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帰還 ー王都ー
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ブレンドされた紅茶を振る舞われ、お菓子が並べられたテーブルでイオリ達の報告に一同が瞠目していた。
「報告書を読むのと実際に話を聞くのとは訳が違うな。」
固唾を飲んで聞いていたニコライとディビットは眉間にシワを寄せた。
「1つの村の住人が全て犠牲に・・・。
なんと恐ろしい実験に手を出していたのだ。」
人命が大切なアースガイルでは到底、受入れられない話であった。
一先ず、事件が終わり安心ではあるがアースガイルにもミズガルド前政権の甘い汁を吸っていた貴族がいた事も確かであり、これから行われる粛清には頭が痛い。
「何はともあれ、当面は夜会だ。
ギルバートが帰還した祝いを餌に多くの貴族を王都に呼ぶ事にした。
前回の茶会など目じゃないぞ。
そこでギルバートとオーブリーの婚約を正式に発表する事にする。
ここで、また面倒な貴族が炙り出されるわけだ。
息子の婚約を素直に祝えないとは国王とは難儀な仕事だ。」
溜息を吐く国王アルフレッドは一同を見渡した。
「頼むぞ。ここにいる皆が頼りだ。」
「「「「「はっ!」」」」」
そんな中テオルドが手を上げた。
「兄上。夜会が終われば我々はポーレットに帰るとするよ。
王家の王子達の婚約者が揃えば、次は我が息子達が標的だ。
食い意地の悪い貴族の餌食になるのは御免だよ。
それに、イオリ達の事がある。
ミズガルドでの活躍を耳にした輩が接触してこようと煩くなるだろう。
我々は自分達の領地に戻るとするよ。」
ニコライとヴァルトは深く頷くと頭を掻いた。
「いつまで、好きに出来るか分かりませんけどね。」
揶揄うように息子達を見ながらオルガ夫人は紅茶に口をつけた。
「まぁ、ヴァルトはともかくニコライは狙われるな。」
「いやいや、兄上。
次男だって、何かと大変なんです。
後継では無いと言う事は責任が無いから楽だと放蕩狙いの貴族令嬢達には良い鴨ですよ。」
ギルバートとディビットという王家の兄弟にまで揶揄われ、ポーレット公爵家兄弟は顔面蒼白になった。
「そんなに、脅すものではない。
今回の夜会で良き縁があれば幸せな事。
そうでないのなら、皆を黙らせる良き相手を自分で見つけてくるのだな。」
助け舟を出す国王アルフレッドに苦虫を潰した顔で2人は不貞腐れた。
「ニコライとヴァルトを困らせる女の人なら、パティが蹴ってあげようか?」
「そうだよ。僕もスープに芋虫入れてあげる。」
「ぼくは!ぼくは!臭い花をあげる!」
「ニナも!!」
「コラコラ。やめろ。そんな陰湿な事。
お2人は自分の事はご自分で決めるさ。」
子供達が自分達の事を思って言ってくれた事と、ヒューゴの理解が嬉しくてニコライとヴァルトは微笑んだ。
ほのぼのしたやり取りの中、イオリは1人考え込んでいた。
「どうした?
面倒に巻き込まれる可能性を危惧しているのか?」
「・・・はい。
テオさん。ポーレットに戻り次第。
一度、森に戻ろうと思います。」
イオリの言葉に一同がハッとした。
「森にか?それは構わんが、貴族を気にしているのだったら私が何とかするぞ?」
テオルドがなんとかしてくれるのはイオリも分かっていた。
「はい。信じてます。
これは別の問題なんです。
今回、子供達と離れた事で成長のスピードが速い事が分かりました。
一度、連携の修正に入りたいと思うんです。
何よりも、ニナに魔法の・・・力の使い方を学ばせたい。
力を持っているのなら、正しく覚える必要があるでしょう?」
ヒューゴはイオリの言葉に頷いた。
「・・・分かった。
帰ったらエルノールに相談をしよう。
お前達が森に籠っている間に私は面倒ごとは片付けておこう。
それで良いのだな?」
「はい!お願いします!!」
ニッコリ笑顔のイオリにテオルドは思わず吹き出した。
「本当にイオリの笑顔に騙される。
好きにしなさい。
私達はポーレットで待っているのだから。」
「王都にも顔を出しなさい。
図書館の話が進んでいる中、イオリの意見は貴重だ。」
「はい。お世話になります。」
テオルドとアフルレッドの言葉にイオリは微笑んだ。
ミズガルドの事件を終え、アースガイルに戻ってきたイオリ達が日常に戻る為には、もうしばらく時間が掛かりそうだ。
兎にも角にも、開催予定の夜会に向けて忙しい日々が待っているようだった。
「報告書を読むのと実際に話を聞くのとは訳が違うな。」
固唾を飲んで聞いていたニコライとディビットは眉間にシワを寄せた。
「1つの村の住人が全て犠牲に・・・。
なんと恐ろしい実験に手を出していたのだ。」
人命が大切なアースガイルでは到底、受入れられない話であった。
一先ず、事件が終わり安心ではあるがアースガイルにもミズガルド前政権の甘い汁を吸っていた貴族がいた事も確かであり、これから行われる粛清には頭が痛い。
「何はともあれ、当面は夜会だ。
ギルバートが帰還した祝いを餌に多くの貴族を王都に呼ぶ事にした。
前回の茶会など目じゃないぞ。
そこでギルバートとオーブリーの婚約を正式に発表する事にする。
ここで、また面倒な貴族が炙り出されるわけだ。
息子の婚約を素直に祝えないとは国王とは難儀な仕事だ。」
溜息を吐く国王アルフレッドは一同を見渡した。
「頼むぞ。ここにいる皆が頼りだ。」
「「「「「はっ!」」」」」
そんな中テオルドが手を上げた。
「兄上。夜会が終われば我々はポーレットに帰るとするよ。
王家の王子達の婚約者が揃えば、次は我が息子達が標的だ。
食い意地の悪い貴族の餌食になるのは御免だよ。
それに、イオリ達の事がある。
ミズガルドでの活躍を耳にした輩が接触してこようと煩くなるだろう。
我々は自分達の領地に戻るとするよ。」
ニコライとヴァルトは深く頷くと頭を掻いた。
「いつまで、好きに出来るか分かりませんけどね。」
揶揄うように息子達を見ながらオルガ夫人は紅茶に口をつけた。
「まぁ、ヴァルトはともかくニコライは狙われるな。」
「いやいや、兄上。
次男だって、何かと大変なんです。
後継では無いと言う事は責任が無いから楽だと放蕩狙いの貴族令嬢達には良い鴨ですよ。」
ギルバートとディビットという王家の兄弟にまで揶揄われ、ポーレット公爵家兄弟は顔面蒼白になった。
「そんなに、脅すものではない。
今回の夜会で良き縁があれば幸せな事。
そうでないのなら、皆を黙らせる良き相手を自分で見つけてくるのだな。」
助け舟を出す国王アルフレッドに苦虫を潰した顔で2人は不貞腐れた。
「ニコライとヴァルトを困らせる女の人なら、パティが蹴ってあげようか?」
「そうだよ。僕もスープに芋虫入れてあげる。」
「ぼくは!ぼくは!臭い花をあげる!」
「ニナも!!」
「コラコラ。やめろ。そんな陰湿な事。
お2人は自分の事はご自分で決めるさ。」
子供達が自分達の事を思って言ってくれた事と、ヒューゴの理解が嬉しくてニコライとヴァルトは微笑んだ。
ほのぼのしたやり取りの中、イオリは1人考え込んでいた。
「どうした?
面倒に巻き込まれる可能性を危惧しているのか?」
「・・・はい。
テオさん。ポーレットに戻り次第。
一度、森に戻ろうと思います。」
イオリの言葉に一同がハッとした。
「森にか?それは構わんが、貴族を気にしているのだったら私が何とかするぞ?」
テオルドがなんとかしてくれるのはイオリも分かっていた。
「はい。信じてます。
これは別の問題なんです。
今回、子供達と離れた事で成長のスピードが速い事が分かりました。
一度、連携の修正に入りたいと思うんです。
何よりも、ニナに魔法の・・・力の使い方を学ばせたい。
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それで良いのだな?」
「はい!お願いします!!」
ニッコリ笑顔のイオリにテオルドは思わず吹き出した。
「本当にイオリの笑顔に騙される。
好きにしなさい。
私達はポーレットで待っているのだから。」
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「はい。お世話になります。」
テオルドとアフルレッドの言葉にイオリは微笑んだ。
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