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第2幕
第37話「影、舞い降りる」
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ヴェルサイユ宮殿――地下回廊。
審問が終結したその夜、宮殿の奥深く、かつて王の密命が下されたという旧礼拝堂に、一人の男が連行されていた。
侯爵派の黒幕、リュク・ド・アルザック侯爵。
「このような場所に……ふん、まさか裁判か?」
沈んだ声に応じる者はいない。
蝋燭の灯がゆらめく中、重厚な扉が開き、数人の兵と共に三銃士が現れた。
「リュク・ド・アルザック。お前の罪、王妃暗殺未遂、国家反逆、内乱煽動……数えきれぬ」
シャレットが静かに口を開く。
「証拠は揃っている。音声記録、偽造書簡、そして……お前と会っていた“仮面の男”の目撃証言」
侯爵は笑った。
「仮面の男? 馬鹿げている。私が何者かに操られたとでも?……戯言だ。すべては、王妃と貴様らの芝居に過ぎん」
ピシグリューが剣の柄に手をかけたそのとき――
「ならば、芝居ではない“現実”を見せてやろう」
地下の高窓から、すっと黒い影が舞い降りた。
衛兵たちがざわめく中、冷たい空気が流れ込む。
「誰だ!?」
ド・モードが声を上げたが、その青年は静かにフードを下ろし、鋭い視線で侯爵を見つめる。
凍てつくような青い瞳。血の気のない肌。
だがその瞳には、歴戦の者にしか持ち得ない“覚悟”が宿っていた。
「あなたが、リュク・ド・アルザックか」
「……誰だ貴様は?」
青年は答えず、懐から一枚の紙片を取り出した。
それは、侯爵と仮面の男が密会した日時と場所を記した書簡。しかも、侯爵の筆跡で書かれた“命令書”であった。
「……これを、どこで……!」
「先を知る者には、過去の嘘は通用しない」
一瞬、場が凍りつく。
だが青年はそれ以上語らず、ピシグリューに書簡を手渡す。
「信じるかどうかは、貴方たち次第だ」
そのまま、彼は踵を返して歩き出した。
「待て。名を名乗れ」
シャレットの問いに、青年は背を向けたまま一言だけ告げた。
「必要になれば、また現れる。……今は、それだけで十分です」
そして闇に紛れるようにして、彼の姿は消えた。
三銃士が顔を見合わせる。
「何者なんだ、あの男……」
「まるで――過去を断罪しに来た“影”だ」
その頃、王宮の奥でマリーは静かに月を見つめていた。
「……闇の中に、光がある。けれどそれは、私たちの知る光とは違う……」
サンジェルマン伯爵が傍らに立つ。
「ようやく“時の針”が動き始めました。次に揃うのは、彼――“導かれし者”です」
マリーは振り返らず、ただ目を細めた。
「この世界の真実が、少しずつ姿を見せている。けれど……まだ怖いの。自分が何者なのかも、わからない」
「それでいいのです。目覚めるには、問いが必要なのですから」
風が吹いた。
遠く、宮殿の塔で鐘が一度だけ鳴った。
それは、新たな夜明けの鐘だった。
審問が終結したその夜、宮殿の奥深く、かつて王の密命が下されたという旧礼拝堂に、一人の男が連行されていた。
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「このような場所に……ふん、まさか裁判か?」
沈んだ声に応じる者はいない。
蝋燭の灯がゆらめく中、重厚な扉が開き、数人の兵と共に三銃士が現れた。
「リュク・ド・アルザック。お前の罪、王妃暗殺未遂、国家反逆、内乱煽動……数えきれぬ」
シャレットが静かに口を開く。
「証拠は揃っている。音声記録、偽造書簡、そして……お前と会っていた“仮面の男”の目撃証言」
侯爵は笑った。
「仮面の男? 馬鹿げている。私が何者かに操られたとでも?……戯言だ。すべては、王妃と貴様らの芝居に過ぎん」
ピシグリューが剣の柄に手をかけたそのとき――
「ならば、芝居ではない“現実”を見せてやろう」
地下の高窓から、すっと黒い影が舞い降りた。
衛兵たちがざわめく中、冷たい空気が流れ込む。
「誰だ!?」
ド・モードが声を上げたが、その青年は静かにフードを下ろし、鋭い視線で侯爵を見つめる。
凍てつくような青い瞳。血の気のない肌。
だがその瞳には、歴戦の者にしか持ち得ない“覚悟”が宿っていた。
「あなたが、リュク・ド・アルザックか」
「……誰だ貴様は?」
青年は答えず、懐から一枚の紙片を取り出した。
それは、侯爵と仮面の男が密会した日時と場所を記した書簡。しかも、侯爵の筆跡で書かれた“命令書”であった。
「……これを、どこで……!」
「先を知る者には、過去の嘘は通用しない」
一瞬、場が凍りつく。
だが青年はそれ以上語らず、ピシグリューに書簡を手渡す。
「信じるかどうかは、貴方たち次第だ」
そのまま、彼は踵を返して歩き出した。
「待て。名を名乗れ」
シャレットの問いに、青年は背を向けたまま一言だけ告げた。
「必要になれば、また現れる。……今は、それだけで十分です」
そして闇に紛れるようにして、彼の姿は消えた。
三銃士が顔を見合わせる。
「何者なんだ、あの男……」
「まるで――過去を断罪しに来た“影”だ」
その頃、王宮の奥でマリーは静かに月を見つめていた。
「……闇の中に、光がある。けれどそれは、私たちの知る光とは違う……」
サンジェルマン伯爵が傍らに立つ。
「ようやく“時の針”が動き始めました。次に揃うのは、彼――“導かれし者”です」
マリーは振り返らず、ただ目を細めた。
「この世界の真実が、少しずつ姿を見せている。けれど……まだ怖いの。自分が何者なのかも、わからない」
「それでいいのです。目覚めるには、問いが必要なのですから」
風が吹いた。
遠く、宮殿の塔で鐘が一度だけ鳴った。
それは、新たな夜明けの鐘だった。
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