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第2章 ゴールデンウィーク
#003 姉貴
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「本当に山しかないなぁ」
電車に揺られながら、亮平はそうつぶやいていた。
今日からゴールデンウイークが始まった。一人での帰省だ。何回も電車と新幹線にのって行っているので、迷うことはない。
車内では特にすることもないので、持ってきた何冊かの本を読んでいる。亮平の家から祖父母の家まで、三時間半ぐらいだ。
新幹線内から見える風景は、乗ってすぐ山に変わった。民家もほとんどないので、見ていても退屈になるだけだ。
(それにしても、姉貴はいるかな?)
姉貴というのは、亮平の従姉だ。祖父母の家の近くに家があるため、たまに祖父母の家に遊びに来ている事がある。
姉貴は訛りがあるせいで聞き取りづらいが、言いたいことは亮平にも分かるのであまり問題なかったりする。
窓をよくのぞくと、かなり遠くでかすんで見えるが、街並みが見えてきた。
(前の町の看板にはあの市町村名が書いてあったから、ここは……)
亮平の予想は、新幹線内のアナウンスですぐに正しいと分かった。
「まもなく、福島、福島です。お降りの方は……」
事前に調べて、福島から祖父母の家の近くまでは、後二時間ぐらい。亮平は、また読書に没頭することにした。
----------
「やっぱり人が多いなぁ。帰省ラッシュだってテレビでも言ってたし」
新幹線から降りると、駅の構内は帰省をする人でいっぱいだった。
駅を出ると、去年とは少し違う風景が広がっていた。去年帰省した時から一年経っているので、建物が新しく立ったり、店が変わったりしているのだ。
駅から祖父母の家までは歩いて約十分。地図は毎年持ってきているので、迷うことはない。来る回数が少ないせいで、まだ完全に道を覚えられてはいない。
歩いていくにつれ人がだんだん少なくなり、人通りもまばらになってきていた。住宅街に入ったので、当然といえば当然だろう。
そうこうしているうちに、祖父母の家の前までやってきた。一応連絡はしているが、留守にしている可能性があるので少し不安になる。インターホンを押した。
音とともに、玄関の扉が開いた。
(良かった。留守じゃなかった)
亮平はひとまずほっとした。
「あ、亮平? 久しぶりだじゃ!」
家から出てきたのは、姉貴だった。
「あれ? じいちゃんとばあちゃんは?」
「さっき買い物さ行ったげど。それで、『亮平が来るがらもし来だら家さ入れるように』って言われでらのよ」
(姉貴に任せて買い物行ったのかよ!)
極力人に任せるようにするのは、霧嶋家全員に通用するんじゃないかと、亮平は思った。
「それにしても、なんで亮平って話す言葉が標準語なの?だいでえ亮平の方さ住んでら人は話す言葉が訛ってらんだげど」
姉貴が行っていることは分かる。確かに近所の年よりの人は全員訛っているし、先生の中にも訛っている教師はいる。
「たぶん、テレビのせいだと思うけどなぁ。ほら、テレビって、標準語を話してるじゃん」
亮平もそう思っている。周りの人が標準語ばっかりだったこともあるが。
「ふーん」
一応は納得してくれたようだ。といっても、亮平の両親が長年東京に住んでいた影響も考えているのかもしれないが。
「で、亮平! 前亮平が来だ時がら一年経って、新しい大型ショッピングモールがでぎだがら、一緒さ行ご!」
まだ朝の十時ぐらいなので、時間は十分ある。亮平は、姉貴の提案を飲むことにした。
電車に揺られながら、亮平はそうつぶやいていた。
今日からゴールデンウイークが始まった。一人での帰省だ。何回も電車と新幹線にのって行っているので、迷うことはない。
車内では特にすることもないので、持ってきた何冊かの本を読んでいる。亮平の家から祖父母の家まで、三時間半ぐらいだ。
新幹線内から見える風景は、乗ってすぐ山に変わった。民家もほとんどないので、見ていても退屈になるだけだ。
(それにしても、姉貴はいるかな?)
姉貴というのは、亮平の従姉だ。祖父母の家の近くに家があるため、たまに祖父母の家に遊びに来ている事がある。
姉貴は訛りがあるせいで聞き取りづらいが、言いたいことは亮平にも分かるのであまり問題なかったりする。
窓をよくのぞくと、かなり遠くでかすんで見えるが、街並みが見えてきた。
(前の町の看板にはあの市町村名が書いてあったから、ここは……)
亮平の予想は、新幹線内のアナウンスですぐに正しいと分かった。
「まもなく、福島、福島です。お降りの方は……」
事前に調べて、福島から祖父母の家の近くまでは、後二時間ぐらい。亮平は、また読書に没頭することにした。
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「やっぱり人が多いなぁ。帰省ラッシュだってテレビでも言ってたし」
新幹線から降りると、駅の構内は帰省をする人でいっぱいだった。
駅を出ると、去年とは少し違う風景が広がっていた。去年帰省した時から一年経っているので、建物が新しく立ったり、店が変わったりしているのだ。
駅から祖父母の家までは歩いて約十分。地図は毎年持ってきているので、迷うことはない。来る回数が少ないせいで、まだ完全に道を覚えられてはいない。
歩いていくにつれ人がだんだん少なくなり、人通りもまばらになってきていた。住宅街に入ったので、当然といえば当然だろう。
そうこうしているうちに、祖父母の家の前までやってきた。一応連絡はしているが、留守にしている可能性があるので少し不安になる。インターホンを押した。
音とともに、玄関の扉が開いた。
(良かった。留守じゃなかった)
亮平はひとまずほっとした。
「あ、亮平? 久しぶりだじゃ!」
家から出てきたのは、姉貴だった。
「あれ? じいちゃんとばあちゃんは?」
「さっき買い物さ行ったげど。それで、『亮平が来るがらもし来だら家さ入れるように』って言われでらのよ」
(姉貴に任せて買い物行ったのかよ!)
極力人に任せるようにするのは、霧嶋家全員に通用するんじゃないかと、亮平は思った。
「それにしても、なんで亮平って話す言葉が標準語なの?だいでえ亮平の方さ住んでら人は話す言葉が訛ってらんだげど」
姉貴が行っていることは分かる。確かに近所の年よりの人は全員訛っているし、先生の中にも訛っている教師はいる。
「たぶん、テレビのせいだと思うけどなぁ。ほら、テレビって、標準語を話してるじゃん」
亮平もそう思っている。周りの人が標準語ばっかりだったこともあるが。
「ふーん」
一応は納得してくれたようだ。といっても、亮平の両親が長年東京に住んでいた影響も考えているのかもしれないが。
「で、亮平! 前亮平が来だ時がら一年経って、新しい大型ショッピングモールがでぎだがら、一緒さ行ご!」
まだ朝の十時ぐらいなので、時間は十分ある。亮平は、姉貴の提案を飲むことにした。
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