ゴブリンに生まれたけれど思っていた以上にハードモードでした

鳶丸

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011 ゴブリンの無双は続くよどこまでも

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タヌヌ王国辺境領都 西の城壁 マラクス

 高さが十メートルくらいはありそうな城壁から颯爽と飛び降りてきたヤツらがいる。
 妖人種《エルフ》の女と蜥蜴の男だ。
 どうせ敵なんだろうけど、ちょっとずつ出てくんなよ。
 でもさ、なんでだろう。
 エロフもとい妖人種エルフの女を見てたら、胸がドキドキするんだぜ。
 
 新緑みたいな鮮やかな色の髪に血管が透けて見えるような白い肌をしてるんだもの。
 よくある貧乳タイプのエロフじゃなくて、ちゃんと乳があるのもいい。
 巨乳とは呼べないサイズだけどな。
 それでもエロいんだ。

 よくよく考えてみたら、こっちの世界にきてから初めてのまともな女との遭遇なんだもの。
 うっかり股間が東京タワーみたいになっても許してくれよな。
 いやもうなってるけど。

「キャリル嬢、どうやらアレはお主をみて発情しているようだぞ」

 蜥蜴男がエロフに向けて笑いかける。

「領主様に発情しておるのでしょう」

 してねえよ、バカ。
 さすがに蜥蜴に発情するほどヘンタイでもねえンだわ。
 お前にだよ、自覚しやがれ。

「お前らもオレとヤんのか?」

 らって言いながらも、オレはエロフしか目に入れていない。

「私はバスゲアト・アツィオ・ミソタロ。タタヌ王国辺境領を任せられている者だ」

 と蜥蜴は改めて周辺を見る。

「この惨劇を作り出したのがお主なら、私は領主として討伐をせねばならん」

 言い方がいちいち大仰なんだよ。
 じゃあさっさとかかってこいよ、バカ野郎。
 蜥蜴をジッと見る。
 ん? 角があるのか。
 ってことは竜人とかそういうの?

 熊獣人や狼男よりも一回りはデカい。
 縦にも横にもだ。
 武器は持っていないし、鎧も身に着けていない。
 ベルトで留められた腰布のようなものだけだ。
 となるとあの鱗には相当の自信があるんだな。

「キャリルヴィアンカ・ズパゴネル。冥途の土産に覚えておくといい」

 んん。
 なんでこいつらは自信満々に名のりをあげるんだろうか。
 そういう文化なんだろうかね。
 ならオレもまた名のっておこう。

「マラキザ氏族のマラクスだ」

「いざ尋常にっ!」

 蜥蜴か竜かわからん奴が宣言してグッと腰を落とす。
 それに合わせてエロフがデカい宝石のついた杖を構えた。

「勝負っ!」

 エロフの言葉とともに折れた大剣が投げつけられた。
 あの狼だな、さっきからオレを睨んでやがったから何かすると思っていたんだよ。

 こちらに飛んでくる大剣をかわす。
 その瞬間に距離を縮めていた蜥蜴の蹴りが飛んでくる。
 なんでこっちのヤツらはスピードとパワーのごり押しなんだ。
 確かに早い。
 そして力強いよ。
 ゴブリンのオレだったら即死だろう。
 前世のオレでもそうだ。
 でも種族進化したオレには見え見えなんだ。

 虚実を使ったフェイントがない。
 飽くまでも正面から叩き潰そうとするだけだ。
 そんな体術なんて怖くもなんともない。
 円を描くような歩法を使って蜥蜴の猛攻をさばいていく。
 突き、蹴り、膝、肘。
 どんな攻撃をするのか、初動が大きすぎて話にならない。
 こいつらひょっとして格下の相手としか戦ったことがないのかね。

「メリャインの裁き!」

 エロフが叫ぶ。
 魔法名なのかな、なんか恰好いいぞ。
 おっと。
 蜥蜴が後退していると思ったら、エロフの杖が光った。

 轟音に大爆発。

 地面そのものが揺れているような感覚だ。
 ただオレには痛みがなかった。
 身体が欠損しているようにも思えない。
 拷問されすぎて鈍くなったんだろうか。

 とりあえず、と。
 オレは狼獣人目掛けて跳んだ。
 翼を使って加速しながら、一瞬で距離を詰める。
 こいつは詰まらないことをしてくれたからな。
 ゴブリンチョップの刑だ。
 狼獣人の首をチョンパしてやった。

 爆発による煙が風に吹かれてどこかへ行く。
 それと同時に狼獣人の身体がどさりと音を立てて倒れた。

「なにっ?」

 蜥蜴がこちらを見た。
 エロフと蜥蜴は自分の背後を取られていることになる。
 それに驚いた様子だったが、一瞬で切り替えやがった。
 エロフを守るように移動した蜥蜴に接近する。
 両手を十字にして正面のガードを固めた蜥蜴を嘲笑うように、オレはホンの少しだけ爪先を内に向けて踏みこむ。
 腰を捻って身体を側面に運び、体重の移動を活かしたリバーブロウを打つ。
 その場所に肝臓があるのかなんて知らんけど。
 拳に伝わる感触で骨が折れたことはわかった。

「おぼうっ」

 腹を打たれた衝撃で蜥蜴の頭が下がる。
 そこへ腹を打った反動を使った返しの一撃が決まった。
 めごっと頭の骨を砕く音が響く。
 蜥蜴の身体がゆっくりと倒れていく。
 全身がビクビクと痙攣している。
 その頭を踏みつけると、味噌やらなんやらが飛び散った。

「やっぱ弱ぇなぁ」

 蜥蜴を踏みつけたまま、エロフを見て”にちゃあ”と笑ってやる。

「そ、そんな……バカな」

 女の子座りでへたりこんでしまったエロフだが、しょわしょわと御聖水をお漏らしになっているではありませんか。
 なんとも粋な計らいを見せてくれるもんだぜ。
 股間の東京タワーがスカイツリーになるってばよ。

「おい、もう終わりか?」

 エロフに声をかけると、ビクッとして何度も顔を横に振っている。
 なんだこいつ。
 なにしにきたんだよ。
 まぁエロフだし、クッコロセとか言ってくんないかな。

 なんて思っていると、また新手が登場した。
 もううんざりだ。
 今度のヤツらはヒャッハー系か。
 赤毛のモヒカンにスキンヘッドだ。
 どっちも毛皮のベストを着ていて、マタギ感が半端ない。

「おやおや、姐さんともあろうお人がかわいらしいことで」

 スキンヘッドの言葉にモヒカンが”ひゃぁハッハー”と予想に違わぬ笑い声をあげている。
 なんなんだよ、そこは予想を裏切ってくれよ。

「そこの黒いヤツ、うちのシマをよくも荒らしてくれたな」

 恐らくはこの町の裏を取り仕切っているヤツらなんだろうけど。
 もう今の身体の性能も試せたし、こいつらはサクッと殺してしまおう。
 んぬぬ、と体内で力を練り上げて叫ぶ。

「神判ですのおおおお!」

 魂に刻まれた罪過に応じて断罪が続く。
 罪が消えるまで決して断罪が終わることはない。
 神の怒り、だ。

 力の波動は一瞬にしてバカ二人とエロフを巻き込んだ。
 さらに城壁を超えて町中にまで浸食していく。

「ぎぃやああああ」

 とバカ二人が下品な声をあげている。
 どちらも目が抜け落ちて、窪んだ部分から大量の血を流していた。
 エロフはと言うと、やっぱり苦しんでいる。
 美しいと思ったその容姿は皺だらけだ。
 髪の毛、歯と抜け落ちている。

 町の中からも悲鳴がいくつも聞こえてくるんだけど。
 どうにもこの力は制御が難しい。
 というよりも発動してしまうと、自動的に力が広がっていくのだ。
 たぶん町全体に広がっているんだろう。

 オレにサクッと殺されたヤツらの方が楽に死ねたのかもしれないな。
 エロフはちょっと惜しいが仕方ない。
 既に興味がほぼなくなったので、オレの股間も平常運転だ。

 羽ばたいて城壁の上にあがる。
 そこから見えるのは地獄絵図だが、オレの心には何も響かなかった。
 種族進化の影響かもしれない。
 いや元々そうだったのかもな。
 どちらにしてもオレに後悔はない。
 ニンゲンどもに、そしてこの世界に復讐すると決めたのだから。

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