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第2幕
第26話 沈黙の仮面
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ヴェルサイユ宮殿・礼拝堂脇の小広間—— 昼の礼拝を終えたばかりのその空間には、香の香りと静謐な空気が満ちていた。 ジョゼフ・ド・モードは、修道士の黒衣を纏いながら、目立たぬように壁際を歩いていた。
「——枢機卿の動きが鈍いのは、裏で何かを仕組んでいる証拠だ」
宮廷内の政教を司る枢機卿。その周囲で囁かれる王妃への非難の声、そして最近急速に増えた“匿名の書簡”——その出処を探るため、ド・モードは密かに神の家に潜り込んでいた。
彼は、かつて修道士として学んでいた経歴を活かし、堂内の祈祷文や聖典の保管室を調査する。 そして、古びた聖書の裏に隠されていた一束の封筒に辿り着く。
「……これは……?」
開かれた封筒の中には、王妃が“神をも畏れぬ魔術的儀式に耽っている”と記された偽造文書が数通—— だが、その紙質、インク、そして記された筆跡は、彼にとって見覚えのあるものだった。
(この筆跡……間違いない。枢機卿の補佐官、ド・ラニエのものだ)
ド・ラニエ——枢機卿の腹心であり、政治と信仰の隙間で暗躍する男。 彼こそが、陰で王妃の名を使い、民衆と神官たちの不信を煽っていた張本人だった。
そのとき—— 背後に気配が走る。
「——誰か、そこにいるのか?」
ロウソクを掲げた神学生が廊下に現れ、こちらに近づいてくる。 ド・モードはすばやく封筒を懐に隠し、片膝をついて頭を垂れた。
「赦しを。夜間の祈りの準備に参りました」
「……見かけない顔だな」
「北の修道院より、応援の命を受けました。主の祝福があらんことを」
神学生は一瞬不審げに眉をひそめたが、やがて無言で頷き、廊下の奥へと去っていった。
ド・モードはそっと息を吐く。 宮廷の陰謀に信仰すらも利用されようとしている現実に、胸の奥に冷たい怒りが渦巻いていた。
彼は封筒を懐にしまい、静かに礼拝堂を後にした。 その瞳には、迷いはなかった——
この闇の根を、必ず断つ。 その使命だけが、彼の足を前へと進ませていた。
「——枢機卿の動きが鈍いのは、裏で何かを仕組んでいる証拠だ」
宮廷内の政教を司る枢機卿。その周囲で囁かれる王妃への非難の声、そして最近急速に増えた“匿名の書簡”——その出処を探るため、ド・モードは密かに神の家に潜り込んでいた。
彼は、かつて修道士として学んでいた経歴を活かし、堂内の祈祷文や聖典の保管室を調査する。 そして、古びた聖書の裏に隠されていた一束の封筒に辿り着く。
「……これは……?」
開かれた封筒の中には、王妃が“神をも畏れぬ魔術的儀式に耽っている”と記された偽造文書が数通—— だが、その紙質、インク、そして記された筆跡は、彼にとって見覚えのあるものだった。
(この筆跡……間違いない。枢機卿の補佐官、ド・ラニエのものだ)
ド・ラニエ——枢機卿の腹心であり、政治と信仰の隙間で暗躍する男。 彼こそが、陰で王妃の名を使い、民衆と神官たちの不信を煽っていた張本人だった。
そのとき—— 背後に気配が走る。
「——誰か、そこにいるのか?」
ロウソクを掲げた神学生が廊下に現れ、こちらに近づいてくる。 ド・モードはすばやく封筒を懐に隠し、片膝をついて頭を垂れた。
「赦しを。夜間の祈りの準備に参りました」
「……見かけない顔だな」
「北の修道院より、応援の命を受けました。主の祝福があらんことを」
神学生は一瞬不審げに眉をひそめたが、やがて無言で頷き、廊下の奥へと去っていった。
ド・モードはそっと息を吐く。 宮廷の陰謀に信仰すらも利用されようとしている現実に、胸の奥に冷たい怒りが渦巻いていた。
彼は封筒を懐にしまい、静かに礼拝堂を後にした。 その瞳には、迷いはなかった——
この闇の根を、必ず断つ。 その使命だけが、彼の足を前へと進ませていた。
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