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新たな旅 ーミズガルドー
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ここで一度、イグナート・カレリンについて少し記しておこう。
先代のミズガルド王には5人の子がいた。
王妃との子である長男は後継として期待されながらも若くして病でこの世を去り、次男イヴァンが王位を継承し現国王となった。
側室の子には長女が生まれたが今は他国の王族に嫁いで行った。
同腹の3男は生まれながらの病弱の故に期待されず今も王宮の奥に引きこもっている。
そして4男がイグナートである。
先代王が夜会で見染めた若き公爵令嬢を後宮に連れ去り、出来た子である。
ほかの兄姉よりも遥か後に産まれた子である為に先代王は大層可愛がった。
カレリン公爵は一人娘の身に起こった事に当初こそ怒り狂い謀反も辞さない覚悟でいたが、娘と愛らしい孫の為を思い蟄居し、以降王宮には一度として姿を現す事がなかった。
変化が訪れたのは5年後、先代王が崩御した事だった。
心を捧げたわけではなかったが、王に守られていた公爵令嬢は王宮の入れ替えの際に自分と息子の身を危ぶんだ。
そこで父に手紙を書いた。
娘の手紙を読んだカレリン公爵は跡取りがいない事を理由にイグナートを公爵家へ迎え入れたのである。
そして彼はイグナート・カレリンとして新たな人生を迎えたのだった。
現国王イヴァンは若い頃から大層な女好きで先王が死した後、まだ若かった公爵令嬢に目をつけたと王宮内で評判であったが、歴史ある公爵家の為と泣く泣く手放したのであった。
5年ぶりの娘と初めて会う孫息子に公爵夫婦は涙しながらも、再会を喜んだ。
公爵は王子であった孫息子を溺愛しつつも教養を身に付けさせ、学ぶ楽しさを植え付けた。
成長したイグナートは美しい母に似ていた為か社交の場でも人気で王族の血筋もあってか多くの貴族から婚姻をせがまれたりもした。
その中で、公爵と母が息子の婚約者に選んだのは幼き頃よりイグナートと親交を持っていた侯爵令嬢ポリーナであった。
2人の姿が社交の場で披露されれば、それもまた可愛らしいパートナーとして人気になった。
2人は年月を過ごし数年後には結婚したのである。
そんな若き夫婦の元に悪魔が降臨したのだ。
カレリン家の領地にいたポリーナが重い風邪を患った実家の母の見舞いの帰りに姿を消した。
当然、馬車を使い、カレリン家からは護衛も出していた。
消息を絶ったであろう場所には大量の血があり引きずられた跡があった。
イグナートを先頭にカレリン家とポリーナの生家は昼夜問わず探し続けた。
1日・・・1週間・・・1ヶ月・・・探す方も気力が奪われていく中、耳を疑う情報が入ってきた。
貴族御用達の魔術師ドミトリー・ドナードが拘束され、家宅から多くの人間の遺体が発見された。
しかも、人道ならざる方法で実験台にされていたと・・・。
その中に、ポリーナの姿があった。
カレリン家の馬車も解体され裏庭に放置されていた。
侍女や護衛も同様に実験台にされた。
イグナートは狂ったように泣き叫んだ。
愛らしいポリーナ・・・もう帰って来ない。
ドミトリー・ドナードは裁判にかけられ処刑された。
しかし、遺族達に残った傷は消えていない。
イグナートは公爵という身分から後妻を娶る事になった。
自分で選んだのは伯爵令嬢ソフィアだ。
ソフィアは伯爵令嬢という立場でありながら侯爵令嬢であったポリーナの侍女をしていた。
侍女というよりかは姉妹のような友として幼い頃より共に過ごした。
ポリーナの結婚を気に離れ離れになった2人であったが手紙のやり取りなどで親交を深めていた。
ポリーナの葬儀の際に出会ったイグナートとソフィアは互いの大切な人を想いやる事で距離を詰めていった。
働いていたと言ってもソフィアも伯爵令嬢である為に結婚は避けられなかった。
そんな矢先にイグナートから結婚の申し入れがあり、ポリーナの生家からの勧めもあって了承したのであった。
当初はぎこちなかった夫婦も今では仲睦まじく暮らしていた。
そして時折2人でカレリン家領地の散骨した湖を訪れてはポリーナを偲ぶのであった。
先代のミズガルド王には5人の子がいた。
王妃との子である長男は後継として期待されながらも若くして病でこの世を去り、次男イヴァンが王位を継承し現国王となった。
側室の子には長女が生まれたが今は他国の王族に嫁いで行った。
同腹の3男は生まれながらの病弱の故に期待されず今も王宮の奥に引きこもっている。
そして4男がイグナートである。
先代王が夜会で見染めた若き公爵令嬢を後宮に連れ去り、出来た子である。
ほかの兄姉よりも遥か後に産まれた子である為に先代王は大層可愛がった。
カレリン公爵は一人娘の身に起こった事に当初こそ怒り狂い謀反も辞さない覚悟でいたが、娘と愛らしい孫の為を思い蟄居し、以降王宮には一度として姿を現す事がなかった。
変化が訪れたのは5年後、先代王が崩御した事だった。
心を捧げたわけではなかったが、王に守られていた公爵令嬢は王宮の入れ替えの際に自分と息子の身を危ぶんだ。
そこで父に手紙を書いた。
娘の手紙を読んだカレリン公爵は跡取りがいない事を理由にイグナートを公爵家へ迎え入れたのである。
そして彼はイグナート・カレリンとして新たな人生を迎えたのだった。
現国王イヴァンは若い頃から大層な女好きで先王が死した後、まだ若かった公爵令嬢に目をつけたと王宮内で評判であったが、歴史ある公爵家の為と泣く泣く手放したのであった。
5年ぶりの娘と初めて会う孫息子に公爵夫婦は涙しながらも、再会を喜んだ。
公爵は王子であった孫息子を溺愛しつつも教養を身に付けさせ、学ぶ楽しさを植え付けた。
成長したイグナートは美しい母に似ていた為か社交の場でも人気で王族の血筋もあってか多くの貴族から婚姻をせがまれたりもした。
その中で、公爵と母が息子の婚約者に選んだのは幼き頃よりイグナートと親交を持っていた侯爵令嬢ポリーナであった。
2人の姿が社交の場で披露されれば、それもまた可愛らしいパートナーとして人気になった。
2人は年月を過ごし数年後には結婚したのである。
そんな若き夫婦の元に悪魔が降臨したのだ。
カレリン家の領地にいたポリーナが重い風邪を患った実家の母の見舞いの帰りに姿を消した。
当然、馬車を使い、カレリン家からは護衛も出していた。
消息を絶ったであろう場所には大量の血があり引きずられた跡があった。
イグナートを先頭にカレリン家とポリーナの生家は昼夜問わず探し続けた。
1日・・・1週間・・・1ヶ月・・・探す方も気力が奪われていく中、耳を疑う情報が入ってきた。
貴族御用達の魔術師ドミトリー・ドナードが拘束され、家宅から多くの人間の遺体が発見された。
しかも、人道ならざる方法で実験台にされていたと・・・。
その中に、ポリーナの姿があった。
カレリン家の馬車も解体され裏庭に放置されていた。
侍女や護衛も同様に実験台にされた。
イグナートは狂ったように泣き叫んだ。
愛らしいポリーナ・・・もう帰って来ない。
ドミトリー・ドナードは裁判にかけられ処刑された。
しかし、遺族達に残った傷は消えていない。
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自分で選んだのは伯爵令嬢ソフィアだ。
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侍女というよりかは姉妹のような友として幼い頃より共に過ごした。
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そんな矢先にイグナートから結婚の申し入れがあり、ポリーナの生家からの勧めもあって了承したのであった。
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