サンタの願いと贈り物

紅茶風味

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【淳平編】2話-1

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 月曜日。朝の電車に揺られながら、また一週間が始まった、とうんざりした気分になる。いつもの車両の、いつものシートに腰を下ろせば、周囲に座っている顔ぶれもいつも通りだ。

 学校に着き、席に座って授業を受ける頃には、うんざりとしていた気分が麻痺してくる。座っているだけで時が過ぎてくれるからだろうか。決して受け入れたわけではないが、まぁいいか、と思えてくるのだ。

 教師が、抑揚の無い喋り方で教科書を読む。次第に頭がぼんやりとし、意識が違う方向へと飛んだ。おとといの朝、この近くの公園で会ったおかしな女のことを思い出した。

 あの日、公園を出た僕と葵は、まっすぐに家に帰った。本当なら、どこかを散歩でもしながら昼ご飯を食べに行くつもりだったが、あの女に対する恐怖心が勝ったのだ。一刻も早くここから離れたい。そう思い電車に乗り、そのまま帰宅することになった。

 葵は何も言わなかったが、残念そうな顔をしていた。砂で汚れた手で紙パックを握り締めたまま、じっと僕のことを見つめる。

「それ、よこしなさい」
「やだ。お兄ちゃん、捨てるでしょ」

 捨てるつもりだった。おかしな女が手品で出した飲み物など、気味が悪くて飲ませられない。捨てないよ、と言って、葵から受け取った。洗面所で手を洗っている間に、同じように砂だらけになっている紙パックを、ティッシュで綺麗に拭いた。

 手を洗って戻ってきた葵が、食料棚の高い位置にそれが置かれているのを見て、言った。

「飲みたい」
「駄目。知らない人から貰った物を、食べたり飲んだりしちゃ駄目だ。前にも言っただろう、知らない人に声をかけられても、知らんぷりしろって」
「知らないひとじゃないもん」
「え、初めて会ったんじゃないの?」
「初めて会ったよ。でも、ひのりんいいひとだもん」

 何と言ったのか、すぐには分からなかった。「ひのりんいいひとだもん」という言葉を頭の中で何度か反芻し、あぁ、「ひのりん」という人名なのか、とようやく納得する。女が葵にそう名乗ったのだろう。ふざけた呼び名だ。

 しゃがんで膝をつき、目線の高さを合わせた。

「分かったよ。でも、飲むのは止めておこう。その……、ひのりんが、またあの公園にいたら、お兄ちゃんが返しておくから」
「くれたのに?」
「なんでくれたのか分からないだろ。もう一度ちゃんと話して、なんで葵にジュースをくれたのか聞いてみるよ。いい人かどうかは、それから考えることだ」

 葵は不服そうに足元を見つめていたが、しばらく黙ると、顔を上げて僕を見た。うん、と小さな声で頷く。

 正直、またあの女に会おうとは思っていない。そう都合よく公園にいるとも思えないし、そもそも会いたくはない。

 葵と約束してしまった手前、嘘をつくのも気が引けるので、とりあえず公園には行くことにした。いないことを確認したらすぐに帰ろう。葵には、いなかったからまた今度行くと言えばいい。後日聞かれたらまた同じように答えて、繰り返そう。そうすれば、いつの間にか忘れてくれるはずだ。

 授業を終え、あっという間に学校で過ごす時間が過ぎ去った。いつもそうだ。朝は気が重くてたまらないのに、行ってしまえば何てことない。

 早々に帰り支度をして、学校を出た。裏門を潜って敷地の外に出ると、途端に呼吸が軽くなる。

 公園までの道のりは、細い道を通り、曲がり角を一回曲がってすぐだ。平日の夕方でも、近辺に人けはあまりない。

 公園の入り口に立ち、中を覗いた。案の定、そこには誰もいなかった。緑道を通って駅に向かった。女がいないことを確認できたからか、足取りが軽い。

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