カルルと15人のアイドル戦士たち~昔アイドルだった君を僕は知っていたんだ

リトルマナ

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第1話 早蕨小太郎総理秘書官補佐~①

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  ⎯⎯ 2043年3月28日土曜日深夜、総理官邸食堂
 



「今夜も泊りですか?早蕨さん。いつもいつも精が出ますよね」

「何の因果でしょうかね。今日で一週間っすよ、やすみも全然取れてないし風呂も入れてないし、毎日カレーばっかりだし」

「申し訳ないねぇ、メニューが少なくて。カレーとおそばぐらいだもんねうちは」

「あっ、いやいやそういう意味で言ったんじゃあ…」

ワンオペで深夜の官邸食堂を切り盛りするもう六十路をとっくに過ぎてるまかないのお佳代さん。カレーにはいつも余り物のコロッケや空揚げなどをトッピングしてくれるのが常で小太郎の官邸での単調な食生活に少なからず彩を添えてくれている。

「超美味しいっすよ、ヤバいっすよお佳代さんのカレー、毎日食べててほんと飽きないし。学生時代は暇さえあれば都内のカレー店巡りしてた人間が言ってんだから間違いないっす」

「あらあら、相変わらずの人たらしだね、嘘でも嬉しいこと言ってくれる」

「だから嘘じゃないっすって」

「ハイハイ、分かりました。じゃあ今日はコロッケと特別にデザートのヨーグルトも付けとくね」

早蕨小太郎、官邸勤めはまだ二年目の総理秘書官補佐だ。
京都大学の研究室勤めで講師をしていたが、大学の先輩である松永兵助秘書官から熱烈な誘いを受けて半ば強奪の様にしてヘッドハンティングされた。
人が良くてお人好しで頼まれたら断れない性分だから各部署からいいように仕事を回されている。
休みを取る間もなく家にも帰れないで官邸に泊まり込む日が続いている。

「お佳代さん、あんまり甘やかさないでくださいよ。こいつは尻叩くぐらいがちょうどいいんだから」

手にコンビニの袋をぶら下げて現れた長身のガタイのいい男、彼が秘書官の松永だ。

「またカレーだろうなと思ったらやっぱりな。飽きないやつだなおまえも」

「兵助さん?あれ?帰ったんじゃないんすか?」


「タクシー乗ったらよ、五分で引き返せって。コンビニで夜食まで買ったのによ。ほれ」

ノンアルビールやらおにぎりやらのパンパンのレジ袋が勢いよく宙を舞う。「うわっ」と小叫びしながら早蕨が胸で難なくキャッチ。

「あざっす。なんか悪いっすね」

「スイーツも買ったから、お佳代さんも適当に持ってって」

「ありがとね、でも何か悪いね」
厨房の奥からの声に「いやいや、何も何も」と片手をあげる松永兵助。
おそらく自宅に待ってる誰かさんに買ったんであろうスイーツ。頂くのは忍びない感がお佳代さんの表情に現れていた。

「スルーして帰るっていうてはなかったんすか?」
レジ袋の中身をガサゴソと品定めしながら小太郎は言う。

「総理本人からの直じゃなければ、それもあったかもな」

「えっ!?!谷部総理から直っすか?」

「お疲れのところ悪いねって、労っていただいた」
そう言って何かを思い出した様に松永は押し黙った。


「そろそろらしいぞ、小太郎」
腰を屈めて顔を近づけてから松永は声を潜めてぼそりと言った。

「そろそろ?」

「例のAAFの娘(こ)たち、いよいよ世界にお披露目らしい」

「そうすか…」

「何だよ、元気ないな。お前も庶務課みたいな雑用とはおさらばだぞこれで」

AAFの娘たち、仲間内ではそう呼び合っている。
Akiba Aidol Fighterを略した隠語だ。
国の超ド級の機密事項なので本来ならばこんな場所でも口にしてはいけないのだが松永兵助の場合、その豪快にして奔放な性格ゆえに
スタバの店内であろうが満員電車の中であろうが仲間内だけのそんな隠語を使ってバンバン機密事項をを喋ってくる。後輩で申し訳ないのだがそのぺっらぺらと止まらない口を掌で塞いでやろうと思ったのは一度や二度どころじゃない。
もしかしたらこの人は彼女にもこんな調子でノンアルビールのつまみ代わりに日本の国家機密を漏らしてるんじゃないだろうかと心配してしまう。

「先輩」

「うん?」

「先輩ってどこまでAAFの件に関わってるんすか?」

「どこまでとは?」

「だから、万一の場合のアレですよ」

「参戦か?」

「もう声大きいっすよ」

「やるとなったら俺は一蓮托生だ。その時は文官じゃなくて俺は制服組になる」

「やっぱり」

「やっぱりってなんだよ」

そういう事なんだって思った。この人は戦いたくてうずうずしている。今の日本が日本じゃなくなったこの現況を心から憂いているのがこの松永兵助で古き良き日本のあの頃を本気で取り戻せるって思ってる、それが松永兵助という人間の良い意味での本性だ。
小太郎はいずれはこの人は軍人になると思っていた。

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