続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

愛し子の帰還

1

　雲がたなびく天空に、美しく聳そびえ立つ白亜の神殿を多くの人は目にする事はないだろう。
　選ばれた人間だけが到達出来る伝説の神殿を目指す冒険者は後を経たない。

　そんな天空の神殿が今、雷撃が飛ぶ惨状と化していた。
　神殿の主であるドラゴンのスカイヤを相手に3人の人影が戦いを挑んでいた。

《ガハハハ！そんなものか！》

　スカイヤは暴風を巻き起こすと3人のエルフに攻撃を繰り出した。

「また、あの攻撃か！
　舐めるな！何度も見せられれば、何とでもなる！」

　そう言うと槍から魔法を放つ1人のエルフが前に飛び出ると突如として暴風が炎に変わり、対峙したエルフは慌てて飛び退いた。　

「クソ！攻撃のパターンが読めない！」

「愚か者！変われ！俺がやる！」

　槍のエルフを押し除け、大剣を携えたエルフが間髪入れずにスカイヤに襲いかかった。

《おお、来よった！来よった！》

　大剣を振り下ろすエルフの横腹を尻尾で横はらうと、スカイヤは続けて手で掴み投げつけた。

「グアぁぁぁ！」

　ドラゴンに床に叩きつけられながらも、フラフラと立ったエルフを仲間達は気にするでもなく真っ直ぐとスカイヤを睨みつけた。

「物理攻撃も面倒な。」

《多少できるかと期待すれば、お前らの攻撃はつまらんな。
　小僧の方が面白い戦いをする。》

　鼻をほじくるスカイヤを苛立たしげに見上げていたエルフ達であったが、唐突に話しかけた。

「始祖のドラゴンのお前なら“光の剣”のありかを知っているはず。
　どこにある？」

　スカイヤは厳しい目を向けるとエルフ達に殺気を飛ばした。
　エルフ達は先程までの攻撃はドラゴンの遊びだったのだと気付かされる。

《ひよっ子共が、それを聞いて何とする？》

「当然、ルミエール様に捧げるのだ！
　その時、伝説のダークエルフが再び世界に宣戦布告する！！」

　恍惚とした顔のエルフ達にスカイヤは呆れた顔をした。

《あの臆病者が復活するなど有り得ぬぞ？
　何より、お前らの言う“光の剣”とやらは何ともならん。
　世に出ぬ方のがヌシらの為だ。》

「黙れ！！ルミエール様を愚弄するな！
　お前のような獣如きに我らの光を臆病者と言われるなど、なんたる屈辱！
　穏便に済ませようとした我らの温情を無駄にするとは・・・。
　里への手土産にお前の首を持って帰ってやる！」

　激昂するエルフにスカイヤは笑い出した。

《ガハハハハハ！！
　ドラゴンのワシを獣と呼ぶか！
　臆病者を臆病者と言わずして何と言う？》

「まだ言うか！」

　2人のエルフが襲いかかると、スカイヤは翼で起こした風を刃に変え応戦した。
　スカイヤが2人と応戦しているのを静かに見つめていた残り1人のエルフは胸に手を当てて呟き始めた。

「愚かな世界に必要せし我らが光、ルミエール様の再興を願い、汝の僕しもべとして、この命を捧げる。
　愚劣な生き物に断罪を！」

《しまった！》

　その瞬間、天空の神殿は闇に覆われ爆発した・・・。
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