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新たな旅 ーミズガルドー
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「ラックおいで。」
ヴァルトはイオリの後ろに隠れていたラックに声をかけた。
ラックはピョコンと顔を出すとイオリを見上げた。
イオリは頭を撫でるとニッコリした。
トコトコとヴァルトの隣にきたラックをイグナートは興味深気に見つめた。
「ご存知の通り、この子は昨夜の使者。
名をラックと言います。
カレリン公爵は先程、ラックとの会話が楽しかったとおっしゃいました。
ラック・・・フードをとって良いよ。」
「・・・うん。」
おずおずとフードを取ったラックの頭にあった耳がピクピクとしているのを見てイグナートは目を見開いた。
「そうか・・・獣人であったか。」
だからこそ、身体能力も高く音もなく自身の元に来ることも出来たのかとイグナートは納得した。
「どうです。ラックが獣人だと知っても同じ事が言えますか?」
ニコニコするヴァルトにイグナートは睨んだ。
「当然だ!ミズガルドの人間だからと全てが差別主義者と決めつけないで頂きたい。」
イグナートの反応にヴァルトは目を伏せた。
「失礼を。
しかし、この子はミズガルドの人間により村を襲撃され両親を殺されました。」
「っ!!!!」
「他の子供達と一緒に拐われました。他の子供達の所在は今も分かりません。
その後、ラックはヴァハマン公爵により奴隷印を付けられ毎日命の危険に怯えながら彼の人物の為に諜報活動をさせられていました。」
「なんて事なの・・・。」
イグナートの隣で涙を溜めたソフィアは手を口に持っていき震えていた。
「何人もの人間が同じ目にあっているのです。閣下。
偶然ではありますが、ヴァハマンの命によりアースガイルに来たラックは我らの手の者によって奴隷印を外す事に成功しました。
最近までのラックの姿などお見せできるものではありませんでした。
そうなのですよ。閣下。
貴方は常識的に差別行動を起こさなくとも彼らを救えていないのです。
ただの平民ならば、それもまた致し方ないでしょう。
しかし、我らは貴族だ!
彼らを守り、共に生き、慈しむ。
だからこそ、彼らは私達を愛し支えてくれるのです。
若輩者の小言と受け流していただいて結構です。
しかし、閣下はそのお心をお持ちのはずです。
だったら、ただ憂うのではなく立ち上がるべきだ!
貴方の手の中に多くの助けを待っている人達がいるのだから。」
ヴァルトの言葉にイグナートは恥じた。
アースガイルのこれからの時代を担う若き貴族と比べ自国の若き貴族。いいや、己の浅はかな正義感を恥じたのだ。
自身の出自に悩み、前妻ポリーナの不幸に己を甘やかし貴族としての生き方を満身してこなかった。
執事ユーリィも初めはヴァルトを暴言だと睨みつけていたが、今では何も言うべき事が見つからなくなっていた。
妻ソフィアも己も同罪だと涙した。
「まだ間に合うだろうか・・・?」
イグナートの呟きにヴァルトはニッコリと頷いた。
「間違っていたら正せば良い。
悪いと思うのなら謝れば良い。
信用されないと落ち込むのではなく、信頼されるまで行動すれば良い。
遅いというのなら、今この瞬間から始めれば良い。
我が父、テオルドならそう申すでしょう。」
「そうか・・・。
一度、お会いしたいものだな。」
そんな夫の手をソフィアはギュッと握りしめた。
ヴァルトはイオリの後ろに隠れていたラックに声をかけた。
ラックはピョコンと顔を出すとイオリを見上げた。
イオリは頭を撫でるとニッコリした。
トコトコとヴァルトの隣にきたラックをイグナートは興味深気に見つめた。
「ご存知の通り、この子は昨夜の使者。
名をラックと言います。
カレリン公爵は先程、ラックとの会話が楽しかったとおっしゃいました。
ラック・・・フードをとって良いよ。」
「・・・うん。」
おずおずとフードを取ったラックの頭にあった耳がピクピクとしているのを見てイグナートは目を見開いた。
「そうか・・・獣人であったか。」
だからこそ、身体能力も高く音もなく自身の元に来ることも出来たのかとイグナートは納得した。
「どうです。ラックが獣人だと知っても同じ事が言えますか?」
ニコニコするヴァルトにイグナートは睨んだ。
「当然だ!ミズガルドの人間だからと全てが差別主義者と決めつけないで頂きたい。」
イグナートの反応にヴァルトは目を伏せた。
「失礼を。
しかし、この子はミズガルドの人間により村を襲撃され両親を殺されました。」
「っ!!!!」
「他の子供達と一緒に拐われました。他の子供達の所在は今も分かりません。
その後、ラックはヴァハマン公爵により奴隷印を付けられ毎日命の危険に怯えながら彼の人物の為に諜報活動をさせられていました。」
「なんて事なの・・・。」
イグナートの隣で涙を溜めたソフィアは手を口に持っていき震えていた。
「何人もの人間が同じ目にあっているのです。閣下。
偶然ではありますが、ヴァハマンの命によりアースガイルに来たラックは我らの手の者によって奴隷印を外す事に成功しました。
最近までのラックの姿などお見せできるものではありませんでした。
そうなのですよ。閣下。
貴方は常識的に差別行動を起こさなくとも彼らを救えていないのです。
ただの平民ならば、それもまた致し方ないでしょう。
しかし、我らは貴族だ!
彼らを守り、共に生き、慈しむ。
だからこそ、彼らは私達を愛し支えてくれるのです。
若輩者の小言と受け流していただいて結構です。
しかし、閣下はそのお心をお持ちのはずです。
だったら、ただ憂うのではなく立ち上がるべきだ!
貴方の手の中に多くの助けを待っている人達がいるのだから。」
ヴァルトの言葉にイグナートは恥じた。
アースガイルのこれからの時代を担う若き貴族と比べ自国の若き貴族。いいや、己の浅はかな正義感を恥じたのだ。
自身の出自に悩み、前妻ポリーナの不幸に己を甘やかし貴族としての生き方を満身してこなかった。
執事ユーリィも初めはヴァルトを暴言だと睨みつけていたが、今では何も言うべき事が見つからなくなっていた。
妻ソフィアも己も同罪だと涙した。
「まだ間に合うだろうか・・・?」
イグナートの呟きにヴァルトはニッコリと頷いた。
「間違っていたら正せば良い。
悪いと思うのなら謝れば良い。
信用されないと落ち込むのではなく、信頼されるまで行動すれば良い。
遅いというのなら、今この瞬間から始めれば良い。
我が父、テオルドならそう申すでしょう。」
「そうか・・・。
一度、お会いしたいものだな。」
そんな夫の手をソフィアはギュッと握りしめた。
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