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第2話 早蕨小太郎総理秘書官補佐~②
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「じゃあ、あの子たちも戦場に連れて行くんすよね」
「行くけど戦わない。彼女たちの戦闘パフォーマンスは封印できてこそその効力を最大限に発揮できる。それはお前が一番分かってるはずだろ」
「わかってますけど、戦え使えという声が閣内や党内では勢い増してるってのもあるし。なんならその急先鋒は先輩じゃないんすか?あの子達を使うのは核よりヤバいってのが何で分からないんすか?」
「小太郎、その話はここではするな」
(あんたやろしてるのは)とそんな言葉を喉まで出かかってさすがにそれは留めた。
振り替えると厨房にはもうお佳代さんの姿はなかった。微妙な空気感を目ざとく察して休憩部屋にでも引っ込んだんだろう。
「とにかく兵助さんは武闘派でもおれはそっち派じゃないっすから。そこまでついていけないっすから」
「わかってるよそんな事は。言われるまでも無い。お前は最後まで総理を助けろ、だから無理強いしてでも呼んだんじゃないか」
「助けろって…。どういう意味っすか」
「…そのままの意味だ」
松永が答えるまで数秒だが間が空いた。
おそらく、俺は総理とは別の道を行く、だがお前は残って総理を助けろ、そう言いたかったのだろうと小太郎は解釈した。
敬愛する谷部総理に袖を分かつ覚悟は出来ていてもそれを言葉にするのは憚られるのだろう。
「とにかく、近いうちに世界は大きく動く。この日本を中心にな」
そう、おそらく世界は震撼することになる。それは小太郎も承知していた。特に新東方連合なるものを構築して世界の覇権を握るべくアジア大陸で侵略を重ねているロシア中国には国の存亡に関わる程の衝撃を受けることになるだろう。
「けどまさか、今日はその事で急遽って事じゃないっすよね」
「分からん。これから行くとこだ。ただ…」
「ただ…?」
「ただ、プーチンの指は…」
とだけ言って松永は小太郎の鼻面まで顔を寄せた。
「プーチンの指は核のボタンの上に乗ってると、3日前に俺は聞いた」
「えっ…そ、それって、だ、誰から…?」
「もちろん総理本人だ」
頬張っていたカレーを喉に詰まらせそうになり慌てて目の前のコップの水に手を伸ばした。
「ぷはっ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ、それってもう核戦争前夜じゃないっすか?!」
「そうなるかもな」
「そうなるかもなって…」
小太郎の慌てぶりに比べて松永は至って冷静に見えた。
戦争をもう暫定路線と捉えている彼にはロシアの核使用も想定内なのか。
ただ総理本人の口から漏れたということはもう秒読みの段階。
核の弾道ミサイルがいつ飛んで来てもおかしくない状況。
だとしたらそれは何処を向いているのか。
未だ紛争収まらず百年戦争の様相を呈しているウクライナか。
関係悪化はずっと続いているNATO諸国の何処かか。
それとも大陸間弾道弾で一気にアメリカを捉えようとしているのか
「日本への可能性は?」
「ないっちゃない、あるっちゃあある」
「あるっちゃあるって…」
令和生まれでまだ三十路ソコソコの松永兵助、彼はこうやって何故か平成や昭和生まれの様なレトロな言い回しを好んで使う。それはシリアスな状況になればなるほど頻度を増す。
「それって、2分の1とか5050とかハーフアンドハーフとかそういう意味っすか?」
松永はもう何も言わなかった。
小さく溜息のような息を吐くと厨房の方に向かって「お佳代さん、気使わせて申し訳ないです、もう終わりましたから」と言うと
「ハイハイ、お疲れ様でした」と小さいけどよく通る声が聞こえた。
「じゃあ俺は行くから」
後ろ手に軽く手を上げて出ていこうとする松永、その背中を一瞥すると小太郎は半分食べ残していたカレーを秒速で胃の中に押し込んだ。
「兵助さん! あの…うえっ…。俺も、うぷ、ついていっちゃあだめ…ですかね?なんかこのままだともやもやして…うぷっ、うぇ…」
立ち上がって叫ぶと胃の中が逆流したのか、ちゃんと言葉が出てこない小太郎。厨房の中からはお佳代さんのクスクス笑いが漏れてくる
そんな小太郎に苦笑するしかない松永だったが、そんなまだ世の中を真っ直ぐにしか見ない天然のある意味ピュアな早蕨小太郎なら今の閉塞感でガチガチの内閣の官僚チームを少しでも変えてくれるのではないか。
そんな思いで谷部総理に進言して小太郎を小太郎を官邸に引き入れた経緯があった。
異分子を入れる事によって風を変え参戦に消極的な内閣を混ぜっ返す、松永兵助の小太郎への期待は
この時点ではまだ其の程度のものだった。
「だったら早く着替えてちゃんとネクタイ締めてこい!5分待ってやる、髭剃るのも忘れるな!」
「は、はい!3分で戻るっす!」
「ただし言っとくぞ!」
慌てて出ていくその背中に松永の声が飛ぶ。
「この前みたいにAAFの彼女たちの前で感傷的になる様な失態を晒すならお前をこのチームから外すよう俺は総理に進言する。いいか、俺たちはもう戦時下にある、国民が知らないだけで戦争に巻き込まれてる。それを肝に銘じろ、
あと、その学生コトバ何とかしろ、お前いずれは広報でメディアの前に立つ立場だぞ!」
「了解っす。あっ、了解でありますっ!」
小太郎が失態を晒したのは二ヶ月前の年明け間もない頃、
AAFの彼女達との初の顔合わせになった極秘ミーティングでの席上での事だった。
「行くけど戦わない。彼女たちの戦闘パフォーマンスは封印できてこそその効力を最大限に発揮できる。それはお前が一番分かってるはずだろ」
「わかってますけど、戦え使えという声が閣内や党内では勢い増してるってのもあるし。なんならその急先鋒は先輩じゃないんすか?あの子達を使うのは核よりヤバいってのが何で分からないんすか?」
「小太郎、その話はここではするな」
(あんたやろしてるのは)とそんな言葉を喉まで出かかってさすがにそれは留めた。
振り替えると厨房にはもうお佳代さんの姿はなかった。微妙な空気感を目ざとく察して休憩部屋にでも引っ込んだんだろう。
「とにかく兵助さんは武闘派でもおれはそっち派じゃないっすから。そこまでついていけないっすから」
「わかってるよそんな事は。言われるまでも無い。お前は最後まで総理を助けろ、だから無理強いしてでも呼んだんじゃないか」
「助けろって…。どういう意味っすか」
「…そのままの意味だ」
松永が答えるまで数秒だが間が空いた。
おそらく、俺は総理とは別の道を行く、だがお前は残って総理を助けろ、そう言いたかったのだろうと小太郎は解釈した。
敬愛する谷部総理に袖を分かつ覚悟は出来ていてもそれを言葉にするのは憚られるのだろう。
「とにかく、近いうちに世界は大きく動く。この日本を中心にな」
そう、おそらく世界は震撼することになる。それは小太郎も承知していた。特に新東方連合なるものを構築して世界の覇権を握るべくアジア大陸で侵略を重ねているロシア中国には国の存亡に関わる程の衝撃を受けることになるだろう。
「けどまさか、今日はその事で急遽って事じゃないっすよね」
「分からん。これから行くとこだ。ただ…」
「ただ…?」
「ただ、プーチンの指は…」
とだけ言って松永は小太郎の鼻面まで顔を寄せた。
「プーチンの指は核のボタンの上に乗ってると、3日前に俺は聞いた」
「えっ…そ、それって、だ、誰から…?」
「もちろん総理本人だ」
頬張っていたカレーを喉に詰まらせそうになり慌てて目の前のコップの水に手を伸ばした。
「ぷはっ、ちょ、ちょっと待ってくださいよ、それってもう核戦争前夜じゃないっすか?!」
「そうなるかもな」
「そうなるかもなって…」
小太郎の慌てぶりに比べて松永は至って冷静に見えた。
戦争をもう暫定路線と捉えている彼にはロシアの核使用も想定内なのか。
ただ総理本人の口から漏れたということはもう秒読みの段階。
核の弾道ミサイルがいつ飛んで来てもおかしくない状況。
だとしたらそれは何処を向いているのか。
未だ紛争収まらず百年戦争の様相を呈しているウクライナか。
関係悪化はずっと続いているNATO諸国の何処かか。
それとも大陸間弾道弾で一気にアメリカを捉えようとしているのか
「日本への可能性は?」
「ないっちゃない、あるっちゃあある」
「あるっちゃあるって…」
令和生まれでまだ三十路ソコソコの松永兵助、彼はこうやって何故か平成や昭和生まれの様なレトロな言い回しを好んで使う。それはシリアスな状況になればなるほど頻度を増す。
「それって、2分の1とか5050とかハーフアンドハーフとかそういう意味っすか?」
松永はもう何も言わなかった。
小さく溜息のような息を吐くと厨房の方に向かって「お佳代さん、気使わせて申し訳ないです、もう終わりましたから」と言うと
「ハイハイ、お疲れ様でした」と小さいけどよく通る声が聞こえた。
「じゃあ俺は行くから」
後ろ手に軽く手を上げて出ていこうとする松永、その背中を一瞥すると小太郎は半分食べ残していたカレーを秒速で胃の中に押し込んだ。
「兵助さん! あの…うえっ…。俺も、うぷ、ついていっちゃあだめ…ですかね?なんかこのままだともやもやして…うぷっ、うぇ…」
立ち上がって叫ぶと胃の中が逆流したのか、ちゃんと言葉が出てこない小太郎。厨房の中からはお佳代さんのクスクス笑いが漏れてくる
そんな小太郎に苦笑するしかない松永だったが、そんなまだ世の中を真っ直ぐにしか見ない天然のある意味ピュアな早蕨小太郎なら今の閉塞感でガチガチの内閣の官僚チームを少しでも変えてくれるのではないか。
そんな思いで谷部総理に進言して小太郎を小太郎を官邸に引き入れた経緯があった。
異分子を入れる事によって風を変え参戦に消極的な内閣を混ぜっ返す、松永兵助の小太郎への期待は
この時点ではまだ其の程度のものだった。
「だったら早く着替えてちゃんとネクタイ締めてこい!5分待ってやる、髭剃るのも忘れるな!」
「は、はい!3分で戻るっす!」
「ただし言っとくぞ!」
慌てて出ていくその背中に松永の声が飛ぶ。
「この前みたいにAAFの彼女たちの前で感傷的になる様な失態を晒すならお前をこのチームから外すよう俺は総理に進言する。いいか、俺たちはもう戦時下にある、国民が知らないだけで戦争に巻き込まれてる。それを肝に銘じろ、
あと、その学生コトバ何とかしろ、お前いずれは広報でメディアの前に立つ立場だぞ!」
「了解っす。あっ、了解でありますっ!」
小太郎が失態を晒したのは二ヶ月前の年明け間もない頃、
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