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第3章 スケジュール、埋まってます編
032 超過密日程
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「今日はこの時間で終わりだが、体調を崩さないように気を付けるように」
担任のその一言で、修学旅行事前集会が始まった。
修学旅行の準備は着々と進み、気付けば中間テストが終わっていた。来週は、いよいよ念願の修学旅行である。
テストの結果が気になってしょうがない。なにせ、受験にもかかわってくるのだから。
(なんで、修学旅行の日程を来週に入れるかなあ……)
亮平だけにとどまらず、大部分の中三はこのように思っていることだろう。
「まず、確認だな。泊まるホテルの部屋の場所とメンバーは覚えとけよー」
亮平は、302号室に泊まる予定になっている。部屋といっても十人ぐらいが泊まれる大部屋だ。男女別なのは言われなくともだいたいわかるだろう。
亮平が泊まる部屋のメンバーは、横岳、唐島からしま、湊みなと、榊原さかきばら以下、亮平を含めて八人いる。横岳がいるのが少し不安要素だ。
「……一緒じゃないのか……」
後ろからつぶやき声が聞こえていた。声が小さくて聞き取りにくいが、声を拾えないというほどではない。亮平の後ろにいるのは未帆だ。班順で並んでいるので、たまたまそうなっているだけなのだが。
(いやいや、男子と女子が一緒の部屋に泊まったらどういうことになるか想像してくれよ!)
たとえ故意では無かったにしろ、寝ている途中にいつの間にか男子と女子が重なっていた・・・・・・、ということになる可能性だってある。それに第一、部屋の中で着替えられなくなる。いくら同じ班だからといって、同じ部屋にされたらたまらない。
「次、行動予定について」
亮平たちが修学旅行で行くのは、沖縄。学年の中で沖縄に行った人は一人もおらず、全員が楽しみにしている。
修学旅行は二泊三日。一日目は戦争の資料がおいてある資料館の見学。二日目は那覇市内見学と実際に戦争に行かれた方の講演。三日目は自由行動で、お土産を買うのもこの最終日だ。
三日目に買うお土産は当然、亮平も決めている。沖縄名物、ちんすこうと紅芋タルトだ。買える金額の上限ぎりぎりまで使うつもりはないが、ある程度は買っておきたい。
「次ー。持ち物の確認と自由行動での行く場所の確認」
持ち物は、自分できちんと確認するしかない。特にお金は、持っていないとお土産が買えなくなる。
「首里城でよかったっけ?」
「そうそう」
三日目に亮平達が行くのは首里城で、見学し終わったら別の場所を探すことになっている。もっとも、集合時間が十一時なのであまり時間に余裕があるわけではないが。
「では、これで事前集会を終わる。今日は部活は無しになっているはずだから、すぐに帰るように」
担任がその言葉を言い終わった瞬間から、亮平は教室の出口に向かって走り始めていた。今日は三年は全員一斉下校。澪が待ち伏せている可能性が高い。未帆と澪のあの険悪な空気に巻き込まれるのは避けたい。
幸い、未帆に捕まることなく教室を出ることができた。と、
(誰だ?)
亮平は誰かに腕をつかまれた。
「霧嶋、この本前お前も借りてただろ?これ、面白いな」
その声の主は横岳だった。
(なんだよ、横岳かよ)
亮平が横岳の方を振り返ると、目に『理科誤回答集』という本の題名が入ってきた。
(あ、これって……。理科のテストの途中で思い浮かんだ本じゃないか!)
そして、その本が示す意味を悟った。思わず、空を仰いだ。
「霧嶋、聞いてるか?」
「……」
しばらくして会話能力は復活したものの、テストの点数が以前より気になってしょうがなくなった亮平なのであった。
担任のその一言で、修学旅行事前集会が始まった。
修学旅行の準備は着々と進み、気付けば中間テストが終わっていた。来週は、いよいよ念願の修学旅行である。
テストの結果が気になってしょうがない。なにせ、受験にもかかわってくるのだから。
(なんで、修学旅行の日程を来週に入れるかなあ……)
亮平だけにとどまらず、大部分の中三はこのように思っていることだろう。
「まず、確認だな。泊まるホテルの部屋の場所とメンバーは覚えとけよー」
亮平は、302号室に泊まる予定になっている。部屋といっても十人ぐらいが泊まれる大部屋だ。男女別なのは言われなくともだいたいわかるだろう。
亮平が泊まる部屋のメンバーは、横岳、唐島からしま、湊みなと、榊原さかきばら以下、亮平を含めて八人いる。横岳がいるのが少し不安要素だ。
「……一緒じゃないのか……」
後ろからつぶやき声が聞こえていた。声が小さくて聞き取りにくいが、声を拾えないというほどではない。亮平の後ろにいるのは未帆だ。班順で並んでいるので、たまたまそうなっているだけなのだが。
(いやいや、男子と女子が一緒の部屋に泊まったらどういうことになるか想像してくれよ!)
たとえ故意では無かったにしろ、寝ている途中にいつの間にか男子と女子が重なっていた・・・・・・、ということになる可能性だってある。それに第一、部屋の中で着替えられなくなる。いくら同じ班だからといって、同じ部屋にされたらたまらない。
「次、行動予定について」
亮平たちが修学旅行で行くのは、沖縄。学年の中で沖縄に行った人は一人もおらず、全員が楽しみにしている。
修学旅行は二泊三日。一日目は戦争の資料がおいてある資料館の見学。二日目は那覇市内見学と実際に戦争に行かれた方の講演。三日目は自由行動で、お土産を買うのもこの最終日だ。
三日目に買うお土産は当然、亮平も決めている。沖縄名物、ちんすこうと紅芋タルトだ。買える金額の上限ぎりぎりまで使うつもりはないが、ある程度は買っておきたい。
「次ー。持ち物の確認と自由行動での行く場所の確認」
持ち物は、自分できちんと確認するしかない。特にお金は、持っていないとお土産が買えなくなる。
「首里城でよかったっけ?」
「そうそう」
三日目に亮平達が行くのは首里城で、見学し終わったら別の場所を探すことになっている。もっとも、集合時間が十一時なのであまり時間に余裕があるわけではないが。
「では、これで事前集会を終わる。今日は部活は無しになっているはずだから、すぐに帰るように」
担任がその言葉を言い終わった瞬間から、亮平は教室の出口に向かって走り始めていた。今日は三年は全員一斉下校。澪が待ち伏せている可能性が高い。未帆と澪のあの険悪な空気に巻き込まれるのは避けたい。
幸い、未帆に捕まることなく教室を出ることができた。と、
(誰だ?)
亮平は誰かに腕をつかまれた。
「霧嶋、この本前お前も借りてただろ?これ、面白いな」
その声の主は横岳だった。
(なんだよ、横岳かよ)
亮平が横岳の方を振り返ると、目に『理科誤回答集』という本の題名が入ってきた。
(あ、これって……。理科のテストの途中で思い浮かんだ本じゃないか!)
そして、その本が示す意味を悟った。思わず、空を仰いだ。
「霧嶋、聞いてるか?」
「……」
しばらくして会話能力は復活したものの、テストの点数が以前より気になってしょうがなくなった亮平なのであった。
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