10 / 24
第10話 炎の裂谷と裏切りの残響
しおりを挟む
アヴィア大陸の南東、焦土のような荒野を越えた先に、それはあった。
天を裂くような大地の亀裂、真紅に染まる岩肌、そして地下深くから吹き上がる熱風。エイラが辿り着いたのは、「炎の裂谷(ヴォルカノン)」と呼ばれる死地だった。
「ここが…次の光が示した場所…」
裂谷は絶えず唸り声のような音を響かせ、地面のあちこちから火柱が上がっていた。空には黒い火山灰が舞い、陽の光さえ遮っている。その景色は、これまで彼女が見てきた自然の美とは対極にあるものだった。
それでも、ペンダントは確かにこの場所を示している。彼女の旅は、いま正真正銘、過去の罪と真実に触れようとしていた。
焼けた大地に残されたもの
エイラは谷底へと慎重に降りていく。羽は熱風にあおられ、身体は汗で重くなる。だが、岩と火の迷宮を越えたその先に……ひっそりと、朽ちた石造りの都市跡が広がっていた。
廃都。空の神殿とは異なり、この場所には誰の気配もなく、ただ“かつての栄光の抜け殻”だけが残されていた。
巨大な円形の広場の中央には、崩れかけた塔があり、その足元に古びた碑文が立っていた。
ペンダントの光がその文字に触れると、遺跡全体が低く唸るように反応した。
碑文が淡く輝き、風のような声が漏れ始める。
> 「ここに記す。我ら空の民、“白翼の誓い”を破りし者、罪深き者として名を刻む…」
「力は信頼によって分かたれねばならず、独占は終焉を招くと知りながら…」
「我らは、それを選んだ…」
エイラは膝をつき、碑文を見上げた。
アヴィアンの一部が、かつて星の力を独り占めにしようとし、統合の盟約を裏切った。
その中心にいた者たちは、この裂谷の地に城を築き、星の封印を解く術を探っていた。だが、ある時突然、すべての構造が崩れ落ち、この都市は誰にも知られぬまま地図から消えたという。
エイラの胸の奥で、怒りにも似た悲しみが渦を巻いた。
(これは…私たち自身の過去…?)
“影”との邂逅
そのときだった。
裂谷の奥、崩れかけた神殿の残骸から、ゆっくりと黒い霧が立ち上り始めた。冷たい風が辺りを包み、熱で満ちていた空間の空気が一変する。
霧の中から、声が響いた。
「ようやくここまで辿り着いたか、アヴィアンの少女よ」
現れたのは、明確な姿を持たぬ“影”。だがその輪郭は、かつてのアヴィアンに似た翼を持ち、片目を覆うように灰色の面をつけていた。
「お前は誰…?」
「我は“影の継承者”の一柱。忘れられた意思、地に堕ちた翼の代弁者だ」
影の声はどこか哀しげだった。怒りに満ちているはずなのに、寂しさがにじむ。
「我らは裏切り者ではない。ただ、生き延びたかっただけだ。星の力を失えば、我らは他の種族に滅ぼされるしかなかった」
「でも、その力を奪えば…他の誰かが傷つくことになる」エイラは言った。
影はしばらく黙っていた。
「正しさは一つではない。だが、お前がその力を解き放つつもりなら、いずれ我らと対峙せねばならぬだろう」
そう告げると、影は霧とともに消えた。
エイラは拳を握った。影の言葉に、一部の真実があったことを否定できなかった。それでも、自分の選ぶべき道はひとつだった。
再び、空へ
裂谷の空に、一筋の光が差し込む。
黒雲の間から降り注いだその光に導かれるように、ペンダントが再び輝きを放つ。次に示されたのは――かつて盟約が交わされたという“中心の地”、オリヴィア高原。
そこは今や、各種族の境界線に位置する中立地帯。種族間の争いを避けるため、誰も近づかなくなった“交わりの消えた地”だった。
「行かなきゃ…今度は“繋ぐ”ために」
火の熱気に背を向け、エイラは羽ばたいた。影を見据え、心を決めて……。
天を裂くような大地の亀裂、真紅に染まる岩肌、そして地下深くから吹き上がる熱風。エイラが辿り着いたのは、「炎の裂谷(ヴォルカノン)」と呼ばれる死地だった。
「ここが…次の光が示した場所…」
裂谷は絶えず唸り声のような音を響かせ、地面のあちこちから火柱が上がっていた。空には黒い火山灰が舞い、陽の光さえ遮っている。その景色は、これまで彼女が見てきた自然の美とは対極にあるものだった。
それでも、ペンダントは確かにこの場所を示している。彼女の旅は、いま正真正銘、過去の罪と真実に触れようとしていた。
焼けた大地に残されたもの
エイラは谷底へと慎重に降りていく。羽は熱風にあおられ、身体は汗で重くなる。だが、岩と火の迷宮を越えたその先に……ひっそりと、朽ちた石造りの都市跡が広がっていた。
廃都。空の神殿とは異なり、この場所には誰の気配もなく、ただ“かつての栄光の抜け殻”だけが残されていた。
巨大な円形の広場の中央には、崩れかけた塔があり、その足元に古びた碑文が立っていた。
ペンダントの光がその文字に触れると、遺跡全体が低く唸るように反応した。
碑文が淡く輝き、風のような声が漏れ始める。
> 「ここに記す。我ら空の民、“白翼の誓い”を破りし者、罪深き者として名を刻む…」
「力は信頼によって分かたれねばならず、独占は終焉を招くと知りながら…」
「我らは、それを選んだ…」
エイラは膝をつき、碑文を見上げた。
アヴィアンの一部が、かつて星の力を独り占めにしようとし、統合の盟約を裏切った。
その中心にいた者たちは、この裂谷の地に城を築き、星の封印を解く術を探っていた。だが、ある時突然、すべての構造が崩れ落ち、この都市は誰にも知られぬまま地図から消えたという。
エイラの胸の奥で、怒りにも似た悲しみが渦を巻いた。
(これは…私たち自身の過去…?)
“影”との邂逅
そのときだった。
裂谷の奥、崩れかけた神殿の残骸から、ゆっくりと黒い霧が立ち上り始めた。冷たい風が辺りを包み、熱で満ちていた空間の空気が一変する。
霧の中から、声が響いた。
「ようやくここまで辿り着いたか、アヴィアンの少女よ」
現れたのは、明確な姿を持たぬ“影”。だがその輪郭は、かつてのアヴィアンに似た翼を持ち、片目を覆うように灰色の面をつけていた。
「お前は誰…?」
「我は“影の継承者”の一柱。忘れられた意思、地に堕ちた翼の代弁者だ」
影の声はどこか哀しげだった。怒りに満ちているはずなのに、寂しさがにじむ。
「我らは裏切り者ではない。ただ、生き延びたかっただけだ。星の力を失えば、我らは他の種族に滅ぼされるしかなかった」
「でも、その力を奪えば…他の誰かが傷つくことになる」エイラは言った。
影はしばらく黙っていた。
「正しさは一つではない。だが、お前がその力を解き放つつもりなら、いずれ我らと対峙せねばならぬだろう」
そう告げると、影は霧とともに消えた。
エイラは拳を握った。影の言葉に、一部の真実があったことを否定できなかった。それでも、自分の選ぶべき道はひとつだった。
再び、空へ
裂谷の空に、一筋の光が差し込む。
黒雲の間から降り注いだその光に導かれるように、ペンダントが再び輝きを放つ。次に示されたのは――かつて盟約が交わされたという“中心の地”、オリヴィア高原。
そこは今や、各種族の境界線に位置する中立地帯。種族間の争いを避けるため、誰も近づかなくなった“交わりの消えた地”だった。
「行かなきゃ…今度は“繋ぐ”ために」
火の熱気に背を向け、エイラは羽ばたいた。影を見据え、心を決めて……。
0
あなたにおすすめの小説
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される
clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。
状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる