おそらく女性だ。夕日のように赤い髪は長くのびていて、きれいなドレスを着ている。しかし、顔は黒く塗りつぶされていたのだった....。
「あれか?」
その人影はマントを羽織りフードを深くかぶっている。すぐにでもとびかかって押さえつけようとしたが、ほかに気配を感じ思いとどまった。何やら話している。カイは耳をそばだてた。
「アイツ、コロセタカ?」
あの時邪魔された大男だとカイは思った。
「いいえ、おそらく殺せていないわ。くそっ。あんな火の中に飛び込んでくるやつがいるとは思いもしなかったわ。あたしも力を使いすぎていたからすぐには追えなかった。つぎよ。それまでに体力を回復させないと」
「ソウカ。ジャア、アジトニカエロウ」
そういうと二人は歩き出す。カイもばれないようにそのあとをつけていく。入り組んだ路地をどんどんと進んでいく。カイは屋根の上から二人を追っていく。
一方、レオのほうはというと....
病院にいた。クリスに付き添っているのだ。クリスの容態は安定しているが、ねむっているようだ。
「クリスの体調はどうだい?」
ルーインだ。
「ルーインさん!館のほうは大丈夫なんですか?」
「あらかた燃えてしまったよ。いまは騎士団にお世話になっているんだよ」
「そうだったんですね。」
「まあ、心配するな。私はもともと騎士だしな。しばらくはなんとかなる。ただ、使用人たちの働き口は探してやらんとな。なまけさせておくわけにもいくまい。彼らは優秀なものが多いからな」
「優しい領主様なんですね」
「当然のことだよ。お、そうだ。今日は君に聞きたいことがあってきたのだ」
「何ですか?」
「火事の時のことだ。クリスがこのような状態になったことからも察しはつくが、おそらく火をつけたものがいるのだろう?」
「ええ、いたみたいです。カイがそう言ってました」
「うむ、クリスなら万が一のことがない限りこんな状態になることはまずないはずだ」
「すごい信頼しているんですね」
「そうだな。それほどに強かった。クリスには秘密だが、わたしは憧れていたんだ。だから、相棒になれた時はすごくうれしかったんだ」
ルーインは、クリスとの昔話を嬉しそうに話していた。町で悪さをしていたゴブリンたちの盗伐から王様に命令されてドラゴンを撃退した話まで、それはもうワクワクするような冒険の話を聞きレオの心も踊っていた。
「おっともうこんな時間か。長居してしまったね。私はそろそろかえるよ」
「そうなんですね。楽しいお話ありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ聞いてもらえてうれしかったよ。またいろいろ話してあげよう」
「はい! またぜひ」
こうして、ルーインは病室を去った。レオはとても楽しい時間を過ごせたのでクリスには悪いと思いつつも心地よい浮遊感に包まれていた。が、あることに気が付く。
「これ、ルーインさんの忘れ物かな?」
手帳が床に落ちていた。拾い上げると一枚の写真が手帳の隙間から落ちてきた。拾い上げるとそこに写っていたのは、広い庭でルーインとクリス、そしてもう一人女性が楽しそうに三人並んで写っていたのだ。おそらく女性だ。夕日のように赤い髪は長くのびていて、きれいなドレスを着ている。しかし、顔は黒く塗りつぶされていたのだった....。
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