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第3話「正義の影、仲間の光」
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夜のヒーロー基地に、重たい警報が鳴った。
モニターに赤い文字が躍る。
【更生プログラム対象者 処分決行:三日後】
「……っ!」
ミナトは拳を握りしめた。
「こんな早く……!」
カイトが歯を食いしばる。
「納得なんか、できるわけない……
だが、俺たちに決定権はないんだ」
セラは唇を噛みながら、静かに言った。
「証拠がない状態で、処分なんて……
でも局は“危険因子の早期排除”を優先したんだね」
レイは冷静に見えたが、その目はどこか曇っている。
「……疑問はある。だが覆せる材料が足りない」
ゴウは壁を殴りつけた。
「守れねェ……!
なんのためのヒーローだよ、俺らは……!」
四人は怒り、苦しんでいた。
だが――
ミナトの胸に走った痛みは、 誰より深かった。
(証拠がない?
だから救えない……?
それが……正義なのか?)
三日後を待たず、ミナトは施設へ足を運んだ。
面会室のガラス越しに現れた少年は、 小さく震えていた。
「……また来てくれたの?」
「ああ。話したくてな」
少年は、無理に笑おうとした。
だがその表情は押しつぶされそうだった。
「ヒーローさん。
僕……悪じゃないよね?
誰も傷つけてないよね……?」
ミナトの胸が締め付けられる。
「もちろんだ。お前は――」
言いかけた時、
少年の小さな手が震えながらテーブルを掴んだ。
「僕……どうなるの……?」
ミナトは答えられなかった。
(助けたいのに……
何もできない……?)
そこへ職員が近づき、
ミナトにだけ聞こえる声で囁く。
「……あなたも気づいているでしょう?
あの日、現場にいたのは彼じゃありません」
ミナトは目を見開く。
「なぜ、そう断言できる?」
「見た者がいるんです。
“黒い靄――怪人ではない何か”が動いていたと」
ノワール=サークルの影――。
「では、なぜ彼が犯人に?」
職員は、痛みを抱えた顔で言った。
「……誰かを犯人にしないと、
ヒーロー局が世論に叩かれるんです」
ミナトは息を失った。
(これが……正義の裏側……?)
基地へ戻ると、
カイトたちがミナトを待っていた。
「ミナト。
俺たちも、情報を集めてたんだ」
テーブルの上には資料が並んでいる。
・周辺住民の証言
・カメラの残留映像
・現場の物理的痕跡
4人なりの必死の調査だった。
「黒い靄の痕跡……微かだけど確かにあるな」
レイが指で示し、
ゴウが唸る。
「やっぱり……あのガキじゃねぇ!」
セラが悔しげに言う。
「でも……この状況じゃ、局を説得できない……
証拠として弱すぎる……!」
カイトは両手を握りしめていた。
「ミナト。俺たちも救いたい。
でも……俺たちは勝手に動けないんだ」
ミナトは皆を見回した。
(4人は……何も間違っていない。
皆、救いたい気持ちは同じなんだ)
それでも。
(……正義は俺たちを縛る。
“救うべき命”を……見捨てさせようとしてる)
夜。
ミナトは偶然、
少年が処分前の封鎖ブロックへ移送されるのを目にする。
「いやだ……助けて……!!
僕、悪いことしてない!!」
少年は泣きながら叫んだ。
ミナトの心は張り裂けそうになった。
(……見捨てるのか?
正義のために?
世論のために?
そんなものが……正義なのか?)
手を伸ばした。
だが、その手は届かない。
権限がない――
ヒーローであるがゆえに。
ミナトの拳が震える。
その時だった。
背中に、冷たい影が寄り添う。
『――救えなかったな』
声だけしか聞こえない。
『ヒーローは弱者を守るんじゃない。
選ばれた者だけを守る“選別者”だ』
「黙れ……!」
『お前は違う。
お前だけは、彼を救おうとした。
その優しさは……光の側では生きられぬ』
影が、ミナトの足元に絡みつく。
『救いたいなら――“正義”を捨てろ』
ミナトの喉が震える。
(……正義を……捨てる……?)
基地に戻ると、
4人が夕食を囲んでいた。
「……ミナト?」
セラが声をかける。
「……大丈夫か?」
カイトも心配そうに立ち上がる。
「少年の件……まだ何とかなるかもしれない」
レイがそう言い、
「もう一度、局に掛け合ってみる」
ゴウが前を向く。
4人はミナトを“支えよう”としていた。
(皆……優しい。
これ以上責めることなんて、できない……)
しかしミナトは、
ゆっくりと席を離れる。
「……悪くないよ。
お前たちは、間違ってない」
その声は静かで、どこか遠かった。
「でも……正義が誰かを不幸にするなら……
俺は……正義の外側に立つしかない」
仲間たちの表情が固まった。
「ミナト――?」
ミナトの背中は、
光から、ゆっくりと離れていく影だった。
モニターに赤い文字が躍る。
【更生プログラム対象者 処分決行:三日後】
「……っ!」
ミナトは拳を握りしめた。
「こんな早く……!」
カイトが歯を食いしばる。
「納得なんか、できるわけない……
だが、俺たちに決定権はないんだ」
セラは唇を噛みながら、静かに言った。
「証拠がない状態で、処分なんて……
でも局は“危険因子の早期排除”を優先したんだね」
レイは冷静に見えたが、その目はどこか曇っている。
「……疑問はある。だが覆せる材料が足りない」
ゴウは壁を殴りつけた。
「守れねェ……!
なんのためのヒーローだよ、俺らは……!」
四人は怒り、苦しんでいた。
だが――
ミナトの胸に走った痛みは、 誰より深かった。
(証拠がない?
だから救えない……?
それが……正義なのか?)
三日後を待たず、ミナトは施設へ足を運んだ。
面会室のガラス越しに現れた少年は、 小さく震えていた。
「……また来てくれたの?」
「ああ。話したくてな」
少年は、無理に笑おうとした。
だがその表情は押しつぶされそうだった。
「ヒーローさん。
僕……悪じゃないよね?
誰も傷つけてないよね……?」
ミナトの胸が締め付けられる。
「もちろんだ。お前は――」
言いかけた時、
少年の小さな手が震えながらテーブルを掴んだ。
「僕……どうなるの……?」
ミナトは答えられなかった。
(助けたいのに……
何もできない……?)
そこへ職員が近づき、
ミナトにだけ聞こえる声で囁く。
「……あなたも気づいているでしょう?
あの日、現場にいたのは彼じゃありません」
ミナトは目を見開く。
「なぜ、そう断言できる?」
「見た者がいるんです。
“黒い靄――怪人ではない何か”が動いていたと」
ノワール=サークルの影――。
「では、なぜ彼が犯人に?」
職員は、痛みを抱えた顔で言った。
「……誰かを犯人にしないと、
ヒーロー局が世論に叩かれるんです」
ミナトは息を失った。
(これが……正義の裏側……?)
基地へ戻ると、
カイトたちがミナトを待っていた。
「ミナト。
俺たちも、情報を集めてたんだ」
テーブルの上には資料が並んでいる。
・周辺住民の証言
・カメラの残留映像
・現場の物理的痕跡
4人なりの必死の調査だった。
「黒い靄の痕跡……微かだけど確かにあるな」
レイが指で示し、
ゴウが唸る。
「やっぱり……あのガキじゃねぇ!」
セラが悔しげに言う。
「でも……この状況じゃ、局を説得できない……
証拠として弱すぎる……!」
カイトは両手を握りしめていた。
「ミナト。俺たちも救いたい。
でも……俺たちは勝手に動けないんだ」
ミナトは皆を見回した。
(4人は……何も間違っていない。
皆、救いたい気持ちは同じなんだ)
それでも。
(……正義は俺たちを縛る。
“救うべき命”を……見捨てさせようとしてる)
夜。
ミナトは偶然、
少年が処分前の封鎖ブロックへ移送されるのを目にする。
「いやだ……助けて……!!
僕、悪いことしてない!!」
少年は泣きながら叫んだ。
ミナトの心は張り裂けそうになった。
(……見捨てるのか?
正義のために?
世論のために?
そんなものが……正義なのか?)
手を伸ばした。
だが、その手は届かない。
権限がない――
ヒーローであるがゆえに。
ミナトの拳が震える。
その時だった。
背中に、冷たい影が寄り添う。
『――救えなかったな』
声だけしか聞こえない。
『ヒーローは弱者を守るんじゃない。
選ばれた者だけを守る“選別者”だ』
「黙れ……!」
『お前は違う。
お前だけは、彼を救おうとした。
その優しさは……光の側では生きられぬ』
影が、ミナトの足元に絡みつく。
『救いたいなら――“正義”を捨てろ』
ミナトの喉が震える。
(……正義を……捨てる……?)
基地に戻ると、
4人が夕食を囲んでいた。
「……ミナト?」
セラが声をかける。
「……大丈夫か?」
カイトも心配そうに立ち上がる。
「少年の件……まだ何とかなるかもしれない」
レイがそう言い、
「もう一度、局に掛け合ってみる」
ゴウが前を向く。
4人はミナトを“支えよう”としていた。
(皆……優しい。
これ以上責めることなんて、できない……)
しかしミナトは、
ゆっくりと席を離れる。
「……悪くないよ。
お前たちは、間違ってない」
その声は静かで、どこか遠かった。
「でも……正義が誰かを不幸にするなら……
俺は……正義の外側に立つしかない」
仲間たちの表情が固まった。
「ミナト――?」
ミナトの背中は、
光から、ゆっくりと離れていく影だった。
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