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第4章 修学旅行編
046 環境要因と人為的要因が交差する時
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「人、全くいないな」
亮平達五班は、特にあてもなくブラブラしていた。そして、今通っている道は、人が周辺に住んでいないのか、と思うぐらい人がおらず、とても静かだった。山や森にいるわけではないが、いるのに近いような感覚に襲われる。
あまりに音がしないので、不気味な気持ちが体の上のほうにまで込みあがってくる。流石に、街の中央部の方に引き返した方がいいのではないか、という思いが大きくなる。
「迷子になったりはしてないよね?」
(うぐっ)
荻原さんに痛いところを突かれた。
亮平は、いかにも道が全てわかっているような風で先頭を歩いているが、実際はあまり現在地を把握していなかった。いざとなったら地図を頼みにすればいい、という考え方をしていたので、ここからどれだけ歩けば集合地点に着くのかも分からない。
(頼むから、地図で分かる場所でありますように!)
祈りながら地図をバッグから取り出し、開く。そして、希望は窓ガラスを固いもので殴ったときのようにガラガラと崩れ落ちた。
多分今いるところは確実に地図にのっているのだろう。しかし、その地図が読めない。
周りに、地図に載っていそうな名前の付いている建物もない。地名や住所も分からない。特徴のある地形もない。地図を読むのが下手な亮平にとっては、それだけで致命傷ものだった。
「もしかして、地図読めないとか?」
「……」
「迷子?」
「そんなおおげさな。しばらく歩けば、どこにいるかぐらいわかると思うけど」
とにかく適当に歩けばなんとかなる。亮平がそう思い直した時だった。
「お、おい!おとなしく、おとなしくしろ!おとなしくしなかったらどうなるか、分かっているんだろうな?」
目の前の交差している道から、全身黒の男が出てきた。ズボンも黒、沖縄の暑い気候には似合わない黒いジャケット、帽子も黒、マスクをつけている。教科書に出てくる不審者のお手本のような恰好をしている。声は震えているが、脅す気があるのは確かなようだ。
本能に従って、亮平は回れ右をして方向転換する。が、すでにそのもと来た道の先には、すでに別の男が立っていた。
「おとなしくしてろよ。さもないと、どうなっても知らないからな」
この男も、最初の男と同じように声が震えている。恰好も同じなので、仲間なのだろう。
(何も持っていない男が二人なら、全員でぶつかればなんとか突破できる。今のままなら)
亮平は、必死に全員が助かる可能性が最も高いものを考える。だが、考えている間にも、ますます状況は悪化していく。
「まさか、大人が二人だけとは思うなよ?」
前と後ろから、それぞれ二人ずつ黒ずくめの男が出てきた。やはりどの男も、声が震えている。
(合計で六人……。強行突破は無理だ。状況が悪化するだけだ)
冷静に考えられることができるのは、負の過去があったからこそ。しかし、希望的観測を打ち砕く現実が津波のごとく次々と押し寄せる。
強行突破は無理だ。人数が同じならば、力が強い大人の方が圧倒的有利だ。それに、班のみんなの体が震えている。動けないのがオチだろう。
はるか遠くに、ペンキで染めたかのような黒色の大型トラックが見えた。
「あ、たすけ……」
麻生が叫ぼうとしたので、亮平はその口をふさぐ。
理由は二つある。まず一つ目は、あの車が男の仲間の車だった場合、助けを呼ぶ声をだそうとしたことで余計に男たちを警戒させてしまうかもしれない。
そして、二つ目は、黒の大型トラックが一般のトラックだった場合。最悪なのは、むしろこっちの方だ。男達が暴走すると、亮平達だけではなく一般の人にまで被害が出てしまう。警戒されてしまうのは一つ目の理由と同じなので、他の人に被害を出している分被害が拡大してしまう。
その大型トラックは、亮平達の目の前で急ブレーキをかけて止まった。案の定、中からは全身黒い男が運転席から出てきた。
「に、荷台の中に全員乗れ! 間違っても助けを呼ぼうとか考えるんじゃないぞ!」
この男の声も震えている。何があったのだろうか。
(刺激したら何をされるか分からない)
亮平は素直に乗り込むが、他の五人の動きがぎこちない。不安な気持ちが顔から見て取れる。特に未帆達女子陣は、体を動かしたいが動かない、といった感じだ。
なかなか乗り込まないからか、男達の内の一人が、舌打ちをし始めた。他の男達がやめさせようとしているが、それでも舌打ちは止まらない。
「お前ら早く乗れやア!」
男はそう言うと、ポケットに手を突っ込んだ。銀色に光るものが中から姿を現した。亮平は、すぐに銀色に光るものが何かということを理解した。
細長く、一定の間隔で線が入っている銀のもの……。カッターナイフだった。
刃物を見て一気に恐怖が絶頂に達したのか、急に動きが速くなる。女子陣も、体は震えたままながらも、背中を誰かに押されたかのように荷台に乗り込んできた。
同時に荷台の扉が閉まり、中は闇と化す。鍵がかけられたらしく、押しても扉はあかない。
床の方から大きなエンジン音が鳴り始めた。
(これで森の中とかに連れていかれたら、逃走は無理だな……)
どこに連れていかれるかは分からない。脱出不可能な場所に連れていかれないことを亮平は祈るしかなかった。
亮平達五班は、特にあてもなくブラブラしていた。そして、今通っている道は、人が周辺に住んでいないのか、と思うぐらい人がおらず、とても静かだった。山や森にいるわけではないが、いるのに近いような感覚に襲われる。
あまりに音がしないので、不気味な気持ちが体の上のほうにまで込みあがってくる。流石に、街の中央部の方に引き返した方がいいのではないか、という思いが大きくなる。
「迷子になったりはしてないよね?」
(うぐっ)
荻原さんに痛いところを突かれた。
亮平は、いかにも道が全てわかっているような風で先頭を歩いているが、実際はあまり現在地を把握していなかった。いざとなったら地図を頼みにすればいい、という考え方をしていたので、ここからどれだけ歩けば集合地点に着くのかも分からない。
(頼むから、地図で分かる場所でありますように!)
祈りながら地図をバッグから取り出し、開く。そして、希望は窓ガラスを固いもので殴ったときのようにガラガラと崩れ落ちた。
多分今いるところは確実に地図にのっているのだろう。しかし、その地図が読めない。
周りに、地図に載っていそうな名前の付いている建物もない。地名や住所も分からない。特徴のある地形もない。地図を読むのが下手な亮平にとっては、それだけで致命傷ものだった。
「もしかして、地図読めないとか?」
「……」
「迷子?」
「そんなおおげさな。しばらく歩けば、どこにいるかぐらいわかると思うけど」
とにかく適当に歩けばなんとかなる。亮平がそう思い直した時だった。
「お、おい!おとなしく、おとなしくしろ!おとなしくしなかったらどうなるか、分かっているんだろうな?」
目の前の交差している道から、全身黒の男が出てきた。ズボンも黒、沖縄の暑い気候には似合わない黒いジャケット、帽子も黒、マスクをつけている。教科書に出てくる不審者のお手本のような恰好をしている。声は震えているが、脅す気があるのは確かなようだ。
本能に従って、亮平は回れ右をして方向転換する。が、すでにそのもと来た道の先には、すでに別の男が立っていた。
「おとなしくしてろよ。さもないと、どうなっても知らないからな」
この男も、最初の男と同じように声が震えている。恰好も同じなので、仲間なのだろう。
(何も持っていない男が二人なら、全員でぶつかればなんとか突破できる。今のままなら)
亮平は、必死に全員が助かる可能性が最も高いものを考える。だが、考えている間にも、ますます状況は悪化していく。
「まさか、大人が二人だけとは思うなよ?」
前と後ろから、それぞれ二人ずつ黒ずくめの男が出てきた。やはりどの男も、声が震えている。
(合計で六人……。強行突破は無理だ。状況が悪化するだけだ)
冷静に考えられることができるのは、負の過去があったからこそ。しかし、希望的観測を打ち砕く現実が津波のごとく次々と押し寄せる。
強行突破は無理だ。人数が同じならば、力が強い大人の方が圧倒的有利だ。それに、班のみんなの体が震えている。動けないのがオチだろう。
はるか遠くに、ペンキで染めたかのような黒色の大型トラックが見えた。
「あ、たすけ……」
麻生が叫ぼうとしたので、亮平はその口をふさぐ。
理由は二つある。まず一つ目は、あの車が男の仲間の車だった場合、助けを呼ぶ声をだそうとしたことで余計に男たちを警戒させてしまうかもしれない。
そして、二つ目は、黒の大型トラックが一般のトラックだった場合。最悪なのは、むしろこっちの方だ。男達が暴走すると、亮平達だけではなく一般の人にまで被害が出てしまう。警戒されてしまうのは一つ目の理由と同じなので、他の人に被害を出している分被害が拡大してしまう。
その大型トラックは、亮平達の目の前で急ブレーキをかけて止まった。案の定、中からは全身黒い男が運転席から出てきた。
「に、荷台の中に全員乗れ! 間違っても助けを呼ぼうとか考えるんじゃないぞ!」
この男の声も震えている。何があったのだろうか。
(刺激したら何をされるか分からない)
亮平は素直に乗り込むが、他の五人の動きがぎこちない。不安な気持ちが顔から見て取れる。特に未帆達女子陣は、体を動かしたいが動かない、といった感じだ。
なかなか乗り込まないからか、男達の内の一人が、舌打ちをし始めた。他の男達がやめさせようとしているが、それでも舌打ちは止まらない。
「お前ら早く乗れやア!」
男はそう言うと、ポケットに手を突っ込んだ。銀色に光るものが中から姿を現した。亮平は、すぐに銀色に光るものが何かということを理解した。
細長く、一定の間隔で線が入っている銀のもの……。カッターナイフだった。
刃物を見て一気に恐怖が絶頂に達したのか、急に動きが速くなる。女子陣も、体は震えたままながらも、背中を誰かに押されたかのように荷台に乗り込んできた。
同時に荷台の扉が閉まり、中は闇と化す。鍵がかけられたらしく、押しても扉はあかない。
床の方から大きなエンジン音が鳴り始めた。
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