古の武器を強奪するため、他国へ潜入いたします〜やる気は、どこかに置いて来ました(笑)〜

いく

文字の大きさ
10 / 16

1-8

しおりを挟む
「いやだなぁ」と思ってもどうしてもやらなければならないようだ。

赤塚はもういっそのこと任務を理由に辞退しようかと思ったのだが、任務前だからこそ実践訓練には参加するようにとお達しが出てしまったのだ。

目の前では入念に銃の作動を確認したり軽く運動をしたりと、忙しそうに動き回る田村がいた。

自分はというと、訓練場にも入らずに防弾ガラスがはまっている観戦席の椅子に腰掛けて煙草をふかしていた。

壁に喫煙禁止の張り紙が見えないこともないが、だからどうするというわけでもないので見なかったことにしておく。

隣の席でも金村が同じように煙草を燻らしている。
ガラス越しに田村の様子を眺めながら、赤塚は短くなった煙草を携帯灰皿に突っ込んだ。

新しいのを口で引き抜いてライターで火をつけようとして、ガス切れであることに気づく。


「ついてませんね」


使えなくなったライターを手に恨めしげに呟くと、横から白い手にライターを取り上げられた。


「何がついていないというの、赤塚」


赤塚が横を見ると、黒い服が目に入った。

驚きながら視線をあげると、予想していたとおりの人物がそこにいた。

黒い髪を腰まで伸ばし、シックな黒のワンピースを着た女性。
肌は透き通るように白く、手足はかなり細い。
その細く白い手の上で赤塚のライターは転がされていた。


「佐々木さんじゃないですか、お久しぶりです」


「久しぶりね。最後にあったのは2ヶ月ほど前だったかしら? 
任務を上手くこなしているようで何よりだわ。金村も調子がよさそうね」


「どーも」


「佐々木さんがなぜここに?」


ライターを返してもらいながら、
そう尋ねる。
佐々木さんのような人がこんなところにくるなんてかなり珍しいことだ。

佐々木さんはきれいに整えられた眉をつり上げる。

「暇つぶしで立ち寄っただけよ。それにしてもここは空気が悪いわね。
金村、赤塚、その煙たいものを私の前で吸い続けるつもり?」


「すみません」


赤塚は謝って先ほど引き抜いた煙草をケースに戻した。
金村は謝りこそしなかったが、煙草はすぐに靴で消した。


「分かればいいのよ」


佐々木さんが満足そうに頷く。


「特任のトップのご命令とあっちゃ、俺だって逆らうわけにはいかねえもんなー」


にっと歯をみせて金村が笑う。


「ふふっ、立場はちゃんと分かってるじゃないの。感心ね。
ところで、あなた達はここで対戦でもあるのかしら? 
にしてはくつろいでるみたいだけど」


「ちょっと対戦相手が悪くて、できるだけ開始を引き延ばそうと思いまして」


「誰とやるの?」


「僕と田村で。田村が妙に気合い入ってるんでやりにくいんですよ」


「そう田村と……まあ頑張りなさい。私はこれで失礼するわね、まだ色々とやることがあるから」


「お疲れ様です」


佐々木さんは数歩足をすすめたところで、何かを思いだしたらしい。
赤塚の横に音もなく近づくと、そっと耳打ちをしてきた。


「田村はどうやら何かをたくらんでいるようだから、少し気をつけていた方がいいわよ」


「わかりました」


「では、ごきげんよう」


そう言い残してようやく本当に去っていった。
背中に大きな刀剣を担いでいる佐々木さんの姿が見えなくなるまで、微妙に緊張した空気は消えない。

後ろ姿が完全に見えなくなったのを確認して、緊張した空気を振り払うかのように赤塚は金村とともに息を吐き出した。


「ふー何で佐々木さんが出てくんだよ、焦ったじゃねえか」


「本当にどうしようかと思いましたね」


強い脱力感に襲われ、2人して椅子へとへたりこむ。


「そろそろ時間なんじゃねえの?」


「……そうですね」


いまだに脱力感が抜けきらない状態で実戦訓練なんてやってられない。
が、監督官に早くしろだのを今言われたら監督官を瞬殺してしまうような気がしたので、赤塚はさっさと自分から訓練場に入ることにする。

支給された銃を受け取って弾を込め、ゴム弾の弾倉をポケットに突っ込みつつ赤塚は訓練場に足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

没落港の整備士男爵 ~「構造解析」スキルで古代設備を修理(レストア)したら、大陸一の物流拠点になり、王家も公爵家も頭が上がらなくなった件~

namisan
ファンタジー
大陸の南西端に位置するベルナ子爵領。 かつては貿易で栄えたこの港町も、今は見る影もない。 海底には土砂が堆積して大型船は入港できず、倉庫街は老朽化し、特産品もない。借金まみれの父と、諦めきった家臣たち。そこにあるのは、緩やかな「死」だけだった。 そんな没落寸前の領地の嫡男、アレン(16歳)に転生した主人公には、前世の記憶があった。 それは、日本で港湾管理者兼エンジニアとして働き、現場で散った「整備士」としての知識。 そして、彼にはもう一つ、この世界で目覚めた特異な能力があった。 対象の構造や欠陥、魔力の流れが設計図のように視えるスキル――【構造解析】。 「壊れているなら、直せばいい。詰まっているなら、通せばいい」 アレンは錆びついた古代の「浚渫(しゅんせつ)ゴーレム」を修理して港を深く掘り直し、魔導冷却庫を「熱交換の最適化」で復活させて、腐るだけだった魚を「最高級の輸出品」へと変えていく。 ドケチな家令ガルシアと予算を巡って戦い、荒くれ者の港湾長ゲンと共に泥にまみれ、没落商会の女主人メリッサと手を組んで販路を開拓する。 やがてその港には、陸・海・空の物流革命が巻き起こる。 揺れない「サスペンション馬車」が貴族の移動を変え、「鮮度抜群の魚介グルメ」が王族の胃袋を掴み、気性の荒いワイバーンを手懐けた「空輸便」が世界を結ぶ。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...