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第4章 修学旅行編
036 不運だぁ―――――――!
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「暇だなー」
未帆が、そんな声を漏らし始めたのは、飛行機が離陸してから十分後の事だった。
(数分前まではあんなに興奮してたじゃないか!)
突っ込みを入れたくなるほど数分前と態度が違う。友佳にジェスチャーで興奮しすぎだと指摘されてからも、しばらくはほんのり顔を赤くさせて周囲を見回していたのに。
「機内販売とかないのかな? テレビとかでよく見るけど……」
(あるけどなさそうだよなぁー)
確かに今亮平を含む東成の生徒が乗っている飛行機は一般の飛行機。一般のお客さんも乗っている。機内販売もするだろう。
しかし、中学校の生徒に向けて機内販売をしてもしょうがない。教師も同じことを考えているはずだ。
「一応暇つぶしにトランプなら持ってきたけど」
(まさか、こんなに早く使うことになるなんてな)
あまりの展開の早さで使わなさそうだと思っていたが、そんなことはなかった。まあ、こんな時のために持ってきたのは認めるが。
しかし、だいたいの人はそういったものを持ってきているはず。
「未帆は何も持ってきてないの?」
「……間違って飛行機の下に入れられる荷物の方に入れちゃった……」
しばらく沈黙が続いた後、大きな声で言われた。
(大きな声で言うことでもなかろうに)
とにかく、謎は解けた。
「霧嶋、俺達も入れてくれ。暇すぎる。全員、間違えて西森さんのようにしちゃってたみたいで」
後ろから声がかかる。断る理由は何もないので、班全員でトランプをすることにした。横岳達後ろの席の三人の位置からでは、座席と座席の隙間からカードを出すことになるので面倒くさそううだが」
「ついでに、罰ゲームも決めようぜ。総合で最下位だった奴は、一位の人の小さい方の鞄を持つこと!」
「おもしろいんじゃない?」
「やろう、やろう!」
横岳の罰ゲームの提案に、みんなが乗り気だ。亮平を除いて。
(どうしても、こういう罰ゲーム系は嫌な予感しかしないんだよなぁ)
「俺は嫌なんだけど」
「いいじゃん、いいじゃん」
気持ちはあまり乗らない。しかし、場の雰囲気を壊すのも悪い。
「分かったよ。最下位の奴は罰ゲームな」
渋々承諾した。亮平は、どうしても自分が最下位になる未来しか頭の中に描けなかった。
トランプといってもできるゲームには限りがある。なので、最初はだれもが知っているであろう『七並べ』をすることになった。
亮平は配られたカードは配り終わってから見る派だ。全員にカードを配り終えた後、一枚ずつ自分の手元に来たカードをめくっていく。
(1,12,13,2,11,13,……)
ろくなカードが来ていない。結局、亮平の手元に4~10のカードは一枚も来ていなかった。イカサマはない。カードをシャッフルしたのも、配ったのも亮平だからだ。
(勝てる可能性はゼロ。こうなったら……)
「無理!降参!」
亮平は、早々に退場することにした。
「霧嶋、手札がよっぽど悪かったか?」
「霧嶋君、どうしたの?」
質問攻めに遭ったので、自分の手札を公開する。
「お、おい、これ運悪すぎだろ!」
「亮平……」
班の全員が苦笑する。イカサマの余地はないのだから。
(この後全部、負ける気がする……)
亮平の思考は、泥沼の中へと飲み込まれていくのであった。
未帆が、そんな声を漏らし始めたのは、飛行機が離陸してから十分後の事だった。
(数分前まではあんなに興奮してたじゃないか!)
突っ込みを入れたくなるほど数分前と態度が違う。友佳にジェスチャーで興奮しすぎだと指摘されてからも、しばらくはほんのり顔を赤くさせて周囲を見回していたのに。
「機内販売とかないのかな? テレビとかでよく見るけど……」
(あるけどなさそうだよなぁー)
確かに今亮平を含む東成の生徒が乗っている飛行機は一般の飛行機。一般のお客さんも乗っている。機内販売もするだろう。
しかし、中学校の生徒に向けて機内販売をしてもしょうがない。教師も同じことを考えているはずだ。
「一応暇つぶしにトランプなら持ってきたけど」
(まさか、こんなに早く使うことになるなんてな)
あまりの展開の早さで使わなさそうだと思っていたが、そんなことはなかった。まあ、こんな時のために持ってきたのは認めるが。
しかし、だいたいの人はそういったものを持ってきているはず。
「未帆は何も持ってきてないの?」
「……間違って飛行機の下に入れられる荷物の方に入れちゃった……」
しばらく沈黙が続いた後、大きな声で言われた。
(大きな声で言うことでもなかろうに)
とにかく、謎は解けた。
「霧嶋、俺達も入れてくれ。暇すぎる。全員、間違えて西森さんのようにしちゃってたみたいで」
後ろから声がかかる。断る理由は何もないので、班全員でトランプをすることにした。横岳達後ろの席の三人の位置からでは、座席と座席の隙間からカードを出すことになるので面倒くさそううだが」
「ついでに、罰ゲームも決めようぜ。総合で最下位だった奴は、一位の人の小さい方の鞄を持つこと!」
「おもしろいんじゃない?」
「やろう、やろう!」
横岳の罰ゲームの提案に、みんなが乗り気だ。亮平を除いて。
(どうしても、こういう罰ゲーム系は嫌な予感しかしないんだよなぁ)
「俺は嫌なんだけど」
「いいじゃん、いいじゃん」
気持ちはあまり乗らない。しかし、場の雰囲気を壊すのも悪い。
「分かったよ。最下位の奴は罰ゲームな」
渋々承諾した。亮平は、どうしても自分が最下位になる未来しか頭の中に描けなかった。
トランプといってもできるゲームには限りがある。なので、最初はだれもが知っているであろう『七並べ』をすることになった。
亮平は配られたカードは配り終わってから見る派だ。全員にカードを配り終えた後、一枚ずつ自分の手元に来たカードをめくっていく。
(1,12,13,2,11,13,……)
ろくなカードが来ていない。結局、亮平の手元に4~10のカードは一枚も来ていなかった。イカサマはない。カードをシャッフルしたのも、配ったのも亮平だからだ。
(勝てる可能性はゼロ。こうなったら……)
「無理!降参!」
亮平は、早々に退場することにした。
「霧嶋、手札がよっぽど悪かったか?」
「霧嶋君、どうしたの?」
質問攻めに遭ったので、自分の手札を公開する。
「お、おい、これ運悪すぎだろ!」
「亮平……」
班の全員が苦笑する。イカサマの余地はないのだから。
(この後全部、負ける気がする……)
亮平の思考は、泥沼の中へと飲み込まれていくのであった。
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