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第2話 揺らぐ正義、沈む影
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朝のルミナシティを、五つの影が歩いていく。
人々の視線が自然と集まり、黒山の人だかりができる。
「ブレイヴフォースだ! 本物だ!」
子どもが駆け寄ると、カイトは膝を折って笑顔を向ける。
「今日はいい子にしてたか?」
「うん!」
セラは上空からゆるやかに降り立ち、羽根をたたむ。
蒼い光が尾を引き、子どもたちの歓声があがる。
「上から見ても安全。今日は平和だよ」
ゴウは露店の重い荷物を軽々と肩に乗せ、
レイは歩きながら遠くの物音や空気の流れまで察知し、
ミナトは人々の表情を一つずつ丁寧に見つめていた。
皆、誰よりも“救うため”に動く、本当のヒーローたちだ。
だが――。
(……この違和感はなんだ?)
拍手を送る市民の笑顔の奥に、
ミナトはほんのわずかな “緊張”を見た。
母親が子を抱きしめ、
「悪いことしたらヒーローさんに連れていかれるよ」
と冗談めかして言う。
すると子は怯えた目で、ミナトを見た。
(……俺たちは、そんなふうに見られているのか?)
胸がざわつく。
しかしミナトは気づかれぬよう、静かに前を向いた。
その日の任務は、
「怪人化因子汚染者の更生プログラム施設」
の視察だった。
施設は清潔で、温かみのある光が灯っている。
職員も丁寧で、皆優しく、まっとうな雰囲気があった。
「怪人化してしまった人の中には、
無実のまま因子に侵された者も多いんです」
職員の説明に、5人は真剣に耳を傾けた。
カイトは腕を組み、静かに頷く。
「全員が悪じゃない。こういう場が必要なんだな」
セラもほほ笑む。
「ちゃんと支えようとしてる。良い場所だと思う」
ゴウとレイも前向きだった。
4人はこの施設の理念を心から肯定していた。
ただひとり――ミナトだけが、職員の手の震えを見た。
(……疲れ切ってる。
“救うはずの場所”が、誰よりも疲弊している……?)
そのとき。
ミナトの袖を、小さな手が引っ張る。
「……あの、ヒーローさん」
怯えた目をした少年だった。
怪人化因子による隔離対象の一人。
「僕……誰も傷つけてないのに。
“怪人になるかも”ってだけで、家族に会えなくなって……」
「……………………」
「ヒーローさんたちは、僕らも……救ってくれるの?」
その問いは、刃のようにミナトの心を貫いた。
その夜。緊急通信が施設から入った。
「更生プログラム施設で……死亡事件が発生」
息を呑む5人。
「職員が一名、殺害された。
犯人とされたのは――今日話した、あの少年だ」
ミナトは立ち尽くした。
「……そんな……!」
だが現場は不自然だった。
少年の手に血はない。
職員を殺せるほどの力はない。
防犯カメラには“黒い靄”が映り、
その部分だけ映像が消えていた。
(これは……絶対に、彼じゃない)
しかしヒーロー局は、冷淡だった。
「怪人因子の暴走の可能性がある。
施設の対象者全員、処分とする」
「待てよ! 判断が早すぎる!」
カイトは怒りで歯を食いしばった。
「証拠が弱すぎる……こんなの納得できない」
セラが声を荒げる。
「全員処分なんて……俺たちは誰を守ってるんだよ」
ゴウは拳を震わせ、
「これは……何かがおかしい」
レイも低くつぶやいた。
4人は必死に抗おうとした。
しかし、ヒーロー局は命令を撤回しなかった。
「市民を守るためだ。
危険因子は、早急に排除する」
カイトたちの抗議は受け入れられず、
「……ごめん。
俺たちには……覆せなかった」
4人は、折れるように言った。
「……ミナト……」
ミナトは顔を上げた。
その瞳は、深く沈んでいた。
「……わかった。
お前たちが悪いんじゃない。
でも……正義は、誰かの犠牲で成り立つものなのか?」
仲間は答えられなかった。
深夜。
街の灯が消える時間。
ひとり歩くミナトの耳に、
すうっ……と、闇が入り込んだ。
『――正義は、弱者を救うためのものではない』
「……誰だ」
『選ばれた者が、自分を正当化するための“武器”だ』
声だけが降る。
『救いたかったんだろう?
あの少年を。それなのに――』
「ああ……救えなかった」
『ならば、お前は正義の外側に立つべきだ』
「…………」
ミナトの瞳が、わずかに揺れた。
「ミナト、帰ろう」
後ろから声をかけたのはカイトだった。
「今日は……つらかったな。
でも俺たちはまだ、正義を信じてる」
ミナトは振り返らず言った。
「正義が誰かを不幸にするなら……
それは本当に“正義”なのか?」
返事はなかった。
ミナトの影は、夜の路地に静かに消えていった。
人々の視線が自然と集まり、黒山の人だかりができる。
「ブレイヴフォースだ! 本物だ!」
子どもが駆け寄ると、カイトは膝を折って笑顔を向ける。
「今日はいい子にしてたか?」
「うん!」
セラは上空からゆるやかに降り立ち、羽根をたたむ。
蒼い光が尾を引き、子どもたちの歓声があがる。
「上から見ても安全。今日は平和だよ」
ゴウは露店の重い荷物を軽々と肩に乗せ、
レイは歩きながら遠くの物音や空気の流れまで察知し、
ミナトは人々の表情を一つずつ丁寧に見つめていた。
皆、誰よりも“救うため”に動く、本当のヒーローたちだ。
だが――。
(……この違和感はなんだ?)
拍手を送る市民の笑顔の奥に、
ミナトはほんのわずかな “緊張”を見た。
母親が子を抱きしめ、
「悪いことしたらヒーローさんに連れていかれるよ」
と冗談めかして言う。
すると子は怯えた目で、ミナトを見た。
(……俺たちは、そんなふうに見られているのか?)
胸がざわつく。
しかしミナトは気づかれぬよう、静かに前を向いた。
その日の任務は、
「怪人化因子汚染者の更生プログラム施設」
の視察だった。
施設は清潔で、温かみのある光が灯っている。
職員も丁寧で、皆優しく、まっとうな雰囲気があった。
「怪人化してしまった人の中には、
無実のまま因子に侵された者も多いんです」
職員の説明に、5人は真剣に耳を傾けた。
カイトは腕を組み、静かに頷く。
「全員が悪じゃない。こういう場が必要なんだな」
セラもほほ笑む。
「ちゃんと支えようとしてる。良い場所だと思う」
ゴウとレイも前向きだった。
4人はこの施設の理念を心から肯定していた。
ただひとり――ミナトだけが、職員の手の震えを見た。
(……疲れ切ってる。
“救うはずの場所”が、誰よりも疲弊している……?)
そのとき。
ミナトの袖を、小さな手が引っ張る。
「……あの、ヒーローさん」
怯えた目をした少年だった。
怪人化因子による隔離対象の一人。
「僕……誰も傷つけてないのに。
“怪人になるかも”ってだけで、家族に会えなくなって……」
「……………………」
「ヒーローさんたちは、僕らも……救ってくれるの?」
その問いは、刃のようにミナトの心を貫いた。
その夜。緊急通信が施設から入った。
「更生プログラム施設で……死亡事件が発生」
息を呑む5人。
「職員が一名、殺害された。
犯人とされたのは――今日話した、あの少年だ」
ミナトは立ち尽くした。
「……そんな……!」
だが現場は不自然だった。
少年の手に血はない。
職員を殺せるほどの力はない。
防犯カメラには“黒い靄”が映り、
その部分だけ映像が消えていた。
(これは……絶対に、彼じゃない)
しかしヒーロー局は、冷淡だった。
「怪人因子の暴走の可能性がある。
施設の対象者全員、処分とする」
「待てよ! 判断が早すぎる!」
カイトは怒りで歯を食いしばった。
「証拠が弱すぎる……こんなの納得できない」
セラが声を荒げる。
「全員処分なんて……俺たちは誰を守ってるんだよ」
ゴウは拳を震わせ、
「これは……何かがおかしい」
レイも低くつぶやいた。
4人は必死に抗おうとした。
しかし、ヒーロー局は命令を撤回しなかった。
「市民を守るためだ。
危険因子は、早急に排除する」
カイトたちの抗議は受け入れられず、
「……ごめん。
俺たちには……覆せなかった」
4人は、折れるように言った。
「……ミナト……」
ミナトは顔を上げた。
その瞳は、深く沈んでいた。
「……わかった。
お前たちが悪いんじゃない。
でも……正義は、誰かの犠牲で成り立つものなのか?」
仲間は答えられなかった。
深夜。
街の灯が消える時間。
ひとり歩くミナトの耳に、
すうっ……と、闇が入り込んだ。
『――正義は、弱者を救うためのものではない』
「……誰だ」
『選ばれた者が、自分を正当化するための“武器”だ』
声だけが降る。
『救いたかったんだろう?
あの少年を。それなのに――』
「ああ……救えなかった」
『ならば、お前は正義の外側に立つべきだ』
「…………」
ミナトの瞳が、わずかに揺れた。
「ミナト、帰ろう」
後ろから声をかけたのはカイトだった。
「今日は……つらかったな。
でも俺たちはまだ、正義を信じてる」
ミナトは振り返らず言った。
「正義が誰かを不幸にするなら……
それは本当に“正義”なのか?」
返事はなかった。
ミナトの影は、夜の路地に静かに消えていった。
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