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25話・良い嘘
しおりを挟む「公爵様は、借金を負ってしまいキセラに迷惑を掛けるわけないはいかない、と思い他に好きな女性が出来たと嘘をついた、と仰っていました。それしか方法はなかった、と。公爵様は最後の最後までキセラに謝っていましたよ?」
私は静かに告げた。
妹は私の話を聞くなり目を丸くして立ち竦んでいたが、義母の顔ときたら酷いものだった。
「あぁ、なんて事。アーニバルト様は私のことが好き過ぎておかしくなってしまったのね。私はいいのに、今すぐにアーニバルト様を追いかけるわ。いいでしょ?お母様」
まぁ、正直言うとこうなる事は予想ができていた。
が、そう簡単には行かないだろう。
だって……。
「許さないわ!」
妹が義母に縋り付いた瞬間、義母の醜い声がお屋敷内に響く。
「許さない、キセラ申し訳ないけどあの方は諦めなさい。借金を負った人と結婚なんて許されるわけがないわ」
妹は予想していた答えと違う答えが返ってきたみたいで、心底驚いた顔をしていた。
ちなみに、私は義母が駆け寄ってきた時点でこうなる事は予想できていた。
まぁ、こんなに上手くいくとは思っていなかったが。
義母は恐ろしいほど欲に塗れている人間だ。
公爵と結婚したら自分がお金持ちになり贅沢な生活が出来る思い、キセラに結婚を勧めていたが、借金を負ったと聞いた途端、公爵は必要のないモノになってしまったのだ。
今回は妹には申し訳ないけど、こうする他ない。
「でも、でもお母様。お金なんて関係ないわ。私はアーニバルト様を愛してるの、お願い行かせて、いいでしょう?」
義母は諦めない妹をキッと睨み勢いよく平手打ちをした。
妹は普段義母に優しくされ、怒られた事がなかったようで、義母の事を眺めながら呆然と座り込んでいた。
結局、義母は妹より、家族より、お金だった。
お金と地位があれば幸せだと思っている可哀想な人だった。
「いい加減になさい。新しい良い人を探せば良いでしょう?とにかくあの方と結婚することだけは許しません」
妹は義母の怒った顔を見て、叩かれた頬を押さえながら泣き始めた。
自分が愛されていると勘違いして、好き勝手にやってきた妹と、お金が欲しい義母。
醜い二人の負けだ。
普段は私の事なんて見向きもしないくせに、こう言う発言は確認しようとせず信じ込んでしまう。
よくこの世界で生きてこられたものだ。
公爵も妹と結婚しなくて良かったと思う。
心が優しい人達は皆んな幸せになるべきだと思う。
私は二人が幸せになる手助けをしただけだ。
私は険悪な空気の中、一人ため息を吐きその場を去った。
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