拾ったものは大切にしましょう~子狼に気に入られた男の転移物語~

ぽん

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初めての旅 〜ダグスク〜

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「まずは・・・。」

 とイオリは鍋に水筒から水を入れエナばあちゃんから借りたキッチンのコンロで火をつける。

「お湯を沸かします。その間に、鰹節を削りましょう。」

 削り器を床に置き両膝で挟むと上半身を使いながら鰹節を削っていく。

 ザシュッザシュッザシュッ

 音を立てて削られていく鰹節をみんなが興味深く覗いた。
 イオリは手を止めると箱の中をエナばあちゃんに見せた。

「木の皮を削ったみたい。」

 スコルが言うと皆んなが頷いた。

「ふふふ。でも匂いはどう?騙されたと思って一枚食べてごらん?」

 言われるように、先ほどよりも香りがする。黙って一枚取るとエナばあちゃんは口に入れた。

「なんと!良い香りが鼻に抜ける!
 それに、なんとも言えない味が美味しいのう。」

「本当だ!美味しい!」
「削っただけでこうなるのか?」
「すごいな・・・。」

 それぞれの感想を聞きながらイオリは削った鰹節を沸騰したお湯にバサッと入れて少し煮ると火から下ろした。

「あとはしばらく、放置します。
 鰹節はスープの元になる出汁を取る物なんです。
 先ほど口に入れた時に味が広がったでしょ?俺の故郷では“うま味”といって、甘いもしょっぱいも苦いも
 このうま味が加わると、もっと味に深さが出ると言われているんです。

 山の食材だと、俺が作ったベーコンがそうだよ。一度燻してあるからうま味が豊富なんだ。」

「燻す!!お前さんは本当に、これの作り方を知っているんだね。」

 エナばあちゃんは面白そうに話した。

「やった事はないんですよ。なんとなくの知識だけで、俺は山育ちだから海の食材は詳しくないんです。
 でも、乾物は腐ったりしないから調理法だけ知ってるんです。」

 うんうんと頷くエナばあちゃんはイオリを嬉しそうに見た。

「そろそろ良いかもね。ザルに濾します。この場合、食すのはスープの方で物自体は食べないんだ。」

「「えー!食べないの?」」

 双子は勿体ないと顔をしかめた。

「栄養や味は全部、スープにあるからね。
 料理によっては食べる時もあるけど、今日はスープね。」

 塩で微調整するとイオリは器によそいエナばあちゃんに差し出した。
 エナばあちゃんは匂いを堪能してから口にすると顔をとろけさせて言った。

「見事・・・。」

 それを合図に、ゼン達従魔に子供達やヒューゴ、アクセルにも差し出し味見をしてもらった。


「「良いにおーい!!」」
「フーフー。」
「おお!?」
「なんて美味しいんだ・・・。」

 イオリは最後に自分の分をよそいゴクリと飲むと故郷の味を思い出して泣きそうになった。

「うまい・・・。」
 

 その後は、米を炊き鰹節を使ったおにぎりを作ったりスルメを焼いたり、ヒジキを炊いたりして乾き物を楽しんだ。
 みんなでワイワイと過ごしているとエナばあちゃんがイオリを引っ張り外へ出した。

「本当に美味しかったよ。あの棒があんなに良い味が出る物だと知らなかった。」

「エナばあちゃんの先祖の人のおかげですね。食べ方を知らなかったのに、よく伝えてくれていました。
 感謝します。」

「うちの家系はね・・・。昔、フラッとこの街に現れた男が先祖なんだよ。
 何百年前だか知らないが、このダグスクの港街にその男が現れた。
 身元も分らない男は頼まれた仕事をこなして生活したそうだ。
 魔獣を狩ったり、街の治安を守ったり・・・今で言う冒険者みたいな事をしていたんだろうさ。
 男は街だけでなく世界を旅をしたが、結局は結婚してこの地に腰を下ろした。
 その後、男が作り出したのがあの棒を含めた乾物だった。
 この技術だけは耐えさせないでくれと言って死んでいったらしい。
 作り方を伝えても、いつの間にか食べ方を忘れちまった一族さ。
 従魔の旅食なんて言われ何の意味を持ってるんだか分からなくなる事もあったが細々と作ってきた。
 だが・・・今日、その意味を知った気がする。」
 
 エナばあちゃんは目にうるうると涙を溜めてイオリを見た。

「その男の名は“ジュウゾウ”。神の愛子だった。
 ・・・・お前さんもそうなんだろう?イオリ。」

 エナばあちゃんの言葉にイオリは全身鳥肌が立った。
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