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第6話 海の民と失われた歌
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果てしなく続く海原にたどり着いたエイラは、その圧倒的な広がりと深い青に思わず息をのんだ。彼女がこれまで見てきたどの景色とも異なる、アヴィアの中でも異質な光景だった。大地が空と繋がる感覚を与える草原や谷とは異なり、この海は底知れぬ深みを感じさせ、見る者の胸に奇妙な不安を呼び起こした。
ペンダントが指し示す光は、海のさらに先を示している。エイラはその方向を見据えながら、翼をたたんで浜辺に降り立った。
「ここからどう進むべきなの?」
波が寄せては引く音だけが答える中、彼女は小さな岬に目を向けた。そこにはいくつかの小屋が見えたが、不気味なほど静まり返っている。人がいる気配がないのだ。
小屋のある村は、かつては賑わっていたことを伺わせる形跡があった。網に干されたままの魚、潮風にさらされた木製の船、風に揺れる洗濯物――それらは誰かがここで生活をしていた証拠だった。しかし、どれも手入れがされておらず、村全体が時間の中で止まってしまったかのように見えた。
エイラが注意深く村の中心部に足を踏み入れると、古びた鐘楼が目に入った。その鐘には、錆びついた鎖が絡みついている。その近くには、鳥人間たちが時折集う広場のようなスペースがあった。だが、そこもまた、長い間人が訪れていない様子だった。
「何があったの…?」
エイラは誰にともなく問いかけたが、答えは風がさらっていくばかりだった。
ふとした瞬間、背後から低い声が聞こえた。
「旅人よ、この地に何を求める?」
驚いて振り返ると、そこには年老いた女性が立っていた。深い青色の装束を身にまとい、肩には海藻のような飾りがつけられている。彼女の瞳は深海を思わせる色合いをしており、ただ立っているだけで威圧感を放っていた。
「私はエイラと言います。アヴィアを旅し、このペンダントが導く場所を探しているのです」
エイラは胸元からペンダントを取り出して見せた。その瞬間、女性の表情が一変し、鋭い視線でエイラを見つめた。
「そのペンダント…なるほど、ようやく現れたか。この地に新たな訪問者が現れる日を待ちわびていたよ」
女性は自身を「イリーナ」と名乗り、この地を守護する海の民の長老であると語った。
イリーナはエイラを集落の中央にある大きなホールへと案内した。そこで彼女は、海の民に伝わる古い伝説について話し始めた。
「この海には、古代から『海の歌』と呼ばれる力が宿っている。その歌は、この地を潤す恵みの源でありながら、同時に破壊をもたらす危険な力でもある。そのため、私たち海の民は代々この力を封印し、外界から守り続けてきた」
エイラはその話に耳を傾けながら、ペンダントの意味について考えた。
「あなたが持つそのペンダントは、この地に関わる重要な鍵だ。その光が再び現れたということは、この封印が揺らいでいる兆しだろう。だが、封印を再び強固なものとするには試練を乗り越える必要がある。それに挑む覚悟はあるか?」
イリーナの言葉にエイラは一瞬戸惑ったが、すぐに力強く頷いた。
「私はこの旅の中で、自分が知るべきことを知ると決めました。この試練も、その一部だと思います」
試練の場は、海底に沈む古代の神殿だとイリーナは語った。そこには「水の守護者」と呼ばれる存在が眠っており、その守護者に認められなければ神殿の力を解放することはできない。
エイラは海の民たちの協力を得て、試練に必要な準備を進めた。防水加工が施された軽装のマント、海中で呼吸を可能にする珊瑚のマウスピース、そして光を反射して水中の流れを読む特別な水晶――これらは代々海の民が作り上げた貴重な道具だった。
「気をつけなさい。試練に失敗すれば、あなたもこの海の底に飲み込まれることになる」
イリーナの言葉は重かったが、エイラは決して怯むことなくその場を立ち去り、翼を広げて海の上を目指した。
海の民たちの若者に導かれ、エイラは小舟に乗って試練の地へ向かった。海底の神殿は、透明な水の底にその壮大な姿を現していた。神殿の入口は巨石で造られたアーチ型になっており、周囲には珊瑚や海藻が絡みついている。
エイラがペンダントをかざすと、それが鍵となって扉が開き、中から冷たい水流が流れ出した。
「ここが試練の場所…」
彼女が中に入ると、周囲は一瞬にして暗闇に包まれた。そして次の瞬間、巨大な影が目の前に現れた。それは「水の守護者」と呼ばれる存在だった。
守護者はまるで海そのものが形を持ったような存在だった。水の流れをまとい、触手のように動く水の塊でエイラを取り囲む。その動きは予測が難しく、エイラは何度も攻撃をかわしながらペンダントを握りしめた。
ペンダントが放つ光が守護者の動きを一瞬止めるたび、エイラは息を整え、次の行動を考えた。そして、守護者が再び襲いかかってきたその瞬間、エイラはペンダントを高く掲げた。
「この力があなたを封じるのではなく、解放するためにあるなら、どうか私に答えを!」
ペンダントの光が爆発するように広がり、守護者の体を包み込んだ。その光の中で、守護者は静かに姿を消し、神殿の奥から美しい旋律が響き渡った。それが「海の歌」だった。
海の歌が響き渡る中、エイラは神殿の中心に進み、そこで新たな地図が描かれた石版を見つけた。その地図は、次に彼女が進むべき場所――「雲の峰」を示していた。
エイラは海の民たちに別れを告げ、再び翼を広げて空へ舞い上がった。海の風が背中を押し、彼女の心は次の冒険への期待で満ち溢れていた。
ペンダントが指し示す光は、海のさらに先を示している。エイラはその方向を見据えながら、翼をたたんで浜辺に降り立った。
「ここからどう進むべきなの?」
波が寄せては引く音だけが答える中、彼女は小さな岬に目を向けた。そこにはいくつかの小屋が見えたが、不気味なほど静まり返っている。人がいる気配がないのだ。
小屋のある村は、かつては賑わっていたことを伺わせる形跡があった。網に干されたままの魚、潮風にさらされた木製の船、風に揺れる洗濯物――それらは誰かがここで生活をしていた証拠だった。しかし、どれも手入れがされておらず、村全体が時間の中で止まってしまったかのように見えた。
エイラが注意深く村の中心部に足を踏み入れると、古びた鐘楼が目に入った。その鐘には、錆びついた鎖が絡みついている。その近くには、鳥人間たちが時折集う広場のようなスペースがあった。だが、そこもまた、長い間人が訪れていない様子だった。
「何があったの…?」
エイラは誰にともなく問いかけたが、答えは風がさらっていくばかりだった。
ふとした瞬間、背後から低い声が聞こえた。
「旅人よ、この地に何を求める?」
驚いて振り返ると、そこには年老いた女性が立っていた。深い青色の装束を身にまとい、肩には海藻のような飾りがつけられている。彼女の瞳は深海を思わせる色合いをしており、ただ立っているだけで威圧感を放っていた。
「私はエイラと言います。アヴィアを旅し、このペンダントが導く場所を探しているのです」
エイラは胸元からペンダントを取り出して見せた。その瞬間、女性の表情が一変し、鋭い視線でエイラを見つめた。
「そのペンダント…なるほど、ようやく現れたか。この地に新たな訪問者が現れる日を待ちわびていたよ」
女性は自身を「イリーナ」と名乗り、この地を守護する海の民の長老であると語った。
イリーナはエイラを集落の中央にある大きなホールへと案内した。そこで彼女は、海の民に伝わる古い伝説について話し始めた。
「この海には、古代から『海の歌』と呼ばれる力が宿っている。その歌は、この地を潤す恵みの源でありながら、同時に破壊をもたらす危険な力でもある。そのため、私たち海の民は代々この力を封印し、外界から守り続けてきた」
エイラはその話に耳を傾けながら、ペンダントの意味について考えた。
「あなたが持つそのペンダントは、この地に関わる重要な鍵だ。その光が再び現れたということは、この封印が揺らいでいる兆しだろう。だが、封印を再び強固なものとするには試練を乗り越える必要がある。それに挑む覚悟はあるか?」
イリーナの言葉にエイラは一瞬戸惑ったが、すぐに力強く頷いた。
「私はこの旅の中で、自分が知るべきことを知ると決めました。この試練も、その一部だと思います」
試練の場は、海底に沈む古代の神殿だとイリーナは語った。そこには「水の守護者」と呼ばれる存在が眠っており、その守護者に認められなければ神殿の力を解放することはできない。
エイラは海の民たちの協力を得て、試練に必要な準備を進めた。防水加工が施された軽装のマント、海中で呼吸を可能にする珊瑚のマウスピース、そして光を反射して水中の流れを読む特別な水晶――これらは代々海の民が作り上げた貴重な道具だった。
「気をつけなさい。試練に失敗すれば、あなたもこの海の底に飲み込まれることになる」
イリーナの言葉は重かったが、エイラは決して怯むことなくその場を立ち去り、翼を広げて海の上を目指した。
海の民たちの若者に導かれ、エイラは小舟に乗って試練の地へ向かった。海底の神殿は、透明な水の底にその壮大な姿を現していた。神殿の入口は巨石で造られたアーチ型になっており、周囲には珊瑚や海藻が絡みついている。
エイラがペンダントをかざすと、それが鍵となって扉が開き、中から冷たい水流が流れ出した。
「ここが試練の場所…」
彼女が中に入ると、周囲は一瞬にして暗闇に包まれた。そして次の瞬間、巨大な影が目の前に現れた。それは「水の守護者」と呼ばれる存在だった。
守護者はまるで海そのものが形を持ったような存在だった。水の流れをまとい、触手のように動く水の塊でエイラを取り囲む。その動きは予測が難しく、エイラは何度も攻撃をかわしながらペンダントを握りしめた。
ペンダントが放つ光が守護者の動きを一瞬止めるたび、エイラは息を整え、次の行動を考えた。そして、守護者が再び襲いかかってきたその瞬間、エイラはペンダントを高く掲げた。
「この力があなたを封じるのではなく、解放するためにあるなら、どうか私に答えを!」
ペンダントの光が爆発するように広がり、守護者の体を包み込んだ。その光の中で、守護者は静かに姿を消し、神殿の奥から美しい旋律が響き渡った。それが「海の歌」だった。
海の歌が響き渡る中、エイラは神殿の中心に進み、そこで新たな地図が描かれた石版を見つけた。その地図は、次に彼女が進むべき場所――「雲の峰」を示していた。
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