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第2章 ゴールデンウィーク

#005 深夜のやりとり

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「亮平は寝ねぁーの? もう私は寝るげど」

 もうすぐ日付が変わる。亮平はまだ起きて本を読んでいた。

「まだ寝ないから、先寝といてー」

 亮平には、やりたいことがまだ残っているので、寝たくはないのだ。

「明日寝坊だげはしねぁーでよ」

 姉貴が部屋から出て行った。

 亮平がやりたいことは、読書の続きではない。念のためしばらく待ち、姉貴が戻て来ないのを確認してから行動を開始した。

 亮平は、自分の荷物を入れている鞄からパソコンを取り出す。去年祖父母にパソコンを使っているのを見つかって、帰る時まで没収された事があった。基本的に祖父母の家では、テレビと携帯以外の電子機器は使用禁止で、テレビも見ていい時間が決まっている。深夜は使うことを禁止されているので、深夜アニメなどは見ることができない。

 音量を下げて見ようとしたこともあったが、その時は翌朝になぜかバレてその後はテレビを見るのを禁止された。あとで調べると、テレビには視聴履歴なるものがあるらしく、消すことができないため、ごまかせない。

 電子機器が禁止なのは『帰省中にまで電子機器を使うな』ということなので、姉貴には適用されない。

 前回姉貴に深夜アニメを見ているのを見られた時は黙っていてくれた(そのあとバレたが)からチクるとは思ってはいないが、気分しだいで態度を変えるかもしれない。

 充電プラグをコンセントに刺して、パソコンが最低限使える状態まで待つ。使えるようになるまでは読書をして待つことにした。

 しばらくして、ふとパソコンを見ると、電源ランプが緑に変わっていた。亮平は早速パソコンを起動する。いつも聞いている効果音とともに、立ち上がる。

 ホーム画面が開くと、すぐに『MILE』というアプリのボタンをダブルクリックする。『MILE』とは、いつでも使えるコミュニケーションアプリである。先日、ダウンロード数が一億を越えたとニュースが言っていた。

 『MILE』を起動させると、ホーム画面なの中の「未帆」の欄をクリックする。すると、メッセージ入力画面が出てくる。

『亮平? まだ出れないの?』23:39

 未帆からはすでにメッセージが入っていた。

(出れなかったら読めないから意味がないと思うけど)

『澪ってそっちにいる?』23:58

 澪が未帆の方にいれば、昼前にみたあの女子は人違いだったという事になる。

 しばらく待っていると、既読の文字が着いた。

『待たせておいて……。澪なら、昨日の晩のうちに帰省しに行ったよ? 場所は亮平が帰省しているところの近くだったと思う』00:01

(!!!)

 未帆からの情報によって、『あの女子は澪だったのでは?』という疑問が大きく膨らんでいく。

(帰省先にまで会うと、落ち着かないからやめてほしいんだけどなぁ)

『そもそも目的は雑談だったんじゃないの? 亮平、どうしたの?』00:02 
『ごめんごめん。何でもない』00:02
『絶対なにかあると私は思うけど。なんとなく』00:03

 『そんなことないって』と打ち込もうとしたとき、不意に部屋の扉が開いた。

「亮平、まだ起ぎで……。パソコン……」

(なんで姉貴が起きてるんだよ!)

 姉貴は、今から三十分ほど前に寝たはず。

「まだ寝てなかったの!?」
「トイレさ行ぐべーど思ったら、まだ部屋の明がりがづいでだがら……」

『亮平、もしかして寝ちゃった?』00:05

 未帆に対しては「だから寝てたらメッセージが見れるわけないじゃん!」と突っ込みを入れつつ、姉貴がどうするのかを心配した。

「大丈夫だがら。勝手には言わねぁーって。だども、もう寝でよ。これ以上したなら、まだ話が変わってぐるがら」

 姉貴の気が変わったら困る。亮平は、『今日は非常事態のため終わる。理由はまた後で話すから』とだけ入力して、パソコンをしまった。

「電気消しといでよー」

 また姉貴は部屋から出て行った。

(帰省中に、ばったり澪と遭遇することがありませんように!)

 亮平は、心の中でそう願った。
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