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第2章 ゴールデンウィーク
#002 巻き込まれ事故
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「終わったー!」
終わりのホームルームが終わった直後、亮平は思わずそう叫んでいた。
そう、明日からゴールデンウィークなのだ。思わず気持ちが高まるのも当然だろう。他の人も『明日からゴールデンウィークだ』などとはしゃいでいる。
亮平の肩に、いきなり痛みが走った。肩に痛みを走らせるほど力が強いといえば……。
「亮平、今日からゴールデンウイーク終わるまでは部活ないんでしょ? 一緒に帰ろうよ!」
ハイ、未帆ですね。分かってましたよ。
「俺は別にいいけど、澪は大丈夫なの? あ、ちなみに、明日からは帰省するからダメだぞ」
一番はじめの校内パトロールの時に未帆と澪の間で一悶着あったらしく、今も二人が会うと気まずい空気になっている。なにがあったかはどちらに聞いても教えてはくれなかったので、原因が分からない。
「なら、酒井さんが来る前に学校を出ちゃえば……」
そんなことを言ったら、澪が来るような気がしてならないのは、気のせいだろうか。
「とにかく、まだ3-Bはホームルーム中だから、酒井さんはまだ出てこないって! 早くいこ、亮平!」
亮平は未帆に腕を引っ張られて、校門まで連れていかれた。他の生徒から見れば、男子がかわいい女子に腕を引っ張られている姿はなんともいちゃついているようにも見えるかもしれないが、引っ張られている当の本人、亮平にとっては地獄と言っていい。
(痛い! 痛い! 力緩めて!)
未帆はこれでもかというほど握力と引っ張る力を強めているので、腕が死ぬほど痛いのだ。しかし、まさかたくさんの目が見ている前でそんなことを言うわけにはいかないので、亮平は必死に耐えていた。
校門を出て一つ目の角を曲がったところで、ようやく未帆が腕を放してくれた。
「未帆、いつも言ってることなんだけど、力を緩めてくれない?」
「本当にそれ、本当だよね? 私、たまに嘘だと疑っちゃう事があるんだけど」
「なら、友佳にも同じことをすれば、友佳も俺と同じ事言うよ!」
「……ごめん。今回は、私の感覚だと『かなり強く』引っ張ったから……。忘れてた」
未帆の『普通』でもかなり痛い。それが、『かなり強く』だと今回のような、腕がへし折れるような激痛に襲われる。
「で、とにかく今日は……」
と、後ろから、走ってくる足音が聞こえてきた。未帆も話を中断して、後ろを振り返る。
「はー、はー……。西森さん?全部丸聞こえだったよ?」
(あの会話、丸聞こえだったのかよ!)
どうやらあのとき、教室のドアが空いていたのと澪の席が廊下に近かったのが災いして、会話が全て聞こえていたらしい。
「あの、お二人さん? 言いにくいんだけど、気まずい空気を作るのは……」
「亮平には関係ない!」
「亮平くんには関係ないでしょ!」
未帆と澪、二人同時に制止されてしまった。
「じゃあ、俺、先帰る……」
「「ダメ!」」
二人とも、家に帰してはくれないようだ。
亮平の右側に未帆、左側に澪。気まずい空気は、途中で二人に「先に帰っといて!」と言われるまで亮平は巻き込まれ続けた。
終わりのホームルームが終わった直後、亮平は思わずそう叫んでいた。
そう、明日からゴールデンウィークなのだ。思わず気持ちが高まるのも当然だろう。他の人も『明日からゴールデンウィークだ』などとはしゃいでいる。
亮平の肩に、いきなり痛みが走った。肩に痛みを走らせるほど力が強いといえば……。
「亮平、今日からゴールデンウイーク終わるまでは部活ないんでしょ? 一緒に帰ろうよ!」
ハイ、未帆ですね。分かってましたよ。
「俺は別にいいけど、澪は大丈夫なの? あ、ちなみに、明日からは帰省するからダメだぞ」
一番はじめの校内パトロールの時に未帆と澪の間で一悶着あったらしく、今も二人が会うと気まずい空気になっている。なにがあったかはどちらに聞いても教えてはくれなかったので、原因が分からない。
「なら、酒井さんが来る前に学校を出ちゃえば……」
そんなことを言ったら、澪が来るような気がしてならないのは、気のせいだろうか。
「とにかく、まだ3-Bはホームルーム中だから、酒井さんはまだ出てこないって! 早くいこ、亮平!」
亮平は未帆に腕を引っ張られて、校門まで連れていかれた。他の生徒から見れば、男子がかわいい女子に腕を引っ張られている姿はなんともいちゃついているようにも見えるかもしれないが、引っ張られている当の本人、亮平にとっては地獄と言っていい。
(痛い! 痛い! 力緩めて!)
未帆はこれでもかというほど握力と引っ張る力を強めているので、腕が死ぬほど痛いのだ。しかし、まさかたくさんの目が見ている前でそんなことを言うわけにはいかないので、亮平は必死に耐えていた。
校門を出て一つ目の角を曲がったところで、ようやく未帆が腕を放してくれた。
「未帆、いつも言ってることなんだけど、力を緩めてくれない?」
「本当にそれ、本当だよね? 私、たまに嘘だと疑っちゃう事があるんだけど」
「なら、友佳にも同じことをすれば、友佳も俺と同じ事言うよ!」
「……ごめん。今回は、私の感覚だと『かなり強く』引っ張ったから……。忘れてた」
未帆の『普通』でもかなり痛い。それが、『かなり強く』だと今回のような、腕がへし折れるような激痛に襲われる。
「で、とにかく今日は……」
と、後ろから、走ってくる足音が聞こえてきた。未帆も話を中断して、後ろを振り返る。
「はー、はー……。西森さん?全部丸聞こえだったよ?」
(あの会話、丸聞こえだったのかよ!)
どうやらあのとき、教室のドアが空いていたのと澪の席が廊下に近かったのが災いして、会話が全て聞こえていたらしい。
「あの、お二人さん? 言いにくいんだけど、気まずい空気を作るのは……」
「亮平には関係ない!」
「亮平くんには関係ないでしょ!」
未帆と澪、二人同時に制止されてしまった。
「じゃあ、俺、先帰る……」
「「ダメ!」」
二人とも、家に帰してはくれないようだ。
亮平の右側に未帆、左側に澪。気まずい空気は、途中で二人に「先に帰っといて!」と言われるまで亮平は巻き込まれ続けた。
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