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新たな旅 ー王都ー
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初代国王マテオ・アースガイルが国を立ち上げて築き上げた城。
アースガイル城。
貴賓としてもっとも位の高い者に当てがわれる部屋にミズガルドの姫・ロザリンダが滞在していた。
もっとも現在は誰も寄り付く事を禁じられ、限られた侍女のみが出入りし部屋の扉はもちろん廊下や庭に至るまで衛兵が並べられていた。
そんな重苦しい部屋にやって来たのは第一王子にして王太子であるギルバートであった。
「本日のご用向きは何でございましょう?」
以前までの圧倒的な自信など無くなったかのようなロザリンダはギルバートを迎え入れた。
「ええ。先日までの事件の事はお聞きになりましたか?」
「・・・はい。
私が魔石に利用されていて、婆や・・・ミズガルドから連れてまいりました侍女頭が偽物であったとか。」
流石に姫。こんな状況でも顔を下げる事などしなかった。
「今日はアースガイルの王太子としてミズガルドの姫君に話を聞きたくて参りました。」
「どんな事でしょう?」
「その石はいつから身につけておられたのでしょう?」
「・・・アースガイルに参ります前に家臣から。」
「その家臣とはどなたでしょう?」
「それは我が国の問題です。」
質問をはねつけるロザリンダにギルバートは首を振った。
「事は貴国の話では収まらないのですよ。
貴方の行いにより家名を傷つけられた貴族や冤罪で拘束された使用人達がいるのですから。
それが、貴方の行いなのか魔石のせいなのか重要な話です。
それは誰に贈られたのでしょう?」
掌をグッと握りしめたロザリンダは震える体を抑え込むように体を固めた。
「ルッツ・ヴァハマン。侯爵の爵位を得るものです。」
「なるほど・・・。貴方のお連れになった侍女頭・・・。」
質問が婆やの話になるとロザリンダは首を横に振った。
「婆やは!!私に害のある事など致しません!!」
「貴方の婆やはそうでしょう。
しかし、我が城にいた婆やは変装した偽物。
自身をヴァハマンに身を捧げた者と話しておりましたよ。」
「嘘!嘘!嘘です!!
だったら、私の婆やは・・・。」
「亡くなっている可能性があります。」
「いやーーーーー!!」
頭を抱えるロザリンダにギルバートはニッコリとした。
「ミズガルド国王には正式に抗議をいたします。
どうぞ。お帰り次第ヴァハマンとやらにお伝えください。
《アースガイルを舐めるなよ》と」
その言葉にハッと顔をあげたロザリンダはギルバートが言った事が信じられない思いで見つめた。
「私達の婚約は・・・?」
「婚約者候補選びは中止いたします。
こんなものがなくても私は己で婚約者を見つける。」
そう言い放つギルバートにロザリンダは詰め寄った。
「これは私達の想いではなく国同士の話です!
ギルバート殿下は私に今更、国に帰れと?」
「その通りです。
父、国王アルフレッドより許可は得ています。
ミズガルドより攻撃をされたのです。
婚約が成立する方がおかしい。」
「そんな!
私は嫁いで来るつもりで国を出ました。
父より厳命を受けて参りました。
最早、我が国には私の居場所などないのです!!」
縋るように近寄るロザリンダをギルバートは手をあげて止めた。
「それは貴国の事情です。
我々には関係のない話だ。
むしろ、諜報員と共に来た姫を罪に問わずに帰国させようというのです。
感謝してもらいたいものです。
数日中には帰国していただきます。」
現実を受け止めきれないロザリンダはなんとかしようと部屋を出ようとするギルバートに手を伸ばした。
「そうだ。国境までは我が軍がお見送りいたします。ご安心を。
どうぞ、残り少ない滞在を楽しんで下さい。」
颯爽と扉を閉めるギルバートにロザリンダは崩れ落ちた。
「そんな・・・
そんなぁぁぁぁぁぁ!!!」
アースガイル城。
貴賓としてもっとも位の高い者に当てがわれる部屋にミズガルドの姫・ロザリンダが滞在していた。
もっとも現在は誰も寄り付く事を禁じられ、限られた侍女のみが出入りし部屋の扉はもちろん廊下や庭に至るまで衛兵が並べられていた。
そんな重苦しい部屋にやって来たのは第一王子にして王太子であるギルバートであった。
「本日のご用向きは何でございましょう?」
以前までの圧倒的な自信など無くなったかのようなロザリンダはギルバートを迎え入れた。
「ええ。先日までの事件の事はお聞きになりましたか?」
「・・・はい。
私が魔石に利用されていて、婆や・・・ミズガルドから連れてまいりました侍女頭が偽物であったとか。」
流石に姫。こんな状況でも顔を下げる事などしなかった。
「今日はアースガイルの王太子としてミズガルドの姫君に話を聞きたくて参りました。」
「どんな事でしょう?」
「その石はいつから身につけておられたのでしょう?」
「・・・アースガイルに参ります前に家臣から。」
「その家臣とはどなたでしょう?」
「それは我が国の問題です。」
質問をはねつけるロザリンダにギルバートは首を振った。
「事は貴国の話では収まらないのですよ。
貴方の行いにより家名を傷つけられた貴族や冤罪で拘束された使用人達がいるのですから。
それが、貴方の行いなのか魔石のせいなのか重要な話です。
それは誰に贈られたのでしょう?」
掌をグッと握りしめたロザリンダは震える体を抑え込むように体を固めた。
「ルッツ・ヴァハマン。侯爵の爵位を得るものです。」
「なるほど・・・。貴方のお連れになった侍女頭・・・。」
質問が婆やの話になるとロザリンダは首を横に振った。
「婆やは!!私に害のある事など致しません!!」
「貴方の婆やはそうでしょう。
しかし、我が城にいた婆やは変装した偽物。
自身をヴァハマンに身を捧げた者と話しておりましたよ。」
「嘘!嘘!嘘です!!
だったら、私の婆やは・・・。」
「亡くなっている可能性があります。」
「いやーーーーー!!」
頭を抱えるロザリンダにギルバートはニッコリとした。
「ミズガルド国王には正式に抗議をいたします。
どうぞ。お帰り次第ヴァハマンとやらにお伝えください。
《アースガイルを舐めるなよ》と」
その言葉にハッと顔をあげたロザリンダはギルバートが言った事が信じられない思いで見つめた。
「私達の婚約は・・・?」
「婚約者候補選びは中止いたします。
こんなものがなくても私は己で婚約者を見つける。」
そう言い放つギルバートにロザリンダは詰め寄った。
「これは私達の想いではなく国同士の話です!
ギルバート殿下は私に今更、国に帰れと?」
「その通りです。
父、国王アルフレッドより許可は得ています。
ミズガルドより攻撃をされたのです。
婚約が成立する方がおかしい。」
「そんな!
私は嫁いで来るつもりで国を出ました。
父より厳命を受けて参りました。
最早、我が国には私の居場所などないのです!!」
縋るように近寄るロザリンダをギルバートは手をあげて止めた。
「それは貴国の事情です。
我々には関係のない話だ。
むしろ、諜報員と共に来た姫を罪に問わずに帰国させようというのです。
感謝してもらいたいものです。
数日中には帰国していただきます。」
現実を受け止めきれないロザリンダはなんとかしようと部屋を出ようとするギルバートに手を伸ばした。
「そうだ。国境までは我が軍がお見送りいたします。ご安心を。
どうぞ、残り少ない滞在を楽しんで下さい。」
颯爽と扉を閉めるギルバートにロザリンダは崩れ落ちた。
「そんな・・・
そんなぁぁぁぁぁぁ!!!」
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