続・拾ったものは大切にしましょう〜子狼に気に入られた男の転移物語〜

ぽん

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旅路〜ダグスク〜

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「ホフホフ・・・っん。
 美味い。
 何これ!!」

 ロジャーは叫びながら茶色い団子を掲げるとニッコリとした。

「フフフ。
 それは“練り物”って言うんです。
 魚をミンチにしたり、擦ったりして油で揚げるんですよ。 
 魚の種類を変えたり、剃り具合によって食感を変えたり、混ぜ込む物を変える事で変化をつけます。
 シンプルな出汁に油が合わさるとコクが出るんです。」

 ディスは不思議そうに、平たい練り物をフォークで刺しては観察をしている。

「イオリ。
 こっちの串に刺さってるの、お肉だよ?」

 鍋の中を指差すとパティは興味深そうに首を傾げた。

「あぁ、それはスジ肉だね。」

「スジ肉!?
 あの硬くて噛みきれないアレか?
 しかも臭くて食えたもんじゃないだろう。」

 驚くアレックスにイオリは首を振った。

「いやいや、とんでもない。
 スジ肉は正しい処理と時間をかけてあげればトロトロに柔らかくなるんです。 
 臭みも旨味に変わって、出汁がしっかりと出てますよ。
 海と山、両方の食材を楽しんでください。
 さぁ、皆さんもどうぞ。」

 それぞれが好きな物を選ぶと顔を見合わせ手を伸ばした。
 
 結果はすぐに分かる。
 美味しい物を食べると人は笑う。
 一同の満面の笑みを見てイオリは嬉しくなった。

「素晴らしい。
 これが、魚ですか?
 こんな食べ方があるんですね。」

「食べ応えがあって、良いですね。
 体も温まります。」

「これがスジ肉?
 知ってるのと、全く違う。
 トロトロで美味いな。」

 オーウェンやレイナード、それにアレックスの口にもあったようだ。

「ふむ。
 イオリさん。
 これは練り物だけで売る事が出来るのですか?」

 メガネを煌めかせるカイは“おでん”に可能性を見出したようだ。

「基本的には日持ちはしませんね。
 冷蔵庫があれば、多少は大丈夫ですが冷蔵庫の普及はまだでしょう?
 せいぜい、4~5日と言ったところでしょうか。
 その日に売り切るならば良いと思いますよ。
 練り物は“おでん”としてだけでなく、そのままでも食べられますし、ショユの実を絞って食べても美味しいです。
 火で炙っても良いですよ。」

「なんとも汎用性があって興味深い。
 蛸やエビ・・・貝など使えばバリエーションも増えますね。」

 イオリは何も言わずに静かに食べているエナに声をかけた。
 
「どうです?エナばあちゃん。」

 イオリの問いかけにエナがどう答えるのか、一同が見つめている。

「・・・美味しいよ。
 こんなに良い味なんて食べた事がない。
 同じ鍋に入っているのに、どれも違う。
 お前さんには驚かされる。」

 エナはニッコリとイオリを見つめた。

「お気に召して良かったです。
 魚のすり身は油で揚げなくても片栗粉を混ぜて鍋に団子として落とせば、美味しい汁物にもなります。
 蒸したらカマボコって言って、こちらも美味しいです。
 油で揚げない分、ヘルシーに出来上がります。
 “おでん”の良さは、余す事なくご馳走って事です。
 出汁に使う昆布も食べられますし、魚も捌いて余った部位を叩いて擦れば良い。
 肉も然りです。
 エナさんの期待に応えられたでしょうか?」

 エナは静かに目を瞑って頷いた。

「あぁ、十分だ。」

「それじゃあ、母さん!?」
「ばあちゃん?」

 身を乗り出すテスとディスにエナは首を振った。

「これはグラトニーの旦那に任せよう。」

「「えっ!?」」

 儲け話というのにエナはすんなりと手放した。

「他に手を回せば乾物を疎かになる。
 新しい事はグラトニー商会に任せて、私たちは味の基本を支えるんだ。
 “おでん”にも乾物は必要だろう?」

「お任せいただければ、我々がホワイトキャビンを通して実りのある物に変えましょう。」

 カイはすかさずに立ち上がった。

「私達はジュウゾウがもたらした物で十分だ。
 イオリがもたらした物は必要な人間に与えればいい。
 人には領分ってのがある。
 欲張ったらバチが当たる。」
 
 商品を作れとは言ってない、私はただ美味しい物が食べたかっただけ。
 
 エナの領分と言う考え方にイオリは納得した。

「まぁ、私は自分で“おでん”の研究をするがね。
 街一番の“おでん”は私の物だよ。」

 澄まして言うエナにカイを始め苦笑するしかない一同だった。
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