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第3幕
第42話「仮面の影、揺らぐ宮廷」
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ヴェルサイユ宮殿――
王妃暗殺未遂から三日。
宮廷は未だざわめきを止めず、誰もが口を閉ざしながら、互いの顔色を伺っていた。
「王妃の存在が、また災いを呼んだのではないか」
「殿下を守るために、どれほどの犠牲が……」
ひそひそとした声が回廊に漂う。
その矛先は、揺らぎながらもなお毅然と玉座に座るマリー・アントワネットに向けられていた。
彼女は表情一つ崩さず、王妃として振る舞っていた。
しかし、内心では炎の残像がまだ瞼に焼き付いていた。
(……あの夢と同じ。炎の中で、私は旗を掲げていた。けれど――)
その頃、宮殿の一室。
三銃士が机に広げられた短剣を囲んでいた。
「この紋章……侯爵派のものではない」
ド・モードが指先で刃をなぞる。
「地下で見つけた“仮面の男”の印と一致している」
シャレットの声に、ピシグリューが腕を組む。
「つまり、あの暗殺は侯爵の残党の仕業じゃねぇ。もっとでけぇ影が背後にいるってわけだ」
三人の間に重苦しい沈黙が落ちた。
敵は一人の侯爵でも、一派閥でもない。
“仮面の主”――正体不明の存在。
その夜、マリーはサンジェルマン伯爵と密かに会っていた。
「殿下。敵はもはや、宮廷の一角を占める者ではありません」
伯爵は低い声で告げる。
「……なら、誰なのですか?」
マリーの瞳が揺れる。
「時を越えて影を運ぶ者たち。歴史の節目ごとに現れ、国を揺るがす。
貴女の“真実”もまた、その影に狙われている」
言葉は比喩のようでありながら、刃のように冷たく突き刺さった。
マリーは息を呑む。
(……私が、何者かであるがゆえに狙われている?)
「ならば、私はどうすれば……」
伯爵に問いかける声は、震えていた。
「役を演じ続けなさい。答えに辿り着くその時まで」
彼の言葉は厳しくも優しかった。
一方その頃――
リュシアンは王宮近くの裏路地にいた。
仮面の男を追い、闇に潜んでいた刺客と刃を交える。
火花が散り、血の臭いが夜気を刺す。
「……やはり、貴様らの背後に“主”がいる」
短い戦闘の末、相手は自決し、何も語らぬまま崩れ落ちた。
だが懐には一枚の札が残されていた。
そこには、王宮の地図と“王妃の居室”を示す印。
リュシアンは札を握りしめ、月を見上げた。
「……守るべきは、あの人だ」
だが彼の影を、まだマリーも三銃士も知らない。
その夜更け。
王妃の居室。
マリーは一人、鏡を見つめていた。
夢で見た“炎の中の聖女”の姿が脳裏をよぎる。
「私は……誰……?」
震える指が胸元に触れる。
その時、窓の外からカラスの鳴き声。
翼音と共に一羽が飛来し、窓辺に止まった。
足に括られた小さな紙片。
マリーが開くと、そこには震える筆致でこう書かれていた。
――『仮面の主は、すでに“宮廷の中”にいる』
月光が、彼女の顔を白く照らした。
恐怖と覚悟の狭間で、王妃は小さく息を呑む。
ヴェルサイユは、眠れる宮殿ではなくなっていた。
王妃暗殺未遂から三日。
宮廷は未だざわめきを止めず、誰もが口を閉ざしながら、互いの顔色を伺っていた。
「王妃の存在が、また災いを呼んだのではないか」
「殿下を守るために、どれほどの犠牲が……」
ひそひそとした声が回廊に漂う。
その矛先は、揺らぎながらもなお毅然と玉座に座るマリー・アントワネットに向けられていた。
彼女は表情一つ崩さず、王妃として振る舞っていた。
しかし、内心では炎の残像がまだ瞼に焼き付いていた。
(……あの夢と同じ。炎の中で、私は旗を掲げていた。けれど――)
その頃、宮殿の一室。
三銃士が机に広げられた短剣を囲んでいた。
「この紋章……侯爵派のものではない」
ド・モードが指先で刃をなぞる。
「地下で見つけた“仮面の男”の印と一致している」
シャレットの声に、ピシグリューが腕を組む。
「つまり、あの暗殺は侯爵の残党の仕業じゃねぇ。もっとでけぇ影が背後にいるってわけだ」
三人の間に重苦しい沈黙が落ちた。
敵は一人の侯爵でも、一派閥でもない。
“仮面の主”――正体不明の存在。
その夜、マリーはサンジェルマン伯爵と密かに会っていた。
「殿下。敵はもはや、宮廷の一角を占める者ではありません」
伯爵は低い声で告げる。
「……なら、誰なのですか?」
マリーの瞳が揺れる。
「時を越えて影を運ぶ者たち。歴史の節目ごとに現れ、国を揺るがす。
貴女の“真実”もまた、その影に狙われている」
言葉は比喩のようでありながら、刃のように冷たく突き刺さった。
マリーは息を呑む。
(……私が、何者かであるがゆえに狙われている?)
「ならば、私はどうすれば……」
伯爵に問いかける声は、震えていた。
「役を演じ続けなさい。答えに辿り着くその時まで」
彼の言葉は厳しくも優しかった。
一方その頃――
リュシアンは王宮近くの裏路地にいた。
仮面の男を追い、闇に潜んでいた刺客と刃を交える。
火花が散り、血の臭いが夜気を刺す。
「……やはり、貴様らの背後に“主”がいる」
短い戦闘の末、相手は自決し、何も語らぬまま崩れ落ちた。
だが懐には一枚の札が残されていた。
そこには、王宮の地図と“王妃の居室”を示す印。
リュシアンは札を握りしめ、月を見上げた。
「……守るべきは、あの人だ」
だが彼の影を、まだマリーも三銃士も知らない。
その夜更け。
王妃の居室。
マリーは一人、鏡を見つめていた。
夢で見た“炎の中の聖女”の姿が脳裏をよぎる。
「私は……誰……?」
震える指が胸元に触れる。
その時、窓の外からカラスの鳴き声。
翼音と共に一羽が飛来し、窓辺に止まった。
足に括られた小さな紙片。
マリーが開くと、そこには震える筆致でこう書かれていた。
――『仮面の主は、すでに“宮廷の中”にいる』
月光が、彼女の顔を白く照らした。
恐怖と覚悟の狭間で、王妃は小さく息を呑む。
ヴェルサイユは、眠れる宮殿ではなくなっていた。
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