幸せの形

野良猫

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第1章 迷い人・雪の話

第5話 迷い人・雪

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誘われた先には、沢山のものが瓶詰めにされ、綺麗に整頓されていた。

桜の花びらや雪の結晶、綺麗な宝石たちや、中には蛇や猫、犬の剥製のようなものまであった。

雪「・・・なに、これ」

雪はふと視界に入った雪の結晶の入った瓶を手に取る。

雪「雪の結晶・・・?綺麗・・・」

雪は思わず手に取った瓶の蓋を開ける。

その瞬間、瓶の中に入っていた雪の結晶がキラキラと空を舞う。

雪「わぁ・・・。・・・あ、あれ・・・?」

雪はその光景を見て、強烈な眠気に襲われ、フラフラと体を揺らす。

雪「な・・・に・・・?眠く・・・なって・・き・・・」

雪は言葉を言い切る前に、その場に倒れ込んでしまった。

パリーンという瓶が割れる音が辺りに響く。

幸「あら、福ったら、先に案内してしまったのですね。」

音を聞きつけた幸が部屋に入って来て、呆れ顔で言った。

福「仕方なかろう、お主の負担を減らす為じゃし、何よりこれが手っ取り早いであろう?」

雪を案内した猫の福が毛繕いけづくろいをしながら答える。

幸「私は雪様をソファーに寝かせてきますので、貴方はここの掃除をお願いしますね。」

幸はそう言うと、軽々と雪を抱き上げ、部屋を後にする。

福「全く、猫使いの荒いヤツめ。」

福はそう言うと、二本足で立ち上がり、ふぅっと息を吐いた。

すると割れた瓶は綺麗に元の形に戻り、空の瓶になった。

再びふぅっと息をかけると、空の瓶は不思議な力で宙を舞い、空き瓶の並んでいる棚にコトンと置かれた。
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