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兵法者としてのこれから!
第1話 武蔵VS小次郎。巌流島の決闘の果てに
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砂浜に降り立った武蔵は、いらだつ長身の男の前に立ちはだかった。
「遅い。遅いぞ武蔵!」
猩猩緋のたっつけ袴といった派手ないでたちの男は、小倉細川家の剣術指南役を勤める巌流佐々木小次郎。小次郎を中心に試合の成り行きを見まもっている五人はいずれも細川家の藩士。本来ならこういった試合は城内で行われることが多いのだが、この二人の試合となるとまた別格なのだ。一目見ようと訪れる者が増えては困ると、あえて関門海峡に浮かぶ小島、舟島にて取り行われることになったのだった。
慶長十七年、四月一二日。まだ肌寒さの残る春先のことである。約束の刻限を二刻も過ぎたころに、ようやく武蔵は姿を現したのだ。
いらだつ小次郎は早々に刀を抜き、鞘を砂浜に突き刺して青眼に構えた。
武蔵は櫂を削って作った木刀を手に、じりりと間合いを詰める。眉間にしわを寄せた般若の形相で相手の出方を伺う。
待たされ、焦れてる小次郎は刀を大きく振りかぶった。武蔵はその斬撃を見切って交わすと、右下から切り上げる。小次郎は一歩下がってそれを避ける。が、足元が砂地で一瞬足を取られた。
武蔵はその隙を見逃さなかった。飛び上がりざまの振り下ろした一撃は、返す刀で切り上げてきた小次郎得意のツバメ返しの一撃よりも早く、小次郎の額を割っていた。
倒れこむ小次郎に、慎重に近づいた武蔵は小次郎の首に触れて脈を取る。
脈がないことを確認した武蔵は、試合を見届けにきた藩士たちに一礼し、乗ってきた舟に乗り込むと引き潮に乗っていずこへと去っていった。
細川藩士たちはあまりにもスムーズな一連の流れに、あっけにとられ何もできないままだった。
武蔵は下関の旅籠に身を寄せた。細川家の追っ手がやってくるかと少し緊張もしていたが、それも杞憂に終わった。
真剣勝負の申し出をし、受理されたのだ。兵法指南役を失ったからといえど、追っ手を差し向けるなど譜代大名ともなれば、なかなかそういったことをできるわけではない。
時代は江戸幕府、徳川政権の平穏な時代へと突入して久しい。戦国の世なら、あり得たかも知れないが。幕府も殉死を禁止する方向で動いていたり、敵討ちなどの報復をする事など、法整備を進めていると聞く。また、今回は藩主ともいかなる決着をもっても、報復はしないという約束を取り付けていた。
約束を反故にされることを最も恐れていたが、流石は戦国の世を生き抜いた武将、細川忠興である。しっかりと約束を守ってくれたようだった。
それにしても、これでいずれかへ仕官を。武蔵の描いた野望は叶うはず、だった。が、どこからも召し抱えたい。そういった話が上がってこない。
幾人もの大名と縁を持ち、江戸時代に名を馳せた兵法者として、武蔵を迎えたいと思う大名も多数いたのだが。武蔵にとって一つだけ大きな汚点とも言うべき過去があった。
それは、今から一二年前の出来事であった。時代を豊臣から徳川へと移り変わったあの大きな戦。関ヶ原の合戦だった。武蔵は父、無二斎や新免一族と共に戦に参戦したのだ。この時組みしたのが、豊臣配下の軍。これが今でも災いしている。
豊臣軍は敗北した。残党、落ち武者狩りを逃れ、武蔵は作州浪人、宮本武蔵と名乗り兵法者として諸国武者修行の旅に出たのだった。京都の剣術一派、吉岡一門を撃破したのち、宝蔵院流槍術など幾つもの流派と対峙してきた。これはでそれらを始めとして六〇近い仕合を行い、全てに勝利を収めてきた武蔵は、今回の小次郎との決戦はまさしくその集大成。勝てば引く手あまたで大名から声をかけられるのではないか。
そんな淡い期待すら持っていた。のだが、現実は甘くはなかった。
一つは徳川政権となって最初の法令として、豊臣に組みした浪人を雇うなという決まりがある。豊臣軍で戦った武蔵にはこの取り決めが大きな障壁となったのだ。ならば、と仕合を重ねて高名になったはいいが、今度は逆に高名になりすぎてしまったのだ。
佐々木小次郎も稀代の使い手として厳流を編み出して独立した流派として成り立っている。武蔵も円明流と称し、わずかながら弟子も居る。門弟志願する者は今も後を絶たないが、武蔵も定住しているわけではないので、あまり多くの門弟を取るつもりは、今のところ無かった。現在も、寺尾新太郎を始めとした数名は、今はそれぞれの場所で活躍しているはずである。
旅先で小次郎とは何度と無くすれ違ったりしてきていたが、お互いにどちらが強いなどと噂され合い、世間ではライバル視されてきた。
いつの間にか、武蔵の中ではいつしか勝たねばならない。そんな使命感のようなものが生まれ。小次郎がどう思っていたかは今はもはや知る由もないが、だからこそこの平静の世に命を懸けた決闘にようやくこぎつけたのだ。そのライバルとも言うべき相手をうち倒した今の武蔵には、達成感というよりも喪失感が大きかった。戦ってうち負かすべきでは無かったかもしれない。ただの仕合で戦い後にまた友情が生まれる。そんな未来があってもよかったのかも知れない。
今はもはや遅いかも知れないが。
武蔵はふと、そんな別の未来を思い浮かべたのだった。
武蔵は旅支度をする。と言っても、そもそも荷物が多いわけではなく、身支度は簡単に終わった。それから心を落ち着けながら、硯に墨、一尺四方ほどの和紙を数枚用意した。。
硯の陸に水を一滴ほど落として墨を磨る。墨の良い香りがふっと立つ。やがて磨った墨がねばねばの状態になったところで武蔵は磨るのをやめた。用意していた別の小さな皿に水を入れ、筆で先ほど磨った濃い墨を取り落とし混ぜ合わせる。少しずつ墨を加えながら、武蔵は納得のいく淡墨を作り上げていく。
そして和紙を前に腕を組んで目を瞑る。この和紙に描く絵の構図を武蔵は夢想していた。おもむろに目を開くと、武蔵は筆をとって一気に紙の上を走らせる。
描いたのは鋭い目をした鷹の絵だった。鋭い眼光は今にも獲物を捕らえんとするような、そんな眼光を持った鷹が今にも飛び立とうとする。それを描いた絵だった。
それからもう一枚。今度は対極的に静かな絵だった。椿の花だった。楕円形に先の尖った幾つもの葉の中に咲く一輪の椿を大きく描き、蕾や咲きかけの花なども少し描かれた作品。
武蔵は墨の乾き具合を確認すると、宿の主人を呼んだ。
「武蔵様、何かご用でしょうか?」
廊下から障子越しに宿の主人が声をかけた。物腰の低い主人は武蔵の許しを得て部屋に入ってきた。
「ご亭主。世話になった。儂もそろそろお暇しようと思う。何の礼もできん。せめてこれを受け取ってくれ」
武蔵は先ほど書いた水墨画を主人に手渡した。
「武蔵様、お役に立ててなによりでした。こちらはありがたく家宝にさせていただきます。それでこれからどちらへ?」
「うむ。九州を回ってそれから京へ向かおうと思う」
「左様で御座いますか。九州の豊前を始めとして肥後などにも私の親族が旅籠をやっております。もし、旅先でお困りでしたら、是非お立ち寄り下さいませ」
「うむ。御心遣い感謝する」
武蔵はそういうと荷物と刀を持って立ち上がる。宿代を払おうとしたが、「細川様よりいただいております」と言うことだったので、武蔵は頭を下げて宿を出た。腰に大小二本の刀を差し、武蔵は旅立った。
「遅い。遅いぞ武蔵!」
猩猩緋のたっつけ袴といった派手ないでたちの男は、小倉細川家の剣術指南役を勤める巌流佐々木小次郎。小次郎を中心に試合の成り行きを見まもっている五人はいずれも細川家の藩士。本来ならこういった試合は城内で行われることが多いのだが、この二人の試合となるとまた別格なのだ。一目見ようと訪れる者が増えては困ると、あえて関門海峡に浮かぶ小島、舟島にて取り行われることになったのだった。
慶長十七年、四月一二日。まだ肌寒さの残る春先のことである。約束の刻限を二刻も過ぎたころに、ようやく武蔵は姿を現したのだ。
いらだつ小次郎は早々に刀を抜き、鞘を砂浜に突き刺して青眼に構えた。
武蔵は櫂を削って作った木刀を手に、じりりと間合いを詰める。眉間にしわを寄せた般若の形相で相手の出方を伺う。
待たされ、焦れてる小次郎は刀を大きく振りかぶった。武蔵はその斬撃を見切って交わすと、右下から切り上げる。小次郎は一歩下がってそれを避ける。が、足元が砂地で一瞬足を取られた。
武蔵はその隙を見逃さなかった。飛び上がりざまの振り下ろした一撃は、返す刀で切り上げてきた小次郎得意のツバメ返しの一撃よりも早く、小次郎の額を割っていた。
倒れこむ小次郎に、慎重に近づいた武蔵は小次郎の首に触れて脈を取る。
脈がないことを確認した武蔵は、試合を見届けにきた藩士たちに一礼し、乗ってきた舟に乗り込むと引き潮に乗っていずこへと去っていった。
細川藩士たちはあまりにもスムーズな一連の流れに、あっけにとられ何もできないままだった。
武蔵は下関の旅籠に身を寄せた。細川家の追っ手がやってくるかと少し緊張もしていたが、それも杞憂に終わった。
真剣勝負の申し出をし、受理されたのだ。兵法指南役を失ったからといえど、追っ手を差し向けるなど譜代大名ともなれば、なかなかそういったことをできるわけではない。
時代は江戸幕府、徳川政権の平穏な時代へと突入して久しい。戦国の世なら、あり得たかも知れないが。幕府も殉死を禁止する方向で動いていたり、敵討ちなどの報復をする事など、法整備を進めていると聞く。また、今回は藩主ともいかなる決着をもっても、報復はしないという約束を取り付けていた。
約束を反故にされることを最も恐れていたが、流石は戦国の世を生き抜いた武将、細川忠興である。しっかりと約束を守ってくれたようだった。
それにしても、これでいずれかへ仕官を。武蔵の描いた野望は叶うはず、だった。が、どこからも召し抱えたい。そういった話が上がってこない。
幾人もの大名と縁を持ち、江戸時代に名を馳せた兵法者として、武蔵を迎えたいと思う大名も多数いたのだが。武蔵にとって一つだけ大きな汚点とも言うべき過去があった。
それは、今から一二年前の出来事であった。時代を豊臣から徳川へと移り変わったあの大きな戦。関ヶ原の合戦だった。武蔵は父、無二斎や新免一族と共に戦に参戦したのだ。この時組みしたのが、豊臣配下の軍。これが今でも災いしている。
豊臣軍は敗北した。残党、落ち武者狩りを逃れ、武蔵は作州浪人、宮本武蔵と名乗り兵法者として諸国武者修行の旅に出たのだった。京都の剣術一派、吉岡一門を撃破したのち、宝蔵院流槍術など幾つもの流派と対峙してきた。これはでそれらを始めとして六〇近い仕合を行い、全てに勝利を収めてきた武蔵は、今回の小次郎との決戦はまさしくその集大成。勝てば引く手あまたで大名から声をかけられるのではないか。
そんな淡い期待すら持っていた。のだが、現実は甘くはなかった。
一つは徳川政権となって最初の法令として、豊臣に組みした浪人を雇うなという決まりがある。豊臣軍で戦った武蔵にはこの取り決めが大きな障壁となったのだ。ならば、と仕合を重ねて高名になったはいいが、今度は逆に高名になりすぎてしまったのだ。
佐々木小次郎も稀代の使い手として厳流を編み出して独立した流派として成り立っている。武蔵も円明流と称し、わずかながら弟子も居る。門弟志願する者は今も後を絶たないが、武蔵も定住しているわけではないので、あまり多くの門弟を取るつもりは、今のところ無かった。現在も、寺尾新太郎を始めとした数名は、今はそれぞれの場所で活躍しているはずである。
旅先で小次郎とは何度と無くすれ違ったりしてきていたが、お互いにどちらが強いなどと噂され合い、世間ではライバル視されてきた。
いつの間にか、武蔵の中ではいつしか勝たねばならない。そんな使命感のようなものが生まれ。小次郎がどう思っていたかは今はもはや知る由もないが、だからこそこの平静の世に命を懸けた決闘にようやくこぎつけたのだ。そのライバルとも言うべき相手をうち倒した今の武蔵には、達成感というよりも喪失感が大きかった。戦ってうち負かすべきでは無かったかもしれない。ただの仕合で戦い後にまた友情が生まれる。そんな未来があってもよかったのかも知れない。
今はもはや遅いかも知れないが。
武蔵はふと、そんな別の未来を思い浮かべたのだった。
武蔵は旅支度をする。と言っても、そもそも荷物が多いわけではなく、身支度は簡単に終わった。それから心を落ち着けながら、硯に墨、一尺四方ほどの和紙を数枚用意した。。
硯の陸に水を一滴ほど落として墨を磨る。墨の良い香りがふっと立つ。やがて磨った墨がねばねばの状態になったところで武蔵は磨るのをやめた。用意していた別の小さな皿に水を入れ、筆で先ほど磨った濃い墨を取り落とし混ぜ合わせる。少しずつ墨を加えながら、武蔵は納得のいく淡墨を作り上げていく。
そして和紙を前に腕を組んで目を瞑る。この和紙に描く絵の構図を武蔵は夢想していた。おもむろに目を開くと、武蔵は筆をとって一気に紙の上を走らせる。
描いたのは鋭い目をした鷹の絵だった。鋭い眼光は今にも獲物を捕らえんとするような、そんな眼光を持った鷹が今にも飛び立とうとする。それを描いた絵だった。
それからもう一枚。今度は対極的に静かな絵だった。椿の花だった。楕円形に先の尖った幾つもの葉の中に咲く一輪の椿を大きく描き、蕾や咲きかけの花なども少し描かれた作品。
武蔵は墨の乾き具合を確認すると、宿の主人を呼んだ。
「武蔵様、何かご用でしょうか?」
廊下から障子越しに宿の主人が声をかけた。物腰の低い主人は武蔵の許しを得て部屋に入ってきた。
「ご亭主。世話になった。儂もそろそろお暇しようと思う。何の礼もできん。せめてこれを受け取ってくれ」
武蔵は先ほど書いた水墨画を主人に手渡した。
「武蔵様、お役に立ててなによりでした。こちらはありがたく家宝にさせていただきます。それでこれからどちらへ?」
「うむ。九州を回ってそれから京へ向かおうと思う」
「左様で御座いますか。九州の豊前を始めとして肥後などにも私の親族が旅籠をやっております。もし、旅先でお困りでしたら、是非お立ち寄り下さいませ」
「うむ。御心遣い感謝する」
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