カルルと15人のアイドル戦士たち~昔アイドルだった君を僕は知っていたんだ

リトルマナ

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第5話 紗倉結音

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「ねぇ早蕨さんってAkibaオタクだったの?」
小さく低く漏れた声に彼女からこ(こだけの話感)が伝わってきて一瞬言葉が出ずに小太郎は固まった。

「2ヶ月前大変だったんでしょ、Akibaの子達の前で泣いちゃって」

「お、おまえどうしてそれを?」
小太郎より先に慌てて大きな肩を揺すって声がうわずる松永を見て紗倉結音ゆいは歯を見せてニッと笑った。

「ほんと松永さんって昭和のアニメのおじキャラですよね、まるで動きが亀有の両さん」

「うわ、上手いっすね、紗倉さん、確かに両さんっすよ」
思わず釣られて笑ってしまった小太郎は緊張が緩んで小さくほっと胸を撫で下ろした。

「亀有の両吉か、まぁ言われなくもねぇか」

「やっぱり」と小太郎。「なにがやっぱりだよ、おまえにいわれたかねえわ」とすかさず被せてくる松永。

そんな二人を見てクスクス笑いが止まらない紗倉だったが
松永が真顔になって彼女に向き直ると唇を小さく噛んで笑いをとめた。

「何で知ってんだよ、おまえが。いや君がか」
言葉を改めたのは仮にもここが総理の執務室で目の前に澄んだ瞳を輝かせてるこの娘は秘書官補佐だと言うのを思い出した為だろう。

「言わなくちゃダメですか?出処は別に大した意味はないと思うんだけど」
紗倉結音。普段は挨拶程度で面と向かって彼女とこうやって話をするのは初見の松永と小太郎だった。
財務省から若くして抜擢された彼女は勿論東大卒で将来の政務次官レースのスタートラインに立った財務省期待の才女だった。
ただ物怖じしない一言多い性格が災いしてか上から何かと厄介者扱いされているという噂もあった。

「大したことじゃないかは俺が決めるんだけど、それではダメか?いやダメですか秘書官補佐?」

「兵助さん、言い方?」

「いいのよ小太郎くん」

「えっ、いきなり名前呼び?」
小太郎の頭の上にビックリマークが付いたような声に反応することも無く今度は紗倉が姿勢を正して松永に向き直った。

「じゃあ言いますけど、こんな重要な案件をなぜ黙ってたんですか?返答によっては問題にしますので心して答えてください松永秘書官」

「うわっ怖っ」

「答えても良いけどもう時間の様だお嬢さん。ほれ、江坂政務官が睨んでらっしゃる」

「マズイですよガン睨みされてますよ紗倉さん」

「そういえば江坂政務官も財務省だったよな。ふっ、出処はこれで確定か」
ニヤリと口角が上がる松永。苦虫を噛み潰したよう顔をぷいと天井に向け腰を上げた。

「もういいです!話はまた今度ちゃんと聞きますからね!」
一段トーンを上げた彼女のその声はおそらく江坂に聞かせるためだったのだろうと松永は思った。

「何の目的があって声をかけてきたんすかね」
前方の席へと戻ってゆく白くて長い綺麗な足に目を奪われながら小太郎がポツリとこぼす。

「単なる好奇心だあいつは俺たちの敵じゃない」

「だって兵助さんとはバチバチの財務省の江坂さん派なんすよね彼女」

「財務省では浮いてるんだろう。秘書官補佐も自から手を挙げて、その押しの強さを総理が気に入ったそうだしな。ただ…」

そこで言葉が止まって松永はもっていた資料の小冊子に再び目を落とす。

「おまえが泣くほどのヲタクだったってその事実を彼女の胸だけにしまっておいてくれるかどうかだ」

「ちょっと待ってくださいよ兵助さん、紗倉さんは敵じゃないって…」
「今はな。けどその先はどうも俺には読めんのだ」

秘書官補佐の人数は限られてる。財務省を始め各省はその限られた席をめぐって内なる争いは激しさを増している。だからちょっとした事でもその足はすくわれかねない。だから…。

「どうでもいい些細なことのように思うだろうけど今このタイミングではちょっとしたスキャンダルなんだよお前のやった事は」

それを聞いて小太郎は唇を噛むしか無かった。
「とりあえず今夜はおまえは参加できる。ちゃんと務めて結果を残せ」
松永の言葉は小太郎には慰めのことにしか聞こえていなかった。
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