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第1章 黎明の航路
第5話 疑念の影
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犠牲者が出てから三日。
太平洋船団の船内は、張り詰めた空気に覆われていた。
廊下の至るところに監視ドローンが浮かび、乗員一人ひとりの動きをスキャンする。
会話も自然と小声になる。
「誰が裏切り者なんだ……?」
「次は自分が狙われるかもしれない」
希望のために出発した船は、いつの間にか疑心暗鬼の牢獄と化していた。
艦橋の窓から星々を見つめていた蓮は、深く息を吐いた。
「人心を縛るだけでは何も解決しない……」
背後から重い足音が近づき、オオトリ船団長が立った。
「だが何もしなければ不安は広がるばかりだ。秩序を保つために、監視は必要だ」
蓮は返せなかった。現実として、乗員たちの目の色が変わりつつあるのを知っていたからだ。
残骸の謎
その頃、真壁は事故現場から持ち帰った残骸を解析していた。
金属片の一部には微弱な信号を発する素子が仕込まれており、艦の通信系統を妨害する仕掛けになっていた。
「……やっぱりな」
真壁は工具を置き、眉間に皺を寄せる。
「事故じゃない。これは人為的に仕組まれたものだ」
蓮が駆けつけると、真壁は画面を突きつけた。
「見ろ。この周波数帯は、通常の船団通信とは別のものだ。まるで“誰か”と交信していたかのように」
蓮の背筋に冷たいものが走る。
「内部の誰かが……外部と繋がっている?」
浮かび上がる影
調査を進める中で、複数の乗員のアクセスログに不自然な矛盾が見つかった。
その一人が、外交補佐官のレイナ・グラントだった。
冷静沈着で誰からも信頼されている彼女の行動履歴が、一部改竄されていたのだ。
蓮は彼女を呼び出した。
「レイナ、君のログに不審な点がある。これはどう説明する?」
だが彼女は微笑を崩さず答える。
「証拠は本物? それとも誰かが捏造したものかもしれないわよ」
「ふざけるな、命が失われてるんだ!」
蓮の声が荒ぶ。
だがレイナは怯むどころか、逆に冷ややかに言い放った。
「あなたはまだ甘い。ここにいるのは“人類”だけじゃないの。……気づいてないの?」
その言葉の真意を問いただそうとした瞬間、彼女は通信の呼び出しを理由に去っていった。
船団会議
翌日、船団全体の会議が開かれた。
事故の報告と調査結果が共有されるや否や、大洋連合のマリーナが声を荒げた。
「太平洋船団の内部に危険分子がいるのは明らかだ! これ以上、我々を危険に晒すな!」
続けて連邦アークのエリザが言い放つ。
「航路調整の主導権を、即刻我々に委ねるべきだ。そうでなければ船団全体が危うい」
蓮は必死に反論する。
「待ってください! 私たちは必ず真相を突き止めます。太平洋船団を切り捨てれば、船団全体の団結が失われる!」
だが、その声は冷たい視線にかき消された。
太平洋船団は完全に孤立しつつあった。
外の兆候
その夜、監視ドローンが新たな残骸を回収した。
解析結果に、真壁は思わず言葉を失った。
「……これ、俺たちの技術に酷似してる。だが最低でも“数十年先”の水準だ」
蓮はスクリーンを見つめた。未知の合金片が、星々の光を受けて妖しく輝いている。
背後でドアが開き、レイナが静かに近づいてきた。
彼女は蓮の耳元に囁く。
「だから言ったでしょう。これは“人類だけの航路”じゃないの」
振り返った時には、レイナの姿はもう影の中に消えていた。
星の海は美しく、しかし冷たい。
蓮は拳を握りしめた。
「……俺たちは何と向き合っているんだ」
疑念の影は、船団を蝕み、やがて人類の未来をも揺るがそうとしていた。
✦ 第5話「疑念の影」 完
太平洋船団の船内は、張り詰めた空気に覆われていた。
廊下の至るところに監視ドローンが浮かび、乗員一人ひとりの動きをスキャンする。
会話も自然と小声になる。
「誰が裏切り者なんだ……?」
「次は自分が狙われるかもしれない」
希望のために出発した船は、いつの間にか疑心暗鬼の牢獄と化していた。
艦橋の窓から星々を見つめていた蓮は、深く息を吐いた。
「人心を縛るだけでは何も解決しない……」
背後から重い足音が近づき、オオトリ船団長が立った。
「だが何もしなければ不安は広がるばかりだ。秩序を保つために、監視は必要だ」
蓮は返せなかった。現実として、乗員たちの目の色が変わりつつあるのを知っていたからだ。
残骸の謎
その頃、真壁は事故現場から持ち帰った残骸を解析していた。
金属片の一部には微弱な信号を発する素子が仕込まれており、艦の通信系統を妨害する仕掛けになっていた。
「……やっぱりな」
真壁は工具を置き、眉間に皺を寄せる。
「事故じゃない。これは人為的に仕組まれたものだ」
蓮が駆けつけると、真壁は画面を突きつけた。
「見ろ。この周波数帯は、通常の船団通信とは別のものだ。まるで“誰か”と交信していたかのように」
蓮の背筋に冷たいものが走る。
「内部の誰かが……外部と繋がっている?」
浮かび上がる影
調査を進める中で、複数の乗員のアクセスログに不自然な矛盾が見つかった。
その一人が、外交補佐官のレイナ・グラントだった。
冷静沈着で誰からも信頼されている彼女の行動履歴が、一部改竄されていたのだ。
蓮は彼女を呼び出した。
「レイナ、君のログに不審な点がある。これはどう説明する?」
だが彼女は微笑を崩さず答える。
「証拠は本物? それとも誰かが捏造したものかもしれないわよ」
「ふざけるな、命が失われてるんだ!」
蓮の声が荒ぶ。
だがレイナは怯むどころか、逆に冷ややかに言い放った。
「あなたはまだ甘い。ここにいるのは“人類”だけじゃないの。……気づいてないの?」
その言葉の真意を問いただそうとした瞬間、彼女は通信の呼び出しを理由に去っていった。
船団会議
翌日、船団全体の会議が開かれた。
事故の報告と調査結果が共有されるや否や、大洋連合のマリーナが声を荒げた。
「太平洋船団の内部に危険分子がいるのは明らかだ! これ以上、我々を危険に晒すな!」
続けて連邦アークのエリザが言い放つ。
「航路調整の主導権を、即刻我々に委ねるべきだ。そうでなければ船団全体が危うい」
蓮は必死に反論する。
「待ってください! 私たちは必ず真相を突き止めます。太平洋船団を切り捨てれば、船団全体の団結が失われる!」
だが、その声は冷たい視線にかき消された。
太平洋船団は完全に孤立しつつあった。
外の兆候
その夜、監視ドローンが新たな残骸を回収した。
解析結果に、真壁は思わず言葉を失った。
「……これ、俺たちの技術に酷似してる。だが最低でも“数十年先”の水準だ」
蓮はスクリーンを見つめた。未知の合金片が、星々の光を受けて妖しく輝いている。
背後でドアが開き、レイナが静かに近づいてきた。
彼女は蓮の耳元に囁く。
「だから言ったでしょう。これは“人類だけの航路”じゃないの」
振り返った時には、レイナの姿はもう影の中に消えていた。
星の海は美しく、しかし冷たい。
蓮は拳を握りしめた。
「……俺たちは何と向き合っているんだ」
疑念の影は、船団を蝕み、やがて人類の未来をも揺るがそうとしていた。
✦ 第5話「疑念の影」 完
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